閑話五
8.5話 仲良しデート(?)
「サモン:ウルティマ、シロ、クロ」
3体のドラゴンをいつものように召喚する。もちろん全員手のひらサイズで。
「こんにちは!ウルティマ様、シロ様、クロ様♪」
ドラゴン形態のときにはしゃべれないので、三匹とも鳴き声を上げる。
「随分と仲良くなったな」
俺は苦笑いしながら結婚を申し込まれたリリアを見ながら言う。
「はい!とってもかわいいんですもの♪」
ここのところ毎日リリアは俺のところへ遊びに来る。結婚を決めたからなのかもしれない……いや、ドラゴン見たさの可能性は大きな。
「なぁ、リリア」
「なんですか?」
「デートでもしないか?」
「……ふぇ?」
今俺はリリアと一緒に城下町に来ている。リリアの顔を知るものはほとんどおらず、楽しくデートを楽しめている。
「あっ、見てください!これは貝殻のアクセサリーですね!可愛いです!」
「買おうか?」
「……いいえ、いりません……ヴィル様、私はヴィル様に選んでほしいんです」
「そっか。そうだな。じゃあ、こっちの店のこれなんてどうだ?」
「わぁ~、木彫りの竜ですか!カッコいいですね!」
「おっ、お嬢ちゃんお目が高いね!こいつは職人が丁寧に細工した高級品だ!大きいサイズのものは貴族様方にとても人気で小さいものも今度作らせたのですが、何分小さいため細工も小さくなり、とても手がつけられない値段になってしまっていまして……おっと、ところでお一つどうです?」
値札を見るとたしかに高い。が買えないほどではない。特に俺の金はかなりあるからな。
「最近こういう工芸品を売る場合値段が上がってしまってね。こういう贅沢品には税金をかなり取られるんでこの値段でしか売れないんですよ~……言っときますけど、値下げには応じませんからね!」
俺はその木彫りを手に取り、親父に金貨を渡す。
「へ?本当に買われるのですか?」
「というか、親父。最初に言っておく。これはもう購入した。依存はないな?」
「も、もちろんでさぁ!」
「だったら言うが、多分この数倍でも貴族の元へ持っていき、口上が上手ければ売れると思うぞ。これは負けてもらった分の勉強代な」
「ど、どういうことですかい!」
「さぁ?とりあえず、これは私のものになり、あなたは利益を得た。それでいいじゃないですか。ただ、私なら違う方法で売っていたというそれだけの話しです。こういうことは自分で考えないと為になりませんよ」
そう言うと、木彫りの竜をリリアに渡して、店を去った。
「あの、ヴィル様……これ、すごく高かったけど良かったのですか?」
「ほしそうに見てただろ?」
「……」
リリアは顔を真赤にさせている。
「大丈夫。アレ、かなり安かったから」
「えぇ!?あれ、とても高かったですよ!」
「さっきも言ったけどな、売り方によってはもっと高く売れるんだ。リリアには教えよう。これを作った人と知己を得ているなら、俺は商会を作り、小さい木彫りの竜を少しずつ細工を買えて、同じものを2つと作らないように指示して作るだろうな」
「それはどうしてですか?」
「付加価値をつけるんだ。木彫りの竜で、細工が細やか。そしてこのサイズ。俺なら貴族の元へ行って、売りに行く。口上はこうだ「この木彫りの竜を見てください。この細工を!一品物ですよ!他には二つと無い商品です!このような細やかな細工のできる職人さんを知っていますか?これを作れるのは当方だけでございます。考えてみてください。木彫りの大きな竜も立派でカッコいいでしょう。ですが、そんなのはなんの自慢にもなりません。あのようなただただ大きく誰でも作れる木彫りの竜なんかより、この細やかな細工をこの小さい木に施すことの難易度の高さ!それはただ大きいだけの木彫りの竜より何倍も価値があると私は思いますが、貴族様はいかがでしょうか?私は来客があった時通す部屋のテーブルのど真ん中に飾りますね。これほど細やかで繊細な木彫りの竜などどなたも持っていませんよ!」とね」
「なるほど!確かに!私、すごく買いたくなりました!」
「そう、こうやって商人は口八丁手八丁で売りさばくわけです」
「なるほど!勉強になります!」
「因みに、これは商人にも得だけど、もうひとり得する人が居ます。さて、それは誰でしょう!」
リリアはしばらく唸って考える。
「あっ、もしかして、木彫りの職人さんですか!」
「正解!そういうこと。細やかな作業ができれば他の細やかな作業もできるようになる。技術力の向上は必要なことだよ」
「なるほど……これもヴィル様の居たお国の力なのですか?」
「まぁ、そういうことだな。詳しいことはあまり聞かないでほしいかな」
「わかりました。お話したいときで構いませんので。お待ちしております」
こうして、リリアとその日は一日中遊んだ。
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