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丘から見えた景色

謎理論回

 村はずれの丘に登る。日はとっくに沈んでしまったけれど、今日は満月だから暗くて見えなくなるようなことはない。


「シエラ、あれが見える?」

 そういってアルハが指差したのは、普段の狩ではめったに立ち入らないような森の奥だった。ひときわ大きな木が並ぶあたりで、神が宿る森と呼ばれている。神なら五十年前に地上に降りてきた気がするけど、とにかくそういうことになっているのだ。


 目を凝らしてみるまでも無かった。アルハの指差したあたりでは、森のひときわ大きい木の根元を中心として空間が渦を巻くように歪んでいるのがこんなに遠くからでもはっきりと見えた。逆にこの高い丘からじゃないと見えないような位置に有ったけれど、これだけ歪んでいたら勘のいい人なら気付いてもおかしくない。アルハが急ぐのも分かる気がした。


「空間が歪んで見える?それだけ?私は魔法が使えるから魔力が乱れてるのも見えるんだけどね、そっちも凄い事になってるわ」

「ここから測定してみた結果だけど、あそこに溜まっている魔力の量は優に500kmp(キロエムピー)を超えてる。世界級魔法が使えそうなくらいの量ね。もう何が起きてもおかしくない状況よ」

「完全になくすことはできないけど、せめて散らすくらいはしておかないと危険すぎる。明日君にはそれを手伝ってもらうから、早く起きて私の家に来て。準備をして待っているから。」


 アルハにそう言われては僕に逆らうことなどできるはずもない。アルハに十分すぎるほど釘を刺されてから、その日は解散になった。久しぶりに僕も何かを手伝えるかもしれない。ひょっとしたらこの村を救うかもしれない大仕事だ。アルハに気に入られているからとはいえやっと僕も何かをすることができる、そのことを嬉しく思いながらその日は家に帰った。


 アルハが言うにはこの世界には二種類の力があるそうだ。ひとつは空間中の原子を制御する物質的な力、もうひとつは亜空間内の魔力素子に作用する魔力的な力だ。

 この世界の僕らが生活している場所には亜空間と呼ばれる空間が四次元方向に重なっていて、その中を魔力雲と呼ばれる魔力素子の塊が漂っている。これがアルハの世界では「ダークマター」と呼ばれていたものの正体で、魔法と呼ばれる技術は魔力素子を消費して発動する物質的な力によらない行動の総称だ。

 アルハのいた地球はちょうど魔力雲の分布域から外れていたらしく、アルハが亜空間の存在を知ったのはこの世界に来てからだそうだ。


 魔法の発動には特殊な才能が要求される。曰く、本来生存に必要のない魔法技術は遺伝子的に抑制がかかっており、何らかのバグでその抑制が外れた者だけが魔法を使えるようになるという。

 その抑制が外れた人もあらゆる魔法が使えるようになるかというとそうではなくて、物質的な力を代替するだけの一般魔法を使えるにとどまる人が圧倒的に多く、アルハの使う「物質創造」のような特殊魔法になるとさらに多くの抑制を外す必要があるという。


 遺伝的なバグに頼らずに抑制を外す方法も存在し、普通はその方法を体得することで特殊魔法を使えるようになるそうだけど、アルハはその過程をすべて飛ばして生まれてきた。単なる偶然か神のいたずらか、とにかくこの世界に生まれ変わってきた影響であるのは明らかで、遺伝子の他の部分にも思わぬ傷がついていてもおかしくないというのがアルハおよび研究者チームの結論だ。

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