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どうも腐女子です。
傭兵のおじさまが私の奴隷になった日、つまり五日前。
溜まりに溜まったストレスが一気に溢れ出したのか高熱で寝込み、性悪メイドさんに舌打ちされながら看病されやっと生き返りました。
私が寝込んでいる間、傭兵のおじさまは二番目の兄の所でいじめられているそうです。おい、私のおじさまだぞ。
この世界にはポーションとか魔法とか便利なものもあるようですが、バカ高いらしく黒髪の人間に使うのは勿体ないとただの風邪薬を飲まされてました。
いや、別に風邪薬飲ませてくれるんだったら高待遇じゃーん! とか思っているあなた! そう、風邪を引いたときの私!
それは飲んでから思うべきだったんだ。何とこの世界の薬、とても不味い。
苦味は勿論のこと、草の青臭さや、何が原材料なのかわからない謎の脂──少し青色がかった脂、味は激甘だったと思う──や、噛み砕けない程硬い小さな黒い固形物。
甘くて苦くて渋くて辛くて酸っぱくて。初恋青春BL同人誌のタイトルかと言うぐらいには無茶苦茶な、心が乱れる味だった。味覚を乱して固形物で喉を物理で刺してくるというおまけ付きである。
そしてこの液体薬の色は虹色だった。
虹色だけなら許容できた。異世界と言うことはわかっているのだから、まあそんなこともあるだろうと危機感は覚えていなかった。
尚且つこの薬飲むまでは無味無臭なのだ。油断させておいて口をつけた瞬間に殺すタイプの劇薬だった。
絶対これのせいで長引いたと思う。
対してポーションは魔法使いが作る魔力を込めた薬で、込めたその人の魔力によって、甘党の人だったら甘くなったり、辛党の人はスパイシーになったりするらしい。
魔力に味があるのか、作り手の好きな味を魔力を伝って材料が読み取るのかまではわからないが、たまにある異世界物の様な苦くて不味いポーションではなくて少し安心した。
いや、黒髪がそれを飲むことは一生ないんだろうけどね!
そして、それを真似て作ったのが、庶民用の風邪薬である。風邪薬は魔術師や呪術師が、ポーションを作る材料に手を加えて、魔力なしでも同じ効果を出せる様になっているらしい。
何でも魔力を持つ動物──魔獣の一部を使うとか何とか。あの黒い固形物ってもしかして……なんて考えてしまったが、まぁ、きっと気のせいでしょう!
しかし、ポーションをコップ一杯分飲めばほとんどの病気を治せるのに比べて、風邪薬は最低でも一日一杯を一週間ほど飲み続けないと効果が現れないのだ。
風邪薬、と名称は付けられているがこちらもポーションの代用品なので大体の病気や傷に効くらしい。風邪が大体一週間で治るとして、あるかは分からないがインフルエンザは三週間はかかる、的な?
薬はポーションよりは安いと言っても、医療品だからかお値段はそれなりらしいし不味いしで、基本的に貴族の人はポーションを樽買いして置いておくらしい。樽だと少し値引きされて、保存の仕方も簡単だとか。
この家も何個かポーション樽を持っていて、よく怪我を負う兄達に使われているそうだ。特に二番目の兄は剣士だからか血だらけの姿をよく目にするが、執事さん達に連れられ戻ってきたら治っていたのはポーションを使っていたからだそうで……。私はてっきり兄の異常な生命力が一時的に回復力を上げて治しているのだと思っていた。
そんな訳で、本日復活したアレクは一番上の兄に連れられ、父の部屋に来ています。
またぶり返しそう。
今話の後書き
ゴブリンは笑って女騎士に触ろうとする!
が、いつまで経っても触れられず、疑問に思ったゴブリンは腕を見て驚愕する。なんと一本丸々無くなっていたのだ!
これにはゴブリンも思わずニッコリびっくり!
どうするゴブリン! このままじゃ全滅だ!
この世界にもポーションはあるようで、ポーションは美味しいものもあれば、人によっては嫌いな味もたくさんあります。
なので、家族の中でも好き嫌いで喧嘩になることも……。
いつかそんな腐女子家族も見てみたいですね。