第四話
早速自分のハイエンシェントドラゴンを召喚し、一気に上空まで飛ぶ。
「うわ~、本当に木々しか見えない……なぁ、お前は人の気配わかるか?」
するといきなり方向転換して飛び始めた。
しばらくすると、町のようなものが遠くにうっすら見えてきた。
結構な大きさまで見えてきたところで降りて、送還する。そして、街まで歩いていった。
門の近くまで来ると、何やら騒がしい。嫌な予感がしたので近くにいた兵士に声をかけた。
「あの~、すみません、何かあったんですか?」
「先程ドラゴンが上空に現れたので、住民の皆さんや街に入ろうとしていた方々に避難を呼びかけています!あなたも早く逃げてください!」
やはり、俺の召喚したドラゴンが問題だったようだ。
「あの~、すみません、実はそのドラゴン、私の召喚獣でして・・・この街を襲うことはありませんよ?」
「は?……え?あ、ああ、は?」
【兵士】 は 【混乱】 している。
「とりあえず、この騒ぎを収めてください。もし可能なら隊長さんのところにでも連れて行ってください。実際ドラゴン、表に召喚するので」
そう言うと、しばらくの間はフリーズしていた兵士も、ようやく飲み込めたらしく「隊長を呼んできます!」と言って走り去った。
しばらくすると、肉の服を着たおっさんが現れた。いや、肉塊がオーダーメイドであろうピッチピチの鎧を着て現れた。馬がとても可愛そう。
「貴様がドラゴンを召喚するという馬鹿者か?」
開口一番口汚くなんか言われた。
「馬鹿者かどうかはご覧になってください」
そう言うと俺はドラゴンを召喚した。
「ひぇっ……ど、ど、ドラゴン」
周りの兵士は騒然とし、肉塊は卑猥にも小便を漏らし、脱糞し、落馬して気絶した。幸いなことにお漏らしは馬にはかからなかったらしい。
「あの、これで信じてもらえたでしょうか?」
俺がそう言うと、一般兵より少し機能性の高そうな鎧を着た肉塊とは別な人が前に出て来て言った。
「あ、ああ、だ、大丈夫だ……ああ、そうだ。君はハーフエルフか?君、名前はなんだね?察するに先程のドラゴンに乗ってここまで来たのだろ?目的と名前を教えてはくれまいか。流石にこの話は報告しないといけないのでな」
そう言われ、少し考えた。が、どっちみち今後派手に活動するならいずれいろいろと露見する。だったら正直に話してしまったほうが良いかもしれない。
「えーっと、信じられないかもしれませんが、神様に呼ばれてこの世界にやってきました。ええ、私もあなたの立場なら何を言っているかわからないと思います。ともかく、神様に頼まれごとをされて、それを履行するのが目的です。ちなみに内容はおおっぴらにできないのでそこはご了承願います。そして、名前は……」
そこまで言って本名にするか、ゲームの名前にするか迷った。
「エルフのハーフ……道理で……それで、名前は?」
「えーっと、これ読めます?」
俺はそう言って、偽装したステータスを見せた。
「……いや、読めない……これはどのような言語なのだ?」
「いや、その別な世界の言葉です。ヴィルヘルム・シュッツと読みます。あだ名はヴィルと呼んでください」
「なるほど。これはヴィルヘルム・シュッツと読むのですか。名字があるということは、あなた様は貴族でしょうか?」
「いいえ、私の世界ではほぼすべての人に名字があります。ですので貴族というわけではないです」
と、会話をしていたら肉塊が蠢き始めた。
「はっ、私はどうして……そうだ!ドラゴンだ!ええい皆のもの兵士をあつめよ!あのドラゴンを退治できたら金貨をくれてやろうぞ!もちろん昇進もありじゃ!なんとしてもあのドラゴンを倒せ!」
と、肉塊がのたまった。
「おい、俺の召喚獣を殺すって?どういうことだ?」
「貴様!今すぐこの僕にあのドラゴンを献上するのだ!そうすれば私が直々に陛下に貢献者として報告してやる!だから早くドラゴンをよこせ!……ん?ドラゴンはどこだ?」
「ドラゴンならもう戻したぞ」
「なんだと!早く出さないか馬鹿者!それと何ださっきから!私に向かって無礼ではないか!打首にするぞ!・・・さあ、打首が嫌なら早くドラゴンを献上せよ!僕に対しての無礼はそれで許してやる」
なるほど、確かに腐ってる。こういう輩を一掃するわけね。神様も面倒なことを言ってくれる。
「とりあえず、肉塊は黙ってろ。で、そちらの兵士さんにお尋ねしますが、先程も言ったとおりこの世界に降り立ったばっかりなので、身分証とか無いのですが、この街に入ることはできるでしょうか?」
声をかけられた方は肉塊の方をチラチラ見ながら答えた。
「すみません、多分ビスケ様の要件を突っぱねましたので、入ることは難しいかと」
「何?この肉塊、この街の貴族なの?」
「貴様!無礼にも程が有るぞ!ええい、誰か!この下賤なハーフエルフを打ち首にしろ!どうせ出自も卑しいに決まっている!早く打首にせんか!」
すると周りにいた兵士たちが剣を抜き構える。が、先程のドラゴンの影響か、へっぴり腰だ。
「サモン:ハイエンシェントドラゴン」
俺はドラゴンを召喚した。
「おお!そいつをよこせ!何構わん!無傷で捉えたいがこれほどのドラゴンだとそうもいかんだろう!傷がついても構わん!打ち取るのじゃ!」
周りの兵士は動かない。
「おい!どうした!早くこのドラゴンを打ち取るのじゃ!」
やはり誰も動かない。
俺はドラゴンを見て言った。
「上空に向かって、手加減してブレス攻撃しろ」
するとドラゴンは上空に向かいものすごい熱量のブレスを吐いた。
「そこの貴族様はこの攻撃がお望みか?」
と問うてみたが、すでに肉塊は糞尿を撒き散らし気絶していた。
「というわけで街に入りたいのですが、なにか条件はありますか?」
と聞くと先程の兵士さんが答えてくれた。
「い、一応通常の場合は銀貨5枚を頂いております。ただし、身分証がない場合は追加で金貨1枚頂いております。ギルドなどで身分証を作られましたら、再度こちらの門番に提示してください。滞在許可証を発行いたします。それがないと通常奴隷になりますのでお気をつけください。それと、職務上あなたのお名前を記録しておかないといけませんので……またビスケ様がそちらに伺うと思うので……」
「親切にありがとう……この金貨使える?」
そう言って取り出したのはゲーム内で使用していた1ユルドだ。
「はい、大丈夫です」
俺はもう1ユルドを取り出し、衛兵さんに渡した。そして、銀貨5枚が戻ってきた。
「ありがとうございます。とりあえず、街に入ります。身分証はどこで発行していますか?」
「無難なのは商業ギルド……は、あなたの場合商品が無いので、芸能ギルドとかいかがでしょうか?生産ギルドも少々難しいと思いますので」
「戦闘系統のギルドは無いんですか?」
「ありますが、とても危険です。一つは冒険者ギルドで、ダンジョン攻略や魔物の退治がメインです。残りの一つは傭兵ギルドです。これは用心棒として雇われたり、戦争に参加したりします。両方お金になりますがどちらが稼げるかと言われたら後者の方です。が、どちらもおすすめはしません」
「ちなみに、2つ以上ギルドに加入することは可能なんですか?」
「はい。特に冒険者ギルドと傭兵ギルドを掛け持ちする方は結構います」
「なるほど、ありがとうございました。それと最後に、どこかいい宿はありませんか?先程の金貨ならまだたくさんあるので、高くても安全な宿が良いのですが」
「それでしたら、中央広場の近くにある【ドラゴン亭】がよろしいかと。屋上に、ドラゴンの剥製が飾られているのですぐに分かるかと」
「何から何まですみません。ありがとうございます。とりあえず、身分証を入手してからすぐに一度戻ってきます」
「……はい。入場から3日以内であればいつでも大丈夫ですよ?」
「ん?わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、一応これが職業ですから」
そう言うと律儀な兵士さんと別れて街の中に入っていった。
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