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第二話

 次の日になり、生き残った盗賊は魔術で即席の檻を作り、その中に入れ、村人に食事だけ与えるように伝え、出発した。芸能ギルドも無いし、あったとしても歌って元気づけるとかできるわけでもない。まぁ、鎮魂歌は少し祈りながら歌ったが。


「にしても、いきなり宣戦布告もなしに攻めてくるとは……外交大臣なにか言ってなかった?」


「これでも私は名代ですが、外交官なので、戦争が始まる予兆も特になかったと聞いています」


「ん~、草が必要かもね。影はあるけど、草は無いからね……まぁ、そういうことに無頓着な貴族が多かったからな」


「草ですか?葉っぱが必要とはどういうことですか?」


「ああ、俺の居た世界には戦国時代というのがあってな。小さな国の中で国取り合戦をやってた時代があったんだ。その時の間諜の名前を草って言ったんだ。まぁ、草ってどこにでも生えてるだろ?だから、どこにでも目があるという意味合いで草の者と呼んでたんだ。この世界でも、というより王国でもこの言葉を使うといいかもね。逆に敵国のスパイがいてもわからないでしょ。一種の暗号になるかもしれないね」


「なるほど、ところで、ハーフエルフとおっしゃてましたが、どの地方の出身ですか?エルフが住んでいるのは隣の国のごく一部ですよね?」


「ああ、そのへん言ってなかったか。俺、異世界から来たの。そして、ごめん。嘘ついた。俺、ハーフエルフじゃないんだ。吸血鬼の真祖の因子とハイエルフの因子を持ったダンピールらしい」


「え!?ダンピールだったのですか!?……それにしても異世界ですか?」


「そう、ダンピールだったんです。これは内緒ですよ。そして文字通り、異なる世界からやってきたんだ」


「内緒……私なんかに……いえ、私だから話してくれたのですね」


「ん~、そこまで深くは考えてなかったよ」


「そうですか……それにしても異なる世界……よくわからないのですが……」


「そうだな……この大陸もいろいろな国家があるだろ?その国家には名前があり、人が住んでいる。俺の居たところにも大陸があり、人々が住んでいる。だけど、国も名前も技術力も全然違う世界なんだ。その世界には魔法や魔術は無いし」


「魔術が無いのですか!では、どのように生活しえていたのですか?」


「さっきも言ったけど、文明が発達したんだよ。あっちの世界では石油という化石を掘り出して、燃料とし、空を飛んだり、馬の居ない馬車が走ってたりしたんだ」


「なんと……」


「だけど、そんな国、聞いたことないだろ?」


「ええ、ありません……もしかして神族の住まうところからいらしたのですか?」


「いいや、どちらかと言うと俺は神族の敵だな。神様に頼まれてね。神族を懲らしめてくれと。だからでたらめな力を創造神からもらって、この世界に新たに生まれ変わったんだ。ちなみに、この世界、大陸は広いとはいえ、神族は別のところに住んでいるでしょ?それを異世界と呼んでも良いかもしれないな。俺は神族の住まうところとは違う世界から呼ばれた。で、今は創造神様の手伝い」


「創造神様……それに異なる世界ですか……なんとなく理解できた気がします。生まれも文化も全く違う、でも同じ人間が生活している別の世界、というわけですね」


「やっぱ、リリアは頭がいいな」


 そう言って頭を撫でる。すると最初は嬉しそうにしているが徐々にほっぺを膨らませていく。


「むぅ、子供扱いはしないでほしいです」


「ははっ、そういうところが子供っぽいな」


「とにかく、ヴィル様がその異世界から創造神様に呼ばれてこの世界にやってきたというわけですね?」


「そそ」


「では、創造神様はどうしてヴィル様をこの世界に?」


「人種の和平、亜人の奴隷化からの開放、魔族の理不尽な虐殺の阻止、神族の喧嘩の仲裁。まぁ、そんな感じかな。だから、俺は極端に強くならなければならない」


「なるほど、それで王都でも鍛えていらしたのですね?」


「まぁ、そういうことだ……と、そうこうしているうちに帝都が見えてきたぞ。ウルティマ少しサイズを小さくして、あのでかいお城の前に降り立ってくれ」


 ウルティマが俺たち二人を乗せるのにちょうどいいサイズになり、ホバリングしながらゆっくり広場へと降りてゆく。

 帝国兵は徐々に集まり円陣を組み、こちらに対して槍を向けている。が、何がなんだかわからず唖然としている。俺は、その呆然としている兵士たちに囲まれているど真ん中に降り立った。


「私はスグワルド王国より来た使者だ」


「私はスグワルド王家第三王女リリア・シュッツ・スグワルドですわ。帝国のお話のできる方を及びいただけないでしょうか?」


 すると兵士から動揺が伝わってくる。


「おい、奇襲したんじゃないのか?」


「どうなってやがる?なぜ王国の使者が?」


「殺したほうが良くないか?」


「いや、だが、使者として仮にも王女が来ているんだぞ?」


 などと話し声が聞こえる。


「貴様!ここをどこと心得る!」


 そこには……肉塊が居た。あれ?なんかデジャヴ。


「おお、なんととりっぱなドラゴン!このドラゴンを皇帝陛下に献上するためにやってきたのか!よいぞよいぞ!これで私の出世も間違いなしだ!」


 どうしてこう同じ人種が居るのだろうか……神様これ、わざとじゃないですよね?

(わざとなわけ無いじゃん。こういう腐敗を僕は止められないからね~頑張って♪)


 と、神様に言われたことだし、お仕事しますか。


「ところで、先程こちらの兵士に国境付近でお会いいたしましたが、あれはいかなる所存ですかな?一応、降りかかる火の粉は払わせていただきましたが」


 というと、周りの兵士たちは動揺した。


「ふん、何を馬鹿な。こちらは三万の兵士で攻めたのだぞ!そう簡単にやられてたまるか!」


 やっぱり話を聞かない。話を聞かないやつは苦手だ。最も得意だと言う人も居ないだろうけど。


「斥候として村を襲ってた兵士は捕まえましたが、他の兵士は面倒なので殺しました。もしかしたら生き延びたものがいるかも知れませんが……まぁ、全員死んでるでしょう」


「ハッタリだ!貴様のどこにそのような力があると言うのだ!」


 俺はため息をついた。


「ウルティマ、ここじゃ狭いから飛んでから最大サイズになって」


「承知」


 そう言うとウルティマは飛び立ち、最大サイズになった。帝都のお城よりもでかい。


「これで満足ですか?ブレスでも吐くように伝えますか?」


すると、全員が真っ青になって、いつもどおり肉塊は糞尿を撒き散らし、気絶していた。


「誰か、話のわかる方は居ないのか!」


 そう言うと、一人の男が出てきた。執事のような、礼服を着た男だ。


「私がお話を引き継ぎましょう。それより、そのドラゴンをなんとかしていただけないでしょうか」


 そう言われ、俺はドラゴンを送還する。


「サモン:シロ・クロ・アダム・エヴァ」


 二人の騎士と二体の人形態の龍を召喚する。


「なんのおつもりですか?」


「ドラゴンを送還するということは、私達は無防備になります。あなた方はいくらでも兵士を連れて構いません。会談を行う場所にも武器を持ち込んで構いません。こちらは武器を別空間に保存しているので、武具はいつでも取り出せますが、まぁ、取り出さないことを約束いたしましょう。そちらからの攻撃がない限りではありますが」


「わかりました。良いでしょう。この者に手を出すことはまかりならない」


 兵士に向かってそのように宣言した。


「それでは参りましょうか。では、みんな、相手が攻撃してこない限り攻撃しちゃだめだからね」


「わかってる、大丈夫だ」


 クロが代表して話す。


「じゃあ、リリア姫の護衛よろしくね。俺は大丈夫だから」


「はっ。わかりました」


 そして、兵士の視線にさらされながら、男の後ろをついていく。

お読みいただきありがとうございます。

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