13
セナサニア伝記
それは、サニアという少女が、山や海を越え、国を救い、魔王を倒すという、9割は盛っているであろう内容の物語だった。
セナサニア伝記は平民から貴族、老若男女問わず知らない人はいないと言われるほど、この国に根付いた物語だ。
この国の建国の歴史や、数々の戦争、一部の魔物や悪魔について書かれている子ども向けの教科書の面を持ち、貴族にとっては恋愛指南書でもある。
10歳から入ることになる学校の中でも学力低めの学校は、このセナサニア伝記を読めるようになるのが卒業までの目標らしい。
つまり私はもう学力低めの学校の教育を修了したのだった。
先程も言った通り、セナサニア伝記は貴族の恋愛指南書として高い評価を受けている。
私がこんなに早く読み終えたのも恋愛要素があるというところが大きいだろう。恋愛小説だと思って読むと分からない文字も楽しく覚えられた。
近年は男尊女卑を疑問視する声も多くなり、高位貴族の次女という身分ある立場のサニアが騎士になる過程を描いたこの伝記は主に貴族でも身分が低い女性たちに愛読されている、らしい。
サニアが生きた時代にはもっと男女差別が酷かったというのも、一つの要因なのかもしれない。
伝記の主軸はサニアが女騎士になることだが、副題としてなのか恋愛要素が多く詰め込まれていて、一部ドロドロなシーンもあったりする。
サニアは容姿が整っていて、――人と接する時は猫を被っていた為――性格も良く、結構モテたみたいだ。
所謂逆ハーレム状態であったのだとか。
公式CPである第二王子、その次に人気の騎士、剣士に魔法使い、人気は薄いがその分マニアが多い死霊術師、敵同士という不利な環境ながら第二王子と熾烈な戦いを繰り広げた悪魔の少年等々、強い人達が続々とサニアに惚れていくのは前世で少女漫画を読んでいた私からしても凄まじかった。
特に第二王子と悪魔の少年はサニアを勝ち取る為に何度も死にかけたりとハラハラする展開が多く、途中途中で休憩を入れないと疲れてしまう程だった。
最終的には第二王子に軍配が上がり、サニアは第二王子と結婚する。悪魔の少年は姿をくらまし、現在に至るまで発見されていない。
光と闇の様な結末に、正直少し滾ってしまった。
第二王子と悪魔の少年のCPとかないんですかね!
そう思って書庫を探すも、流石になかった。
どうやら悪魔というのは人間が触れてはいけない禁忌の種族らしい。
王子と悪魔がまぐあったら発禁待ったなしということだった。
そんなこんなで私は漢字の様な固定文字を覚えることに成功したのだった。
ついでに私の推しCPは男装サニア×第二王子だったりする。勿論書庫を探しても見つからなかった。
かなしい。
今話後書
拘束された女騎士は黒い蛇の顔の前にいた。
黒い蛇は牙から毒を垂らし、地面に落ちた毒はしゅうしゅうと音を発てている。
女騎士は何とか拘束を解こうとするが、目の前の蛇がそれを許すはずもなく。
成すすべもなく女騎士は頭から足まで一呑みされてしまった。
セナサニア伝記はいつか番外編で書けたらいいなぁと思っています。
サニアは総攻めの気持ちで書きます。




