勇者達[再開を誓って]第13話
ツベリラ パルテトにあるミスティア神のシスター
グレイブ ルイドールの冒険者ギルドの長
サラ ルイドール近郊のゴブリンの巣窟で 助けた少女
「うっ眩しい‥」
瞳を開けると、ベッドから見える天井、陽射しがカーテン越しに部屋を明るく照らしていた。
「確か私は‥うっ…」
記憶を思い返し、起き上がろうとしたとき、体から痛みが走る。
ツベリラは、バッと痛みを跳ね退け起き上がる。誰もいない部屋に1人ベッドで横になっていた。
自分の体を触るが、痛みこそあれ、怪我はしていない。ツベリラなら分かる、それが魔法で治療した後だということを…
コンコン
ガチャッ
ツベリラは、振り返り顔を少しほころばす。扉を開けて現れたのは、マリアンヌこと真里亜であったからだ。
「ツベリラさん、気が付きましたか?」
真里亜を見て、聞きたいこと、言いたいことが溢れ出すが、何から話していいか言葉に詰まってしまう。
そんなツベリラを見て真里亜は「焦らないで下さい。もう、全て終わりました。お食事の用意が出来ていますので、用意を済ませ皆さんで食事を取りながらお話ししましょう」
真里亜の言葉を聞くとツベリラが小さく呟く、
「みんなは無事なの?」
そんな言葉に、真里亜は優しく、
「はい。ですからお早く」
そう言って、部屋を後にした。
間を置いてからツベリラは、跳ね上がる様に起きると、多少痛みの残る体を無視して、着替えを手早く済ますせるのであった。
ザハマ村にある唯一の宿屋。その食堂には、今回の事件に関わった全員の姿があった。志恩、アサヒ、シェリー、真里亜、ミンツ、バゼル、ローゼン、モーリス、サイラス、ハービット、ザハマ村村長、そして、ツベリラが最後に姿を見せた。
村長が席を立ち、
「皆さん揃った様なので、食事を取りながらお話ししましょう」
そう言って、ツベリラを席へと誘うと村人に言って、食事の用意を始める。
「この度、皆さんには我々の村を救って頂き、誠に感謝の言葉しかございません」
そんな言葉から始まり、村長が語り始めた。
この村は以前、原因不明の病気が流行り、村人が次々昏睡状態となったことがあり、その時村を救ってくれたのが、例の教祖ムガマドだったそうだ。それ以来、ムガマドは使っていなかった寺院を自分達で改装し、怪しいムガマドの部下達とこの村で布教活動を行い、村人達はそれを受け入れたのだと言う。
村長の話の後、志恩は、村人達に運ばれて事の顛末を知らないサイラス達やミンツ達にあの後、どうなったかを話した。
サイラスやミンツ達が倒されたタイミングで、儀式の間を壊しすることに成功し地上へと出た志恩達は、悪魔が苦しみ弱る姿を見つけ、そのチャンスに残ったメンバーで悪魔と教祖達を一網打尽にした…と言う設定を話す。
教祖達は最後まで抵抗したので、仕方なく止めをさしたとも付け加え。
村人達も教祖達の正体を知り、今では後悔しているそうだ。
ミンツ達は、あそこまで強力だった上級悪魔を志恩達がすんなり倒してしまった事に納得していないようだったが、実際、敵がいなくなっている事に認めざるおえなかった。
サイラスは、自分の手で仇を討てなかった事に残念がってはいたが、仲間の無念を晴らせたことに感謝している。
その夜、辺境の村ではあったが、村人総出で盛大な宴を用意してくれ、志恩達に感謝の気持ちを伝えることとなった。
夜の酒盛りの席にて…
ミンツ、ツベリラ、真里亜、ローゼンの会話。
「マリアンヌ。あなたよく、地下で生け贄にされていた少女を助けられたわね」
「たったまたまですよ。昔、優秀な冒険者に同行したときに譲って貰った呪いを解くアイテムを持っていただけで‥」
「そんな大事なアイテムを使わせてしまって、マリアンヌさんは今回のクエストで損をしてしまうのではないですか?」
「いえいえ、そのアイテムが貴重だったとしても、人の命に代えられる物なんてありませんよ。報酬と少女の命は別ものですから」
「マリアンヌ、あなたは素晴らしいわ。帰ったら、ロレンツ司教に私から口添えしてあげるからね」
「はっはあ‥ありがとうございます」
ーーロレンツ司教とは、あまり深く顔を合わせたくないんですけどね…
シェリー、バゼル、モーリスの会話。
「シェリーさんは、お若いのに魔術など、色々詳しいですよね。呪術の部屋の事にも詳しかったし」
「えっ!たまたまですよ。丁度、調べていた事と重なっただけで‥」
「それに、闘い慣れもしてるようだなぁ。強敵やモンスターと遇っても、気後れせんしなぁ」
「そっそれは‥子供の頃から喧嘩や冒険者の真似事をよくしていたからですかねぇ…」
「シェリーさんは、どの辺りのレベルまで魔法を唱えられるのですか?」
「えっとぉ‥大した事ないわよ。それにあまり詮索するのは、野暮ってもんですよ」
「すっすいません」
「いえいえ… ふぅ~」
志恩、サイラス、ハービット、アサヒの会話。
「今回は、知らないところでシオンには色々世話になっちまったな。それにしても、どうしてシオンがこの村に居るんだ?」
「そっそれは‥えっと‥冒険者ギルドのギルド長グレイブに相談されて‥子供達の救出を密かに依頼されたんだよ。そうそう‥単独の方が動きを悟られないだろうって事で‥」
《なんか、無理くりだなぁ、シオン》
《うるさい、アサヒ。なんて言えばいいか思い付かなかったんだからしょうがないだろ》
「そうか、シオンは俺の知らないところで、グレイブさんと知り合いだったんだな。だったら、俺達が余計な事をしちまったかもな」
「そんなことないよ。子供達の居所は掴めてなかったんだから、救出してくれて助かったよ」
「それにしても、マーベラが一撃で殺され、モノリスの命懸けの抵抗力でも倒せなかったデーモンを、よく倒せたものだな。向こうの女性達は凄腕だったのかい?」
「いっいや‥それは‥俺達が戦った時には、デーモンは苦しみながら弱っていて、楽に倒せたんだ。きっと、地下に有った呪術と繋がっていて、それを破壊したから弱ったんじゃないかな…」
「そっかぁ、そんなものなのかな?まぁ、なにはともあれ、マーベラやモノリスの仇を討てたんだから良しとしとくか。それで、シオンはこれからどうするんだ?俺達は、子供達を連れて、ルイドールの町へ帰るつもりなんだけが」
「そうだね。俺も1度ルイドールの町へ行くよ。グレイブさんにも話しておかないといけないし」
「よし、じゃあ、明日にでも一緒にルイドールへ出発だ」
こうして、志恩達はお互いに自己紹介などしながら、村人達とも交流を深め、夜が更けていくのだった。
次の日は、朝日が登り始めた頃、サイラス達一行とミンツ達一行は、それぞれ馬車の準備を整え出発に備えていた。
昨晩、志恩とシェリー、真里亜は、今後の打ち合わせを密かに行い、パルテトの街で落ち合う手筈を整えていた。
「冒険者をしていれば、いずれどこかで出会うこともあると思います。その時は、宜しくお願いします」
「そうですね、お互いにそれまで生き延びていましょう」
そう言って、お互いのリーダーであるミンツとサイラスは、固い握手を交わし、馬車へ乗り込むのであった。
逆方向へ走り去る2台の馬車。その後部座席では3人の視線が「また会う想い」を交わしながら、離れて行くのだった…
志恩を含むサイラス達は、志恩とアサヒの影での活躍があり、何事もなく無事にルイドールの町へと辿り着く。そして、そのまま冒険者ギルドへと向かいギルド長グレイブの元へと赴くのであった。
「シオンよ、流石ヤジルが薦めただけあって素晴らしい働きだったな。それにサイラスとハービットの2人も、仲間の死を乗り越えよくぞ期待に応えてくれたな、今回の依頼を受けたギルドの長として感謝している」
事の顛末をギルドへと報告した志恩とサイラス達は、その後ギルド長の部屋へと通され、グレイブから感謝の言葉を貰うのであった。
そして、退出しようとしたとき、グレイブが志恩に声を掛ける。
「そうだ、シオンはあとどれ程この町に滞在するつもりでいるのだ?」
「色々とお世話になりましたが、仲間の宛がパルテトの街にありましたので、すぐにでも向かうつもりです」
グレイブは、少し残念そうな顔をし、サイラスとハービットはちょっと驚いた顔をする。
「そうか、それは残念だが、目的がある者を引き留める訳にはゆくまい。こちらでも、シオンの仲間の事は頭に留め情報を仕入れておくようにしよう」
「ありがとうございます」
志恩は軽く会釈をしてから、部屋を後にした。
志恩とサイラス達は、ギルドからの報酬を受け取り、救出した子供達をギルドから連絡してもらい、親元へ帰して貰った…しかし、サラだけは身元が分からず、困っていた。
「シオンは、さっきの話だとすぐにでもパルテトの街へ向かうのかい?」
サイラスの言葉に少し困り顔で志恩は答える。
「そうしたいんだけど、こんままサラをほったらかしには出来ないし‥」
するとサイラスは、志恩の肩に手を置き、
「それなら任せろ。シオンには世話になったし、サラの事は俺とハービットに任せてくれ」
シェリーや真里亜との約束の日時もあり、志恩はサイラスの言葉に甘える事にする。
「申し訳ないけど、お願いするよ。ありがとう」
するとハービットが志恩の背中を叩き、
「なーに、他人行儀な事言うんだよっ!私らもう、仲間だろ」
志恩は「そうだな」と笑顔で返した‥と、
その時…
志恩の左手を弱々しく引っ張る者が居た。
志恩は、振り返るとその目線の先には何も居らず、ふっと手に目線を下ろすとそこには可愛らしい少女、サラの姿があった。
「どうしたんだい?」志恩が優しく声を掛けると、サラは志恩の目を真っ直ぐと見詰め、小さな声で呟くが聞き取れず、志恩は「なんだい?」と腰を落として声を掛けその言葉を聞こうとするとサラは、何かを握り締めた左こぶしを志恩の目の前で開いて見せる。開いたサラの手のひらの上には指輪が1つ乗っており「これは?」志恩がサラに質問すると、サラは大きく1度頷く。
志恩は、サラの手から指輪を受け取り眺める。
その指輪は、子供の指には大き過ぎる物で、台座には宝石ではなく紋章の様なものが刻まれており、志恩は何気なく見た次の瞬間、目を大きく見開き動きが止まってしまった。
「こっこれはっ!」
志恩は、サラに振り返り見詰める。すると、サラは静かに頷くのだった。
そう、その指輪は、この大陸1の大国ファーラグーン国王家の者のみ所持を許される指輪である。王家と関わりのある志恩だからこそ、その指輪が本物であり、その事実を知っているのだ。
経緯は分からないが、サラが王家の者で行方不明となっているのであれば、大騒ぎとなっているだろう。
志恩は、サラを見詰めながら暫く困惑していると、その様子に気付いたサイラスが志恩に声を掛けた。
「どうしたんだシオン。その指輪が何かあったか?」
志恩の見詰める指輪をサイラスは、不思議そうに眺める。
「いや、実は‥サラの身元が分かったんだ」
「えっ、それは良かったじゃないか」
「そうなんだけど…」
「どうした?この子は誰なんだい?」
「多分、ファーラグーン国の王家と縁のある子だと思うんだ」
「ファ、ファーラグーン国?それって、とんでもない事じゃないのか?」
「俺にも事情は分からないが、国の人は心配していると思う」
「じゃあ、早く連れて行ってあげないとな」
「そうなんだが…パルテトの街にも寄らなくてはならなくて‥」
すると、サイラスが志恩の背中を叩いて、
「よしっ、こっちは俺らが引き受けた。シオンは用事を済ませて、後で合流しようぜ」
「いやっしかし‥」
「心配すんなって、それに前回の報酬がたんまりあるから、何人か冒険者を雇って行くから心配ないさ。馬車も有る訳だしな」
暫く志恩は考え込み黙っていると、サイラスの後ろからハービットが現れ、
「なんだいシオン、私達が信用出来ないって悩んでいるのか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど、何でも君達に押し付けて、俺だけ自分の用事をしに行くのが申し訳なくってさ」
「大丈夫だよ。それに、金持ちの子供を届けに行くんだ。たんまり謝礼をせしめてやるさ」
ハービットの無邪気な顔を志恩は嬉しく見詰め、
「ありがとう、頼むよ」
そう言って、サイラス、ハービットの手を強く握り締めるのだった。
志恩は、サラに話をし、サイラスとハービットに付いていく様に言い聞かせた。そして、1枚の手紙をしたため、ハービットに渡す。
「ファーラグーンには知り合いがいるので、もし何かあったらその人を訪ね、これを渡してみてくれ」と言って…
志恩とサイラス達は、その日の内に用意を済ませ新たな旅へと準備を進めた。
そして次の日、お互いの旅の健闘と再開を約束し、2つの道へと進んで行った。
この時、この先の大きな苦難を志恩は知るよしもなかった…
次回、大きな流れ




