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 犬種は柴犬が好きな、腐女子だ。

 グオリオおじさまの悲しそうな顔を見て、つい敬語で話さないことを約束してしまった。友達と話す感じでいいのだろうか。

 

 まあ、その事は置いておこう。今回グオリオおじさまがアレクの部屋に来たのは挨拶の他に、私の身の回りを世話する上で不備が起きないよう性悪メイドさんと打ち合わせする為だったらしい。


「メイドさんなら、今ならお洗濯をしていると思いま……思うよ」

「洗濯ですか? なら少し時間が掛かるかも知れませんね」


 うぅむ、と悩むグオリオおじさま。

 この世界にはまだ洗濯機がないため、手洗いで洗濯をしなければいけないらしい。性悪メイドさんは仮にもアレク(わたし)のメイドさんなので、アレク(わたし)の分もやらなければいけないと愚痴られた事がある。水を吸った布は重いから嫌だの、手が荒れるだの、こんなこと庶民にやらせればいいだのと本当に色々と愚痴られた。その時に洗濯機がないということも何となく理解した。

 さて、グオリオおじさまが悩みの渦から脱出し、私に笑顔を向けながらこう言った。


「せっかくの二人だけの時間ですから、アレク様とお話がしたいです」


 か、か、か、可愛い! 可愛いぞグオリオおじさま! 少し頬を染めて、はにかみながら何て事を言うんだ! ど、どうすればいい? 話す? 私と、何を話せばいいんだ? おい、まて、これでは父親の部屋に行ったときと同じ様な状況に陥る! 落ち着け、落ち着くんだ私……。

 

「お、お話ですか?」

「はい、今後の為にも是非アレク様について知りたいのです!」


 グオリオおじさまは今後の為に私の事が知りたいらしい! マジか! やったね! 

 ん? しかし待ってくれ。私はこの体(アレク)になってから、趣味と呼べるものが無くなってしまったのだ。元々読書が趣味だったのだが、アレクになってからは本を触ることさえなかった。本が存在しているのかも分からないが、よく転生物で見る、めちゃくちゃお値段が高い系の本とかならきっとあるはず。あってくれ。

 なので趣味の話は出来ないし、特技もないし、うーん、好き嫌いとかなら結構あるのだが、そんな事でもいいのだろうか。

 

「えっと、……果物が好きです」

「ほお、アレク様は果物が好きなんですね! そういえば、先程も美味しそうにオレンジを食べていましたね」

「お、オレンジ」


 やっぱりこちらでもオレンジの事はオレンジって呼ぶのか、よかった、変な名前とかになってなくて。

 あとおじさま、あまり食事風景を思い浮かべないでください……恥ずかしいので、恥ずかしいので!


「ああ、申し訳ございません。平民はあの果実の事をオレンジと呼ぶので……。アレク様は満月の実、という方が聞き馴染みがありますよね」

「ま、満月の実?」


 満月の実とは何ぞや、と顔に書いてあったのだろう。

 グオリオおじさまは、おや? と目を瞬かせ、口を開いた。


「アレク様は満月の実、という言葉を……」

「知らないです」

「……では、オレンジは聞いたことがありますか?」

「(この体になってからは)ないです」


 グオリオおじさまは少し考えると、申し訳なさそうに眉尻を下げ、聞いてきた。


「失礼ですがアレク様、お勉強をしたことは……」

「はい、ありません」


 グオリオおじさまは一瞬怒りや悲しみを混ぜたような顔をしたかと思うと、くわっと目を見開き私の肩を掴んできた。


「アレク様! お勉強、しましょう!」

「え、あ、はい」


 て言うか、教育奴隷ってそういう先生みたいな事をする奴隷の事じゃないの?

 私の疑問は鼻息を荒くしたグオリオおじさまには届かなかった。


今話後書

女騎士は、洞窟の一番奥まで来ていた。

しかし周囲を見渡しても、魔物も人もいない。

もしかして、気のせいだったのだろうか……一人が寂しくて勘違いしてしまったのだろうか。

探検もここまでか……小さくため息を吐くと、女騎士は歩き出した。

いや、歩き出そうとした。

気がつくと足首を何かに掴まれ、身動きがとれない状態となった女騎士。

どうする! 女騎士!


おじさまに可愛い顔してもらえたので満足です。

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