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プール後はお気をつけください

2018.5.19 誤字脱字修正 文章、内容1部修正

 雲一つない青空、夏の日差しが肌に突き刺さり、暑さを感じさせる。

 今日は待ちに待った?プールの日である。



 愛莉は前日から楽しそうに準備をしていた。


「おはよう志恩。ぐずぐずしてると、置いてっちゃうよ」


 置いてってくれた方が楽かも。などと呟きながら用意をしていた。


「おはよう、って、なんで愛莉は水着姿で家の中を歩き回ってるんだ?。気が早過ぎるんだよ」


「へへぇ~、暑いんだもん。それに、この上から洋服着るだけだから、いいの。女の子は水着に着替えるのが大変だから、着て行っちゃうんだよ」


 やれやれと、志恩も用意を済ませ愛莉と共に出掛けた。



 集合場所に志恩達が着いた時には、既に全員揃っており合流と同時に出発。途中の乗り換え駅で世田谷の女子2人と合流し、いざプールへ向かうのだった。



 プールの入り口には、平日にも関わらず人で溢れかえっており、政夫などは、既にその光景だけで疲れ顔だ。


「凄い人ですね」


 暑さや人混みには強いようで、貴司は平然としていた。

「夏休みだからね」


 静香は下に水着を着ているようで、スカートをバサバサとまくりながらスカートの中へ風を送っている。

「この暑さもヤバくない?」

「マジ溶ける!」


 そんな会話をしていると、美沙が思い出したかのように、真剣な顔つきになり、みんなに聞いて貰える様に話出した。


「ヤバいって言うと、実は今朝から危なそうな人が私達の後をつけてる感じなんですよ」


 志恩達は驚きつつ、美沙に続きを促した。


「えっ、どんなやつ?」


 友梨は少しこわばった顔つきになり、

「振り返ったときにチラッと見えただけなんですが、厚手の帽子を被って、半袖のスーツっぽい感じでした。私が見たら、すぐに隠れちゃったんです」


 すると静香は顎に手を添え、探偵ドラマの様なポーズを決めて「確かに怪しい~、今日はみんなも注意しときましょう」


「「了解!」」


 その後、何事もなく順調に入場手続きを済ませ各自更衣室へ。


 このプール場は、入口からプール場の半分くらいまでが、半ドーム型となっており、流れるプールや波のプールが有る。ドームから出た奥の方には、ウォータースライダーやボートスライダーなどが設置されている。


 志恩達は既に着替えて揃っており、女性陣が来るのを少しソワソワしながら待っていた。


 猛はウキウキ顔で志恩らに話す「いやぁ~俺らのグループって、女子レベルたけーよな」


 貴司はウンウンと頷き「そうだな」としみじみ語り。


 恥ずかしそうに政夫は「皆さん素敵だと思います」などと照れている。


 猛は女子が出てくる方向を眺めながら呟く、

「誰が一番可愛いかな?ヤッパ、例の二人はいいよな~」


 貴司も猛と同じ方向を眺めながら頷く、

「確かにあの二人のレベルは高いですね。いつものメンバーもレベルは高いですが、学校で見慣れてますしね」


 猛は嬉しそうに。

「俺らの歳で、あれはやべーよ」


 ーー何がいいのか、まだ未成年のお子ちゃまだろって、ま~俺も今は子供だけどね。

 志恩は静かにため息を()くのであった。



「「「お待たせ~」」」



 そんな男の子が馬鹿な話をしていると、女の子達が現れる。

 愛莉と美沙がビキニ姿で、後の3人はモンキニである。確かにあの歳の子供にしてはみんなスタイル抜群である。約1名はまだお子様だが、それは言わないでおこう。


 

「ちょっと男子!エロい目で、ジロジロ見てんじゃないぞー」

 静香は腰に両手を添えて男子を睨んだ。


「ほ~静香のその平坦な、どこを見ろと言うんじゃい?」

 猛は自分の胸をさすりながら、静香に食って掛かる。


「たーけーしー!絶対今日あんたを水に沈めてあの世へ送ってやるからねー」


「「はははは」」


 パンパンッ

「こらこら、遊んでないで行きましょう~」

 愛莉が手を叩いて皆を静まらせると、先へと進み始めた。


 その時、ちょっと(うつむ)き気味な友梨に志恩が気付いく、

「あれ、どうしたの友梨ちゃん。浮かない顔して」


 友梨の隣にいた美沙が、友梨の肩を抱きながら答える。

「それがね、私は見てなかったんだけど、更衣室を出たとき、家の方で私達をつけていた人影を見たらしいの」


 話を聞き周りをぐるっと見回してから、愛莉はみんなに向かって、

「それって怖いね。美沙ちゃんと友梨ちゃんはどこに行くときでも、男子を連れて行動してね。一応、念のためにだけどね」


 美沙と友梨は志恩達を観てから「はい、ありがとうございます」と応えた。


 二人の前に猛が進み出る。

「二人に何かあったら、俺が守るから安心しな」


 そんな猛の背中を押して前に進み出る静香が、

「あんたは痴漢で捕まらないように自分の心配してなさいよ」


「こらこら」


 ーー俺も警戒しといた方が、良さそうだな。

 志恩は気持ちを引き締め辺りに注意を払うようにした。




 志恩達は午前中、何事もなくプールを満喫し楽しんでいた。


 流れるプールで、9人は浮き輪等に乗って楽しんでいる。


 愛莉はみんなに「ねぇねぇ」と話を切り出した。


「そろそろお昼にしようか?」


「そうだな、動いてたからお腹減ってきたよ」


 志恩は頷き、同意する。


「よっしゃ~俺も泳ぎ過ぎて、腹ペコペコだよ」

「あんたは、いつもでしょ」


 猛と静香はいつものやり取りをしていると、友梨が恥ずかしそうな顔をしながら「あの~」と手を上げる。


「あっ、私、サンドイッチ作ってきたんです。良かったら皆さん食べませんか?」


「えっ、わざわざ作ってきてくれたの?ありがとう」

「マジッ?!友梨ちゃんのお手製弁当。すっげー食べてぇー」

 静香と猛が振り返り、友梨を見て騒ぐ。


「手料理って程じゃないですよ。ただのサンドウィッチですから」

 照れながら、嬉しそうに友梨が応えた。


「流石、女子だね。ランチが楽しみになったよ」

 志恩が友梨を誉めてるのを聞いて、愛莉は両手を頭で組ながら、志恩の方を向き、

「みんな、あんなに喜んでくれるなら、私も何か作ってくれば良かったな~。志恩も、ああ言う気配りの出来る子が好き?」

「そうだな、気配りの出来る子は好きだよ」

「ふぅ~ん」


 バシャ


「愛莉、突然水掛けるなよ!口に入ったじゃん」

「プールなんだから、口に水くらい入りますぅー」

 愛莉は頬を膨らませながらそっぽを向いた。


「じゃあ私、更衣室にお弁当取ってくるんで、皆さん食べる場所を作っておいて下さい」

 そう言ってプールから出ると、友梨はさっさと行ってしまう。

 それに気が付いた静香は「あっ男子、は、無理だから私がついてく。待って~」と、静香が急いで友梨の後を追いかけて行った。



 志恩達は、プールの外れにある芝生でランチの場所を確保して、友梨達が戻ってくるのを待ち、くつろいでいた。

 するとそこへ、静香が息も切れ切れに走って戻ってくると、声をひきつらせながら叫ぶ「大変、友梨がいなくなった!」


「静香、どう言うこと?」

「分かるように教えてくれ」

 愛莉と志恩が代わる代わる質問する。


「ごめん。私が友梨のことを追いかけて更衣室へ行ったんだけど、友梨の姿がロッカーの前になくて、トイレかと思って、待ってたんだけど、全然現れないからみんなのところに戻ってきたの」


 志恩は急いでみんなを集め、行動指示を出す。

「よし、急いで手分けして探そう。男同士、女同士別れて探す。その方が入れる場所などでで範囲が広がるから。ただ、何か見つけても、全員揃ってから行動。どんな危険が有るか分からないから」


「「おっけー」」



 そして、暫く全員で探したけれど、一向に手掛かりすら見付からず、1度みんなで集まり相談していた。


「どうしよう、本当にみつからないよ」

「こうなったら、ここのプールの管理者か警察に言った方がいいかもな」

「そうだね、何かあったら大変だしね」

 

 プールの更衣室で彼女が拐われたことは驚きだが、無防備な状態の彼女の身が危険であると言うことは、少しでも早く助けなければならない。

 こんなときに役に立つ魔法があれば、と自分の不甲斐なさを志恩は祟っていた。


 そんな志恩の元に、1人の男性が近付いて来る。


「志恩くんだよね」

「はい、なんでしょう?」


 志恩が男性に応えたとき「あー、この人です!この人がストーカーです」美沙が驚きと共に犯人発見と驚いた声を出す。


「朝から私達のことを付けていた人です」

 志恩も周りの仲間も、驚きと共に身構えた。


 その男はその言葉を聞いて、慌てたように両手を前に出し否定の素振りをする。

「いやいやいや、俺は怪しい者じゃない。そこの志恩君とは面識だってあるよ」

 と、慌てながら弁解する怪しい男性。志恩はその顔を見て、直ぐに誤解で有ることを悟った。


「あーあーみんな落ち着いて、この人はストーカーじゃないから」

「えっじゃあ、何者なのよ!」

「この人は、前に学校へ来たことがあるんだけど、刑事さんだよ」


「「え!刑事?」」


 そう、そこに現れたのは、前に学校の校長室に志恩を訪ねて来た葛城警部補であった。


「なんであの時の刑事さんが、プールなんかに居るんですか?それにストーカーのような真似をして、このタイミング」


 志恩の質問に葛城は素早く反論する。

「その事なんだけど、今は俺の事よりも拐われた友梨さんを早く助け出すべきでは?」


 その言われ志恩は驚き、聞き返した。

「友梨ちゃんの居場所知ってるんですか?」


「勿論、今回我々の目的は友梨さんの護衛だからね」


「えっ護衛?なんで護衛なんかしていたんですか?」


「今はゆっくり、説明している場合ではないんじゃないかな」


 ーーそうだった、今は一刻も早く友梨ちゃんを助けないと。


「確かに。事情は後で説明してください。居場所が分かるなら、友梨ちゃんのところへ連れてって下さい」


「了解だ。よし、急ごう」

 志恩と葛城のやり取りが終わると、全員は次の行動に移る。


 全員で行って何かあっても困るので。と言うことで、救出には志恩、猛、静香が向かう。愛莉も行きたいと言い出したが「残ったメンバーを落ち着かせるのも大切な役目だよ」と言って(さと)し残ってもらった。




 ‥向かった先はプール裏のポンプ室の様な所だった。大きな水道管がいくつもあり、蒸し暑く、グウォングウォンと大きな機械音でしており、会話もままならない場所だ。


 更に奥の方へと向かうと、物陰に女性が隠れて待機しており、葛城が近付くと合図を送って手招きをし、自分の隠れている場所へと誘導した。


「お疲れ様、様子はどうだい?」

 葛城が尋ねる。


「はっ、奴は今のところ大きな動きは見せていません。ずっと、少女と話しをしているようなんですが、この距離だと話の内容までは聞き取れてません」


 そう言って彼女が示した先に目を向けると、そこには手を縛られて椅子に座らせれている友梨の姿があった。


「紹介しておく、彼女は私の部下で三上恵(みかみけい)巡査だ」

 志恩達は軽く会釈だけした。


「早く助けないと」

 静香は身を乗り出し訴える。


「まぁ待ちたまえ」と静香は葛城に抑えられる。


「静香、急に飛び出したら犯人を驚かせ、友梨に何をするか分からないから様子を見るんだ。いったいあの犯人は何者なんですか?」

 志恩は冷静に状況を見てから、葛城に質問する。


 このとき、葛城が志恩の耳元で囁いた事は、志恩を驚かせた。


「志恩君、あの犯人は君と同じ能力を使うので、君にしか捕らえられない」


 志恩は目を丸くして驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、葛城に耳打ちした。


「分かりました、細かい事は後程。では、連れの二人にはバレないようにお願いします」


「了解した」


 そう言って、葛城は静香、猛に犯人の後ろに回り込むので付いてきてくれと言って、二人をその場から遠ざける。それを確認してから、志恩は三上巡査に「犯人が友梨から離れたら速やかに友梨の安全確保をお願いします」と告げ、物陰から出ると犯人へと正面から堂々と歩いていき、魔法を唱える。

 

『スリープミスト』


 これで相手が眠ってくれればいいが、同じ魔法を使える者ならば抵抗されてしまうだろう。だが、志恩の狙いは友梨を眠らせる事にあり、犯人を眠らせる目的ではない。友梨にこれから志恩が行う事を見せない事が狙いだ。


 案の定、犯人は眠らず、魔法攻撃を受けたことに気が付いた。


 志恩の狙い通り友梨は眠りに落ち、犯人は志恩の存在に気が付いた。


「お前は誰だ?」

「お前こそ何者だ、その子は俺の友人だ。返してもらうぞ」

「そうか仲間か、ならば始末させてもらうぞ」


 犯人はナイフを構え、志恩へと走り出し、同時に魔法を唱えた。


『スモーククラウド』


 犯人と志恩の間の空間が、煙に覆われた。


『エアーボム』


 志恩もすかさず魔法を唱え、煙に包まれた空間の中心が爆発し、その爆風で煙は消し飛び、犯人も数メートル吹き飛ばされる。


「貴様、魔法使いか。ならばっ」


 犯人は姿勢を低くして、志恩との距離を一気に詰めてナイフを横一線に切り裂くが、志恩はナイフの軌道を見切り寸前でかわす。相手は攻撃をかわされると、そのまま勢いで回転しながらの足払い。志恩は直ぐ様前方へのジャンプ、それと同時に足払いで姿勢を低くした犯人の頭部へ蹴りをお見舞いする。志恩の蹴りで犯人が転がり、倒れたところへ空かさず魔法を唱えた。


『スパイダーロープ』


 白い魔法の糸に絡まり犯人は動きを止めた。


「お見事です、志恩さん」


 三上巡査がそう言って、素早く友梨の元へと走り寄り保護した。


 ちょうどそのタイミングで、横のタンクの影から葛城達が現れ、

「何か大きな音がしたけど、どうしたの?」

「おっ犯人捕まえたんだな…に、してもこれは?」

 猛と静香は状況が分からず、志恩を質問責めにした。


「それは犯人が暴れだしたから、三上さんと協力して、警視庁の秘密兵器の鳥り餅爆弾で、犯人を確保したってことだよ。うん、うん」


「なに1人で納得してんのよ。それより友梨は?」

 静香は友梨を保護している三上の元へ駆け寄り、様子を見る。


「大丈夫。気を失ってるだけよ」


「良かった!でも、なんか寝息立てて、寝てるように見えるのは気のせいかしら」


「気のせい、気のせい」

 駆け寄った志恩が、苦笑いをしていた。




 後始末は刑事二人に任せ、志恩達は愛莉達と合流する。

 ちなみに、志恩は葛城に犯人の手と指をがんじがらめにして、猿轡と目隠しをするよう助言した。


 愛莉達は昼食をとる予定だった場所で、友梨と同じロッカーの美沙が友梨のサンドウィッチを持ってきており、ドリンクや他にも売店で買った食べ物等を並べて、四人の帰りを待っていた。


 四人の姿が見えると、静かに座っていた五人は一斉に立ち上がり志恩達の帰りを喜んだ。


「お帰り、怪我は無かった?友梨さんは大丈夫?」

 友梨は猛が背負っていて、まだ眠りに就いている。


「大丈夫。気を失った後、疲れて寝ちゃってるだけだから」

「それなら良かった」

「ちょっと猛、早く友梨ちゃん降ろしなさいよ!」

「分かってるよ、いや~役得♪役得♪」

「このスケベ!鼻の下伸びてるわよ」

「ズルいですね猛くん」

「顔がだらしないぞ猛」


 その後、友梨が起きると遅いランチ会が始まり、楽しい時間を過ごした。

「普通のサンドイッチなのに、なんでこんなに美味しいの?!」

「流石、料理研究家の娘。激うまだよー」

「私のせいで、迷惑掛けちゃって申し訳なかったんで、こんなことでも喜んで貰えたなら嬉しいです」

「友梨ちゃんは被害者なんだから、気にしなくていいのよ」

「そうそう、友梨ちゃんは気にしないで」

「まだ、時間あるんだし、食べ終わったらまた、プールで遊ぼう!」


「「さんせーい」」



 楽しいランチ時間が終わり、一休みした志恩達は、午後の時間をプールでまだまだ楽しむのだった。


 ゴムボートの急流下りで猛に友梨がしがみつき、鼻の下を伸ばしていたところに静香の肘鉄が炸裂しゴムボートから落ちたり、ウォータースライダーで美沙の水着のブラが外れ、それを見ていた志恩と貴司が愛莉にプールへ落とされたりと、その後のプールを楽しく過ごした。


 楽しい時が過ぎるのは早く、いつしか日も傾きかけ、周りには帰宅の為に出口へ向かう人々が徐々に増え始めていた。



「楽しかったね!」

「本当に、時間が過ぎるのは早いね」

「俺達も遅くならないように、そろそろ着替えに行こうか?」

「そうだね、じゃあ、出口の前で集合ね!」


 一同は帰り支度をする為、男女別れて更衣室へと入っていった。


 男子ロッカーでの会話。

「いや~昼間は焦ったけど、万事丸く治まってよかったよな」

「そうだね。事件の事は友梨さん心配するから、話さないようにしてたけど、あの刑事さん達は何者だったんでしょう?」

「それは、後であの二人と別れた後にでも、みんなに話すよ」

「おっけー。ん?あれ?ない!」

「どうした猛!ロッカー荒らしにでもあったか?」

「いや、そんな生易しい事ではない」

「どっどーしたんだ?」


「ぱっぱんつ忘れた!!」


「「・・・・・・」」


 猛以外、黙々と着替え出す。

「さっ、着替え終わったからみんな、さっさと行こう」

「おっけー」


「まっ待ってくれよ~」




 太陽が夕日と名前を変え始めた頃、プールの出口付近は遊び終わりの帰宅者で混雑していた。


 男子は着替えが早く、4人出口で女性陣を待っていた。


 猛「女って本当、おっせーよな」

 政夫「しょうがないですよ、今時の子は、化粧なんかもしますから」

 猛「おっ政夫は、女の肩持つんだな」

 政夫「そー言う訳じゃないですが、理解力があると言ってください」

 貴司「そうだな、猛も少しは女の子ってものを勉強した方がいいな」

 猛「そっかー?俺って、結構分かってると思うけどな」

 志恩「静香の前で今の台詞言ってごらん。回し蹴りが飛んでくるよ」

 貴司「はっはっは!間違いない」

 猛「おっ、噂をすれば、やっと来たぞ」



 愛莉達は手を振りながら歩いて来る。


 静香「お待たせ~」

 友梨「遅くなっちゃってすいませ~ん」

 静香「女の子ってのは、時間が掛かるもんなのよ!ねっ愛莉、あんたも何か言ってあげちゃいなさい」

 愛莉「うっうん。お待たせ、行こうか」

 静香「あれ、なっなんか拍子抜けだけど、どうしたの?愛莉元気ないじゃん」

 愛莉「そっそんなことないよ。さっ早くいこ」


 愛莉は、うつむいたまま、そそくさと志恩の後ろにピタリとくっついて歩き出した。


 志恩は、そんな愛莉を心配した。


「どうした?愛莉。何かあったか?」

「大変な事が起きたの。黙って家まで早く帰ろう」

「どうした?機嫌でも悪いのか?このあと、みんなでご飯食べて帰るんだろ」

「そっか!うん、うんとね」


 愛莉は志恩の腕を引っ張り耳元で呟く。

「忘れちゃったのっ」

「なんだ、プールに忘れ物か?」

「しーーーーーー違う!着替えのし、た、ぎ」

「なんだ、おっちょこちょいだな‥‥えぇえー!しっしたうぐぅぐぐ」

 志恩は口を塞がれた…

「ばかーー静かに」

「って、もしかして、今は?」

「そう、上はTシャツを2枚着てるから大丈夫だと思うけど、下は駄目だからね」

 駄目と言われても困るが、どこかで手に入れなくては…


 そんなやり取りを遠目で見ていた静香が、志恩と愛莉を指差し。

「そこ、兄妹でイチャつかない!!!」


 志恩と愛莉は口を揃えて。

「いや、そう言う訳では・・・」


 その後、コンビニもトイレも愛莉の後を必ず誰かが付いて回り、ミッションを果たせぬまま、食事の場所に着き、そのまま帰りの電車に運ばれるのだった。


 静香が志恩の背中に張り付く愛莉の側に寄り、心配そうに話し掛けた。

「ねぇ愛莉、プール後から志恩にベッタリだけど、何かあったの?」


「んーん、何にもないよ。ちょっと志恩に色々話があっただけ」


「それならいいんだけど。それより聞いてよ。猛のバカ、水着着てプールに来てて、替えのパンツ忘れたんだって。ズボンの下、今パンツ履いてないんだってーちょーうけるでしょー!も~さっきから、笑いが止まらなくて。ハハハ」


「あっあそう、ドジね。はっ、はっ、はっ」


「なんか、乗り悪いね、大丈夫?」


「う、うん。」


「ねぇーねぇー志恩。志恩は、知ってたんでしょ?」


「えっ聞いてなかった。何を?」


「だーかーらー、パンツ履いて無いこと」


「えっっっ!だっ誰から聞いたの?」


「みんな知ってるよ!さっきから、大笑い」


「笑ったら可哀想だろ!本人、それで困ってるんだから」


「どーしちゃったの志恩?そんなに猛の肩を持つって、珍しいね」


「えっ!猛?」


「そうだよ、さっきから言ってるじゃん」


「あーあーあー!そうだよねー、猛らしいドジだよね、そーだそーだ!猛だ猛!」


「なんか、変な二人~」


 電車はリズムに乗せて、みんなを家まで運んで走り続けた。

 

 ガタンゴトン ガタンゴトン





 地元の駅に着き、全員遊び疲れた顔で別れを告げると、足早に家路へと急ぐのだった。


 電車の中で刑事達の話については、校長室へ呼ばれて近所の事故を聞かれただけで、他には何も話してはいないから、近々会って詳しく聞いてくると、みんなに説明した。


 志恩と愛莉の二人は、遊び疲れクタクタに成りながら家に向かって歩いていた。


「お疲れ愛莉、もうコンビニ寄らなくていいの?」

「ここまで来たら、もう志恩しかいないんだから、心配ないよ」

「なにか、その言い方も返事に困るのだけれど」

「今日は色々な事があって、ハラハラもしたけど、楽しかったね」

「そうだな」

 和やかに暗い夜道を、二人はまったりと帰って行く。




「誰か~助けて~引ったくり~」


 突然の悲鳴に、志恩と愛莉は顔を見合せ気を引き締める。


 と、そこへ。


 ビーーーン、ビーーーン


 前方から、ライトを消した原動バイクが真っ直ぐ志恩達の方向へ走ってくるのがわかった。


 どう見ても、犯人だと分かる。


 魔法を使えば簡単だが、目の前には愛莉がいる。志恩がどうしたものかと悩んでいると、愛莉は近くに落ちていた木の棒を握りしめ、原チャリが横を走り抜けようとした瞬間!


「どぉーーおぉぉぉ」


 剣道の胴をフルスイングで、バイクの犯人目掛けて繰り出すのだった!


 その瞬間、犯人はバイクから切り放されて宙を舞う。犯人のバイクは無人のまま、前方へ走り倒れた。そして、犯人が盗んだバックは、愛莉のスカートの裾を引っ掛け、犯人と共に宙を舞った……


 志恩は、スローモーションの様に一部始終を見ていた。見えていた。見てしまった。見ていない振りをしてみた。

 沈黙のあと、口笛を吹いてみた。


「・・・・・」


 沈黙が通り過ぎ、口笛を吹いて誤魔化してみる。


 そこへ、タイミング良く?引ったくりを追い掛けてきたおばさんが現れ「あらあらあら、ありがとう。助かったわ。今、警察に電話したから、もうすぐ来るはずよ。何かお礼しなくちゃね、ありがとう」


 おばさんは息を切らせながら喜んでいる。


 愛莉は無表情でそのおばさんに話始めた。

「あのう、犯人縛り挙げて置きますので、私達は帰らせてもらってもいいですか?今日は予定があって、その上疲れていて、このあと警察に関わると時間がなくなってしまうので」


 愛莉の言葉におばさんは少し悩み顔をして「あら、それは残念ね。じゃあ警察にはおばさんが言っておくから、二人は行っちゃっていいわよ。連絡先だけ教えてくれるかしら、今度御礼のお茶菓子でもお渡しするわ」


「お気持ちだけで、大丈夫ですから。それじゃあ、私達は行きますね」


「お二人さんありがとね~」


 志恩と愛莉が歩き始めたその直後、遠くからサイレンの音が近づいて来るのが聞こえ、二人は足早にその場を離れて行った。



 シーーーーン

 シーーーーン

 シーーーーン

 ・・・・・


「ねぇ、見たでしょ?」


「えっ、何を?」


「見えたでしょ?」


「見たと言うか、見えたと言うか。そっそれに、ほら、いつも一緒にお風呂に入ろうとか言ってるじゃないか!お風呂で見たと思えば‥‥ねぇ?」


「バカーーーー!!!お風呂で見られるのと、外で偶然見られるのとじゃあ、訳が違うのよ訳が!!」


「違うって、別に違いはないだろ?」


「バカーーー!!乙女心がなんっっっにも分かってないんだから。この恥ずかしさの償いは、キッチリしてもらいますからね!ふんっ」


「いや、俺っていつの間に加害者になってるの?」



 このあと、家までの距離は志恩にとって、とてつもなく長く長い遠いい道のりであったとさ。




お読みくださって、ありがとうございます。

ご意見ご感想、ご指摘、助言など頂ければ嬉しいです。

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