表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

15


 おはよう、アレクだ。

 今日はグオリオおじさまと外で訓練している。

 訓練と言っても、体力作りの為に走ったり将来平民になった時に使うであろう武器の素振りと、基礎中の基礎訓練なのだが。

 おじさまは元傭兵で、主に剣を使って戦っていた為、私にも剣を教えてくれる。


 最近のお勉強は平民の暮らしについてなので、それを絡めての訓練となった。

 まず、武器を扱う上で大事なこと。それは黒髪の平民は体が大きくなっても扱える武器が限られているということ。

 黒髪は貴族として生きていけないため、市井に出て生活していかなければならない。

 そんなときに貴族しか手入れが出来ないような高価な武器やそもそも扱えない魔導書等を持っていても換金する事位しか出来ないし、邪魔なだけなんだそうだ。

 特に魔導書は売るにしても平民には必要ないし、赤髪や青髪を持っていても魔導書を媒体とした魔法なんて魔力が足りない。

 そんなわけで、買う人間がいない市井に出ても売ることがほぼ不可能な武器なんだそうだ。

 グオリオおじさまは元々平民の出だったようで、傭兵団に入って活躍するまでは魔導書を触ったことがなかったらしい。

 何度か目にすることはあっても、それは相手にとって家宝のようなものだから触れたら最後殺し合いに発展するとかなんとか。

 まあ、魔導書を持っている平民なんて元貴族かその家系だから関わらない方が良いですよ、と笑っていた。

 

 休憩中、汗を拭きながらおじさまと話をする。

 内容は、グオリオおじさまが魔導書に触れた機会についてで、何でも傭兵団の団長が道端で拾った元貴族の平民が持っていた様だ。

 傭兵団の団長さんは結構気性が荒い人だったみたいで、ぐったりしている元貴族の男を担いで帰ってきたときは『ついにやってしまったか』ムードだったらしい。

 元、とはいえ最近まで貴族だった男に危害を加えたら、その人の元家族から報復がくる恐れがあるらしく、市井の平民は出てきたばかりの元貴族には手を出さないという暗黙の了解があるのだとか。

 まあ実際は疲労困憊、餓死寸前で道端に倒れていた元貴族を連れて帰っただけだったのだが。

 その時もその時で、傭兵団の人達は『元いた場所に戻してこい』派と『仕方がないからうちで預かろう』派に分かれて喧嘩になったとかなんとか。


 しかし、何で扱えもしない武器を持ってきてしまうのか。元貴族なら家に剣とか槍の一つぐらいあっただろうに。

 疑問符を浮かべているとおじさまは少し困った顔をしながら教えてくれた。


「いくら黒髪でも、家族ですからね。愛してしまえば期待も抱いてしまう」

「期待ですか?」

「ええ。もしかしたら我が子が神に愛され魔力を持つのではないかという期待です。自分の子どもが特別なんじゃないかと考えてしまう親も多いのですよ」


 なるほど。神様が我が子に祝福として魔力を授けてくれるんじゃないかと考えてしまう訳か。

 そして魔力が宿ったらこの魔導書で活躍すれば、すぐに迎えに行くからと持たせるらしい。

 まあ、この世界では使える魔力量は成長するし、属性も増やすことが出来るみたいなので、0から1にすることも不可能ではないのかもしれない。

 これまで黒髪が魔力を使えるようになった例はないらしいけど、少しは夢見たっていいじゃないか。

 日々自分達の子どもに魔力が目覚めるようお祈りする時間も大切なんだろうね。

 まあ、アレクには関係のない話な訳だけれども。

 神に祈る親なんていませんからね。

 ……落ち込んでなんかないんだからな。

 

今話後書

女騎士は扉の前で一度耳をすませた。

何かの金属で出来た扉の先から音は聞こえず、一先ず安心すると、なるべく静かに扉を開ける。

扉を開けた先は、また部屋だった。

ただの部屋ではない。

先ほどの様に何もない空間ではなく、誰かの部屋の様だ。

椅子や寝具、書きかけの紙に積み上がった本たち。

幸いな事に部屋の主は不在だった。


二番目のお兄ちゃん登場回にしようとしたらそこまでいきませんでした。

魔力が育ったり属性増えたりするのはロマン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ