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どうも、引き続き腐女子だ。
とりあえず、おじさまことグオリオおじさまには椅子に座って待っててもらい、私は朝食を出来る限りの早さで食べていく。
ピーマン、ブロッコリー、グリンピース、ピーマン……具沢山なシチューは急いでいる私からすると少し食べづらい。いつもだったら美味しくいただけるのに! こういう時に限って!
もぐもぐと無心で食べ続けて、少し顎の休憩をと頭を上げるとグオリオおじさまが天使の笑顔と見間違えるぐらい可愛らしくニコニコと私を見てくるので、その姿を眺めたりする。
へにゃりと笑う姿がハムスターに見えてきた。可愛い。
お腹がいっぱいになり、満足感と幸福感に満たされながらグオリオおじさまの方へ椅子を持っていく。持っていくと言ってもほんの数歩だが、おじさまは頭を撫でてくれた。
アレクのニコニコ顔が可愛かったのか、これでもかって言うぐらいわしゃわしゃと撫で回される。何か小型犬になった気分だ。アレクが小型犬ならおじさまは大きな虎だろうか。こう、虫とじゃれて遊んでる猫ちゃんを大きくしたような、にゃんにゃん言いながら猫パンチをかましてくるような、そんな虎……。まあ私の脳内では既に違う意味でニャンニャン言っている訳なのだが。
「アレク様は可愛いなぁ」
グオリオおじさまが呟く。確かにアレクは超絶美少年なのでおじさまの呟きには激しく同意だが、穢れのない瞳でそんなことを言われるととてつもなく恥ずかしい。おい、おじさま。外見は食べちゃいたいぐらい可愛いかもしれないが、中身は腐女子だぞ。そんな目で、そんな顔で言われたらこっちとしてはキュン死どころか恥死だぞ。
「おじさま、お話を聞かせて頂きたいのですが……」
「アレク様、私はもう貴方の奴隷なのですから丁寧な言葉なんて不要ですよ」
「いえ、そういう訳には」
会ったばかりの年上にタメ口きくとか陰の者であった私には無理だ。咄嗟に出てしまったものなら兎も角、普段は先生にだって敬語のようなものを使っていた私には無理な話なのだ。
私の言葉を聞いて、おじさまは目をぱちくりと瞬かせ、不思議そうな顔でこちらを見ている。
奴隷に敬語を使うなんておかしい。そんな顔だ。
そもそも私はおじさまの事を奴隷だと思っていないし、奴隷制がない時代の日本に生まれたのでそういうモノに抵抗感がある。前に性がつく奴隷ならまだ理解ある方だと思うが、そうでない奴隷なんて調べたことも知ろうとした事もなかった。何かグロくて痛そうだし……、私は痛いのは嫌いなのだ。やっぱり見るならハッピーエンドがいい。
だからおじさまや兄たちが当たり前のように奴隷を認めているのが、気持ち悪くて怖くてたまらない。
「アレク様、アレク様が嫌なことは私もしたくありません。しかし、これから主従関係となる我々が他人行儀では他の者たちに示しがつかないのです」
「どうか、アレク様が私と離れるときまで、信頼していただけませんか?」
悲しそうな顔をして見つめてくるおじさまに、私は頷く事しかできなかった。
今話後書
適当にクサリゴケを狩り、適当に魔物を斬り、適当に、いや、確実に迷子になったとき、女騎士は強い力を感じ取った。
――この先に、何かいる
女騎士は走り出した。流石に一人で洞窟の中をさ迷うのは怖いし、つまらなかったからだ。
できるだけ人間であってくれ。そう女騎士は願った。
おじさまが沢山喋ってくれたので満足です。
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