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声楽家のサモナーさんが異世界で謳歌します  作者: euch nicht
第一章 スグワルド王国
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第九話

 俺は今までやってこなかった異世界物のテンプレをやりに来た。はずなのだが……。


「なんですかこれは!」


「なにかまずかったでしょうか?」


「とんでもない!これほどきれいに解体された魔物は初めて見ます!それにこれだけ高ランクの魔物を大量に……少々お待ち下さい。ランクアップの手続きを行ってきます」


「ちょ、ちょっと待ってください。俺が狩ったんじゃなく俺の召喚獣が狩ったんだ!俺ならこんな魔物退治できない!」


「何を言っているんですか?あなたの召喚獣とやらが倒したのであれば、あなたの力なので問題ないですよ?」


「気持ち的な問題です!不正をしているみたいで……」


「不正をしたのですか?」


「いや、そうでは無いのですが……」


「では問題ないですね。では処理してきますのでしばらくお待ちを」


 そして待たされること数分。


「ギルドカードが出来上がりました。このランクになると表記にも一苦労でして」


「冒険者ギルドカード」

「名前:ヴィルヘルム・シュッツ

職業:サモナー

種族:ハーフエルフ

冒険者ランク:B+」


「おいー!ちょっと待て!何だこのランクは!」


「見ての通りB+ですよ?B-に上がるとカードの素材がミスリルになりまして」


「いや、そんなこと聞いてないよ!てか、ミスリルなのかよこれ!ってそうじゃなくて、なんでいきなりB+なんですか!?試験とか無いんですか!盗賊を退治するとかなんかランクが一定以上になるためには!」


「いいえ、試験はありません。それに盗賊は傭兵ギルドの管轄ですので、やる必要はないですよ?とりあえず、頂いた魔物の素材をお売りいただけるとのことでしたので、買い取らせていただきます。全てでよろしいですか?」


「……もう何でも良いよ」


「わかりました。金額が大きくなってしまいましたので特殊硬貨にしましょうか?」


「特殊硬貨ってなんですか?」


「小ミスリル硬貨から上の貨幣ですね」


「ちなみに総合計はおいくらで?」


「合計で700万ミラになります」


「ミラ?」


「ええ、共通貨幣の単位です。ご存じないのですか?」


「ええと、田舎から来たもので……金貨は結構あるのでその、特殊硬貨でお願いします」


「わかりました。それでは小ミスリル硬貨7枚ですね。お確かめください」


 なんか、これ持っているのは生きた心地がしない。物価を見て、1ミラ=1円ぐらいだというのは気づいている。つまり、一気に700万円稼いだってことだ……とはいえ、金貨一枚大体1万円ぐらいの価値がある。それがイベントリの中には……うん。考えないようにしよう。

 とりあえず、気を取り直して、生産ギルド……はとりあえず、作りたいものないから芸能ギルドかな?しばらく歌ってなかったし、どこかのステージで歌えると嬉しいんだけどな……。

 そして、芸能ギルドへ入っていく。そして、依頼掲示板を見ていく。すると、アカペラで歌い手募集があった。ランクは問わないが、ランクによって金額が変わるそうだ。

 それを手に取り、受付に持っていった。


「おや?ハーフエルフですか、珍しい。っと、お仕事でしたね。この依頼を受けるのですか?……了解しました……これが地図になります。場所はここで、時間は夕方の鐘がなる頃に行ってください。地図はお貸しできませんので、この場で覚えてください」


「あの、質問してもいいですか?」


「はい、どうぞ」


「はじめての依頼なので勝手がわからないのですが、歌う曲は自分が選んで良いのですか?」


「はい、即興も可能です」


「開始時間はどのくらいですか?」


「そうですね、日が暮れる頃ですかな」


「演奏時間は?」


「そうですね……技量次第ですが、長くても2,3曲を歌う程度でしょう」


「要するに、下手なら一曲でご退場ってことですね。ありがとうございます。とりあえず、やってみます」


「はい、頑張ってくださいね」


 受付のおじいさんと別れて、しばらく街を散策する。

 そして、時間になり地図の場所へ向かうとそこには立派な豪邸が建っていた。

 入り口に立っていた門番さんのような人に声をかけた。


「あの、芸能ギルドのものですが、募集を見て来ました」


「ああ、そういえば受理されていたな。ところでその服で歌うのか?」


「あっ」


 服を考えてなかった。とりあえずあとでショップから入手しよう。


「だ、大丈夫です。これでも収納の魔法が使えるのでその中に入っています」


「嘘はすぐばれるぞ?」


「大丈夫です。とりあえず、中に入ってもいいですか?」


「……まぁ、良いだろう……一応忠告しておく。貴様がどのような格好で演奏しても構わないが、芸能ギルドの看板を背負っているのを忘れてくれるなよ。じゃあ頑張れ」


 そう言って門番さんと別れ、屋敷へと入っていった。

 建物の中には執事とメイドさんがいて、着替えをする旨を伝えると部屋へ案内してくれた。そして、急いでショップを開き、燕尾服と蝶ネクタイ、ズボン、カッターシャツ、カプス等々を購入していった。そして、着替えて表に控えていた執事さんに着替えが終わったことを伝えた。すると、執事はとても驚いた。詳しく聞くと、生地と素材が何でできているかわからないが高級なことを伺える。それに、宝石や貴金属を身につけ、貴族の屋敷のパーティーに負けない服装だと言うことだった。

 その後、執事さんに案内され、舞台袖で待機した。そして、パーティーが始まり、いろいろな楽器の演奏があり、ついに自分の番になった。何を歌うか迷ったが、雰囲気が明るいため、暗い曲は避けようと思う。とりあえず、イタリア歌曲なら結構明るい曲が多いからその中から歌おう。Gia il sole dal Gangeを選択した。


 ステージ上に立った。が、立食形式のパーティーで、歓談しながら音楽を楽しむようなスタイルだった。とりあえず、ダメでもともと歌ってみることにした。


『Gia il sole dal Gange Gia il sole dal Gange piu chiaro piu chiaro sfavilla piu chiaro sfavilla piu chiaro piu chiaro sfavilla

e terge o gni stilla dell’arba che piange

dell’arba che piange dell’arba che piange dell’arba che piange

Gia il sole dal Gange Gia il sole dal Gange piu chiaro piu chiaro sfavilla piu chiaro sfavilla piu chiaro piu chiaro sfavilla


Col raggio dorato Col raggio dorato ingemma ingemma ogni stelo ingemma ogni stelo ingemma ogni stelo

e gli astir del cielo dipinge nel prato

dipinge nel prato dipinge nel prato dipinge nel prato

Col raggio dorato Col raggio dorato ingemma ingemma ogni stelo ingemma oghi stelo ingemma ingemma oghi stelo』



 歌いきった。以前よりかなり調子が良い。というか、俺の理想そのもののような気もする。多分スキルの影響だろう。お客さんは静まり返ってる。数秒後も石化が溶けたようにざわつき始めた。


「彼は一体何者ですか!」


「芸能ギルドにこれほどの人材がいたとは!」


「ぜひとも抱え込みたい!」


「こら!抜け駆けは許さんぞ!」


 などと聞こえてくる。どうやら顰蹙を買うことはなさそうだ。これでやっと人心地つける。にしても、俺って緊張しないたちだけど、久々に緊張した……やっぱり異世界だからか?


「君、これから専属で雇われないか?金貨200枚月に払おうではないか!」


「貴様、抜け駆けするなと言っておるだろ!どうじゃ、儂なら月に210枚出すぞ!」


「儂ならば300枚はだそう!」


 なんかオークションみたいになってきた。


「あの、どんなに値を吊り上げても専属で雇われるような自体は避けます。私は旅をするつもりです。ですので、また寄ったときに歌わせていただきます。それまではお待ち下さいね」


 そう言うと、逃げるように芸能ギルドへ戻ってきた。

 結構夜遅い時間だったが、普通に営業中だった。


「あの~依頼を終えたのですが……依頼人にはんこをいただかなかったのです……戻らないとだめですかね?」


「ヴィルヘルム様ですね?大丈夫です。お話は伺っています。実はギルドマスターがあの場にいまして、あなたの歌を聞いてとりあえず、A++ランクまで上げることを本部に提案中です」


「はい?聞いてないんですけど」


「ええ、今喋りましたので」


「なぜに?」


「あなたのうたがそれほどだということです。それから、ステータスを偽造していますね?芸術スキルはいくつですか?書き換えますので」


「……えーっとLv10です」


「……ステータスは……見ても意味ないですかな?」


「……はい」


「わかりました。ギルドマスターに伝えてくるので、少しお待ちください」


 早く帰りたいな~と思う今日このごろ。

 しばらくして、かなりお年を召した御老体と受付が戻ってきた。


「すまぬの。お主の芸能レベルが10とは驚いた……しかも、ハーフエルフと希少種ときた。おっと、先に挨拶が必要じゃな。儂は芸能ギルド、スグワルド王都本部ギルドマスターのべルークじゃ。よろしくのぉ」


「は、はぁ。なぜそのような偉い方が?」


「ふむ。直接お話がしたかったのじゃ。実はのさっきまで他のギルドのマスターたちと話し合っておったのじゃが、その最中に芸能レベル10という、前代未聞のレベルがおるという話を聞いてな。満場一致でランクをA+++にすることに決めたのじゃよ。それで、これが新しいギルドカードじゃ」


 そう言うと、新たなカードをよこされた。金色に赤みのかかった色合いのカード。名前や職業、ランクに備考欄にスキルが書いてある。


「もしかして、これってオリハルコンというやつでは?」


「そのとおりじゃ。オリハルコンをメインにアダマンタイト、ヒヒイロカネの合金じゃ。これ以上に硬いものはこの世に存在せんとまで言われておる」


 なんか、すごいものをもらってしまった。


「それで、お主は旅をするとのことじゃが、まことか?」


「はい。その予定です」


「そうか、それではお主に頼みがある。立ち寄る街で、歌ってほしいのじゃ。そうじゃの、最低でも5回ぐらいはその街で公演してほしい。お願いできるかのぉ?」


「それくらいなら大丈夫ですよ?差し迫った用事がない限りお約束します」


「うむ、よろしく頼むぞ」


 そう言われ、俺は芸能ギルドを後にし、王城の帰路へとついた。


 そういえば、下手くそなら一曲で終わりって言ってたけど、俺、一曲で終わりにしてきちゃったけど良かったんだろうか?


 そんなことを考えつつ、今後、生産ギルドや傭兵ギルドに行くときには注意をしようと決意を新たにした。

お読みいただきありがとうございます。

誤字、脱字等ありましたらお知らせいただけると幸いです。

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