第七話
その後は怒涛の日々が過ぎた。まずは宿屋へ行き、宿代は払い戻ししてもらったが、迷惑料込で一泊分と金貨一枚サービスして、王城へと居を移した。
第三王女様の言う通り彼女の兄、王太子グラートのお腹の中は真っ黒だった。第三王女にこちらの作戦を伝えてもらうと、仰々しいのが好きなタイプらしく、珍しく乗り気だったと言っていた。その後俺も王太子に会って、最終的に三人で話し合った結果、筋書きの用意されているクーデターを起こすことに決めた。大筋はこうだ。国王陛下には退いてもらい、その後長兄が王太子が王へと首をすげ替え、その後ゆっくり各所の汚職を調べ粛清していく。ということになる。
現在その根回し中。具体的には主要貴族の三男以下のまともな人材や高等学院の好成績者を集中して集めている。もちろん秘密裏に、だ。それと同時に、噂も流す。第三王女が国費を貪り、ドラゴンの餌付けのために大量の金が動いている。国王陛下は第三王女にとても甘く、おねだりされてついつい言うことを聞いてしまうとのこと。そうすることにより、第三王女の周りで金が動いても「ああ、いつものあれか」となるわけだ。
閑話休題。
こうして、現国王の長男、三女が揃って引き込みを開始し始めた。が、その後メンバーにロイヤルファミリーが一人を除き勢揃いした。現王エスターバ、王太子グラート、第二王子グランド、第三王子クルト、第一王女フィアー、第二王女ファビア、そして第三王女のリリア。その他に第二王妃エステートと第三王妃サラシャ。これで全員集合である。計画が漏れたわけではなく、不正を探していたらロイヤルファミリーは一人を除き真っ白なことがわかった。そのため、引き込んだのだ。そこから計画を変更した。ロイヤルファミリーの方々が全てを承知のため、本来の計画であるクーデターではなく、正式な王位継承後に粛清の嵐を巻き起こす計画に変更。その時をもって内部外部から様々な汚職の証拠を集め始めた。
一番ひどかったのは現国王の第一王妃ティモルバであった。第二王妃、第三王妃のエステートとサラシャはまともな人で、喜んで協力してくれた。確かに、国のトップ、その妻がいろいろやらかしているのだ。誰も止めようもないし、自分たちの私腹を肥やす結果になっているため誰も止めない。
閑話休題。
あれから2ヶ月が過ぎ、証拠も根回しも済み、いよいよ明日が長男のグラート・スグワルドの即位式となっている。表向きには王がなにかわがままを言い出して、各領主たち、貴族を呼び出した。そして我々が集めたまともな人材も秘密裏に呼び寄せた。ちなみに貴族たちには王が珍しくわがままを言うために招集したと噂は流している。今までもたまにそういう事があった(第一王妃のわがまま)ため、それを信じ切っていて、誰もが油断している。
そして、謁見の間に貴族が並ぶ。俺は隣の部屋に待機する。舞台は整った。そして、この国の歴史が動く。
「皆のもの、よく集まってくれた。此度はこの国の根幹を揺るがすであろう大事を皆に伝えねばならない」
そう言うと、グラート王太子が前へ進み出る。
「この国は現時点をもって、我の息子であるグラート・スグワルドに王位を継承する!」
周囲が一気にざわめいた。最初に反応したのはこの国肉塊、もとい宰相だった。
「お待ち下さい!私はそのような話は聞いておりませぬぞ!」
次に肉塊、もとい第一王妃が反応した。
「あなた。私にも相談なしとはどういう了見ですか?」
王はその質問には答えず、王子の前までやってきて、儀礼用の剣を渡す。そして、正面を向き言い放った。
「これにて我は王位を降りる。今後グラートがこの国の王だ!」
総宣言したと同時に、警備兵が部屋になだれ込んでいった。
「一体何事だ!」
「警備兵が神聖な謁見の間に入ってくるとはどういうことだ!」
「何をしておる!なぜ我々を捉えようとする!ええい、離さんか!」
会場に居た肉塊たちは騒然となった。
「静まれ!グラート・スグワルドの名において命ずる。不正を行っておる貴族共を捕縛しろ!この方々には後ほどたっぷり話を聞いて、罪状を洗いざらい吐いてもらおう。全員この場に出てこい!」
そうグラート王が言うと、捕まった貴族たちの息子や娘たちが一斉に羊皮紙をたくさん抱えて入ってくる。
「うむ。それが汚職の証拠だな?皆のものよくやった!貴殿らの家は我がなにおいて保証しよう!二度とこのような汚職が内容徹底して業務を行え!」
そう言うと、入ってきた貴族の子弟が一斉に膝を付き頭を垂れた。
「大儀である」
こうして、貴族たちは続々捕らえられた。ここで俺の出番となった。
謁見の間にどこかの貴族の影が潜んでいた。自分たちの雇い主である貴族の影が主を守りに入った。
正直この手は使いたくないが、影は重要だ。という結論に至り、こちらも負けじと大声を出した。
「不正をした貴族たちの影の者たちに告げる。元王に忠誠を誓え。忠誠心を示すなら……」
ここで一旦区切り、イベントリに入っていた金貨を1万枚ほど出した。
「この金貨を支払おうではないか!」
すると影の者たちは戸惑った。そこへ更に続けて言う。
「これ以上悪事に手を染めた者共に与するなら、貴様らも断罪する」
「サモン:ハイエンシェントドラゴン」
部屋の中にドラゴンが出現する。もちろん動き回れるサイズまで小さくしているが。
「今無抵抗で投降するなら貴殿らの罪はなかったことにしてくださるとのお達しだ。つまり、奴隷に落ちることは無い。それどころか、ちゃんとした報酬を支払い、国が貴殿らを雇うと確約した。それがこの証文だ!」
そう言って羊皮紙を高々と掲げた。
「罪を犯した貴族は地下牢へ!無抵抗の影のものは武器を一旦預かり、一箇所にまとまってもらおう!」
ふぅ、疲れた。なれないことはするもんじゃないな。召喚したドラゴンをなでながら、事の次第を見守った。一応、これでも緊急時ロイヤルファミリーを守り、不測の事態には最大の戦力として働かねばならない。
「離しなさい!無礼者!私を誰だと思っているのか!この国の第一王妃であるぞ!」
ああ、厄介なのが残ってた。
「この!離しなさい!ちょっと、あなた、これはあまりにも酷い扱いではないですか!」
と王妃が喚く。それを冷たい目で、憐れむように見ながら前王は言った。
「お前とは望まぬ結婚であったな。どうだ?辺境伯時代より贅沢ができたか?動やったらそこまで肥え太ることができるのだ?子どもたちに言われたよ。我がしっかりしないからこのような状態になったとな。これも儂の罪じゃ。儂も幽閉してもらおうかの。誰か、儂も捕らえなさい」
自虐的に前王が言う。が、そこで現王が言った。
「お待ち下さい。あなたを幽閉したりなんかしたら、今後成り立っていきません。私は政治を知らない。あなたに教えを請うしか無いのです」
「儂が無能だったからこのような結果になったのだぞ?」
「それでもです」
「そうか、わかった。王に知識を授けることを生涯の罪滅ぼしとしよう」
こうして大団円で事が済んだ。と思ったら、しぶといのがまだ残っていた。
「グラート、我が愛しの息子よ、母を助けなさい!あのような無能な父など捨て置けばよろしいのです!さあ、母を助けるのです!」
「母上、申し訳ないですが、修道院に入っていただきます」
「あなたを育てたのは一体誰だと思っているのですか!あなたを産んだのは私ですよ!それを言うにことかいて、修道院ですって!冗談じゃありません!私は侯爵家の娘ですよ!」
「そのご当主、侯爵様は先程捕らえました。侯爵家は不正ばかりで、まともなのが一人もいなかったので、別な人間を侯爵家が持っていた役割を任せることにしました。母上は安心して修道院で心を洗い流してください」
こうして、今度こそ大団円となった。
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