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団らんな午後の時間

会話ばかりですが、ちょっと休憩気分でどうぞ。


2018.5.10 誤字脱字修正 表現、文脈修正

 時計の針も正午を周り、暑さもピークを向かえた午後。少しお腹の虫が寂しがり始めた頃、志恩ら7人は学校の校門の前に居た。


 7人は夏の私服で集まっていた。夏休みは補習や学校関連の行事以外は、私服でも許可されている。


「部活、お疲れ~」

「お疲れ~」

「お疲れ様です」

「お腹空いたよ~」

「もぉ~食い意地ばっかり!」

「しゃーねーじゃん、育ち盛りが運動しまくってきたんだからさ」

「あんたは、胃袋だけ育ち盛りなんじゃないの?」

「うるへぇー」


 いつもの猛と静香のやり取りを笑いながら、7人は駅前へと移動した。


「でも愛莉、足、本当に大丈夫なの?」

 静香が先程の怪我を気にして、愛莉の側に近付く。


「うんそれがね、志恩に保健室連れてってもらったら、着いた時には痛みも引いてて…先生にも診てもらったんだけど腫れも引いてたんだ」


 それを聞いて、猛はヒッヒッヒと笑いながら「おっ兄妹愛の力だね」と、志恩に詰め寄る。

 

「愛の力って、なんだよ」

 志恩は、猛の脇腹を肘で押し返した。


「おっ妹を家族として愛してないのかね?」

 猛は再度、志恩に下から覗くように近付いた。


「そりゃー愛してるけど、猛が言うと何か意味合いが変なんだよ」

 志恩は、顔を背け、猛から逃げた。


 そんなやり取りを柚木は羨ましそうに聞き「いいなぁ愛莉さんは、大切に思ってくれるお兄さんがいて」と呟く。


 そんな呟きを耳にして、貴司は柚木の肩を軽く叩き「柚木のことは、みんな大切な妹だと思ってるよ」と優しく言う。


 しかし、柚木はちょっと寂しそうに、

「みんなとかじゃなくて、いつもそばに居てくれる様な人がね」


「それって、兄貴じゃなくて、恋人じゃない?」

「恋人が欲しいの?」

 無神経なのか、素直なのか、猛と静香は柚木に迫った。


「そっそうじゃないんだけど。えっと、えっと」

 詰め寄る二人に、柚木はあたふたしてしまう。


「要するに、志恩くんと愛莉さんの様な仲睦まじい相手が欲しいと、そう言うことだね」と政夫が猛と静香の間に割って入った。


 志恩は呆れ顔でみんなを見回し、言葉を掛ける。

「なんか、話の方向が変な方に向かってるぞ。少し遅れてるんだか、みんな急ごうぜ」


「「「はーーい」」」


 ーーいつからこんな、からかわれる様になったんだか。

 志恩は楽しげに遠い過去を思い出していたのだった。




 一行が到着した駅はJRと地下鉄の乗り入れがある駅で、駅前には大きなデパートなどもあり、夏休みに入っているためか昼頃は子供連れの親子なども多く見かけられる。


 待ち合わせ場所へ向かうと、既に二人の女の子が待っていた。


「お待たせ~」

「いえいえ、私達も今来たところです」

「ごめんな~みんな足がおっせーからよ」

「その前にあんたの行動が遅いのよ」

「ふふふ、みなさん仲良しで羨ましいですね」

「そっかー喧嘩ばっかりだぞ」

「それは君達だけだろ」

「かぁー!貴司もキツイこと言うね~」

「はいはい、こんなところで漫才やってないで、ゆっくり出来るところに早く行こ。暑くて溶けちゃうよ~」


「「「さんせー」」」


 一行は最近の出来事などを話ながら、駅の側にあるファミレスへと入っていった。


「もっと、ちゃんとしたお店でも良かったんですよ」

「大丈夫、大丈夫。こいつら、腹に入れば何でも美味しいから」

「こらこら、美食家の俺様を嘗めるなよ!」

「あんたこの間、料理食べ終わってから、今のは何料理ですかとか言ってたでしょー」

「過去は振り返らない男なんだよ、記憶にないな」

「味も記憶に残らないんでしょ!もぉ~」


 いつも通りの騒がしい一悶着の後、料理を注文し食べ終え、今はフリードリンクを各々飲んでいた。



「改めて、自己紹介させて下さい」

「オッケー!私達もするね」

「はい、ありがとうございます」

「もう友達なんだから、堅苦しいのはなしでいこうよ~」

「わかりました。えっと、まずは私から。一条美沙、世田谷区の女子高に通う皆さんと同じ高校1年生です。母親が料理研究家なんで、私も一緒にやってて、その影響か料理は好きです」

「マジマジ!母親が料理家なんて、凄く料理上手そうじゃん!食べてぇ~」

「ちょっと~まだ途中でしょっ、あんたは少し黙ってなさい!」

「へぇーい」

「ごめんね、ささ続きを」

「私はそんなところです。あとは気になる事があったら、聞いてください」

「オッケー!で、次は友梨ちゃん」

「はっはい、荻野友梨です。学校もクラスも、美沙と同じです。特にこれって趣味はないです」

「友梨って、実は読モやってるんですよ!!」

「ちょっちょっちょっとー美沙、恥ずかしいから」

「いーじゃん!自慢出来る事だし。でも、学校ではバレるとあまり評価によくないから、内緒でね」

「すげーじゃん!芸能人ってことじゃないの?サインとか貰っといた方がいいかな」

「芸能人って、そんなんじゃ無いよ~。ただ私服姿で何回か載っただけだし、普通の女子高生ですよ」

「雑誌に載るって事でも凄いよ」


「「うんうん」」


 そんな他愛もない話をしながら、志恩達も軽い自己紹介をしていった。


 みんなが座談をしていると、友梨が化粧室へと席を立つ。志恩はそれを見送ったあと、タイミングを見計らい話を遮った。

「美沙さん、話の途中ちょっといいかな?」


「何だよ志恩、今いいところだったのに」

 猛が不満を言うが、静香が直ぐに抑えた。


「どうしたんですか?」

 ちょっと不安顔で美沙が志恩の顔を見る。


「えっと、聞きにくいんだけど、あれから友梨の様子はどうだった?何か落ち込んだり悩んだりしてないかなって心配で。勿論、美沙のことも心配だけど、それ以上に大丈夫だったかなとね」


 志恩は自分の魔法による記憶コントロールのその後を気にしていた。


「うん、私は逃げ出したから大丈夫だったんだけど。友梨は変な薬も飲まされて奴等に酷いことされたから、私も心配だったの。だけど、あの時のこと友梨があんまり覚えてないって言うの。私はたぶん、辛すぎて軽い記憶喪失かなって思ってる。だから、あの時のことは彼女とはその後殆んど話してないの。それにあの後、警察から心配だからって病院の検査させられたんだけど、私は勿論、友梨にも一切薬物とかの反応がなかったのよ」

 美沙は、不思議な体験をした様に話した。


「それはよかったじゃん。実は何もされて無かったんじゃない?」

 猛が顔を突き出し話す。


「んぅーん、確かに奴等が友梨に何か飲ませて、友梨が虚ろになっていくのは、私見てたんだよね」

 美沙の顔が更に不思議な気持ちを現す。


「不思議だね」

 愛莉も一緒に悩み顔になる。


 それを見ていた志恩が、少し大きな声で、

「あーーーでも、何もなかったなら、それでいいじゃん。良かった良かった」


「良くはないでしょ!」

 テーブルを軽く叩き、愛莉が声を荒げる。


「うっ、ごめん。良くはないけどトラウマになってるとか体に何かあったとかじゃないから、それだけは良かったね」

 志恩は謝り、その場をつくろった。


「そうですね、友梨も私も普通の生活が出来ているので、良かったです」

 美沙も少し気持ちを落ち着け答えた。


「うんうん」


「あっ友梨が戻ってきた。じゃあ、この話はここまでで」


「「りょーかい」」


「ただいま~みんな何の話してたの?」

 友梨は、みんなの顔を見回し、キョロキョロする。

 

「さっきと変わらないよ、身の回りの話」

 志恩が、優しく答えた。

 すると、美沙が軽く手を叩き、友梨に話す。

「あっそうそう、友梨、みんなに相談してみたら?」


「えっ何を?」

 友梨は美沙を見て悩み顔をする。


「ストーカーの話」

 美沙は友梨の顔をじっと見詰めて言った。


「「「何々?」」」

 全員が前のめりになった。 


「そんな大袈裟にする話じゃないんですけど、最近、ブログとかに変な書き込みや、いつも誰かにつけ回されてる気がしてて」

「書き込みって言うと?」

「いつも側に居るからとか、今度、一緒にデートするねとか。たまにそう言う書き込みは有ったんですが、同じアカウントから頻繁にってのは無くて、ちょっと怖いんです」

「そんな事が。力になれそうなことは、みんな協力するからね」

「そうそう、何でも言ってくれ」


「ありがとうございます」

 友梨はみんなに笑顔で応えた。



 静香は両手をテーブルに着いて前のめりに立ち上がる。

「そうだ!気分も落ちてるみたいだし、夏なんだからプールでも行かない?来週みんなで行く予定してて、今日このあと水着を選びに行くんだ」


 美沙と友梨は顔を見合せ。

「えっ、嬉しいですけど、誘ってもらっちゃっていいの?」


 愛莉が手を叩いて喜ぶ。

「勿論、美人が二人も増えるんだもん、みんな大喜びだよね」


 猛は立ち上がって「おおぉよ、楽しみが増えたぜ」


 柚木は笑顔で「多い方が楽しいよね」


 志恩は笑顔で答える「そうだな」すると、それを横目で愛莉が見ており「志恩も綺麗な子が増えて嬉しいの?」と、脇腹をつつく。


 志恩は目を泳がせながら「べっ別に綺麗な子とかじゃなくて、仲間が増えるのは嬉しいじゃん」と言うので、愛莉は下から志恩の顔を覗き込み「へぇ~~~~えぇ」と、目を細めた。



「じゃあ、二人も一緒に水着買いに行こうよ」


「「はい」」


 志恩達は、みんな連れ立って、近くのデパートへと向かって行った。


 男性陣と女性陣は別々に水着を選び、お披露目はプールの日までのお楽しみとなった。


 皆が、水着を選び終わった頃には日も沈みかけ、会社帰りのサラリーマンやOL達が駅の周辺に増え初めていた。


 美沙と友梨を改札まで見送った後、7人はそれぞれ家へと帰って行くのだった。





 家へと帰った志恩と愛莉は、夕食の用意を済ませ、二人で夕食を食べていた。


「今日の二人、可愛いかったね」

「そうだね、それよりストーカーが居るかもってのが心配だね」

「確かにね、何も起きなければいいけどね」

「そうだな」



 暫く、何の会話もなくご飯を食べていると、愛莉が箸を止め、志恩を見詰める。


「ねぇ~ねぇ~」


「ん?」

「水着、気にならない?見たくない?」

「別に。プールのとき、みんな水着なんだし」

「ちょっと冷めてな~い?健全な高校生なら、女子の水着は気になるものでしょ」

「そっそうかな?」

「そうなの。それに私が選んだ水着は、すっっっっごく、可愛いんだから」

「へっ、へぇ~」

「どう?気になってきた?」

「そっそうだね、プールが楽しみだよ」

「もぉ~!そうじゃないでしょ。一緒に住んでるんだから、ちょっとでも先に見てみたいなぁ~とか思うでしょ?」

「そっか、ここに水着持ってきて見せてくれるのか?」

「だーかーらー!なんで、なんで。水着だけ見せてどぉーすんのよっ」

「難しいな」

「可愛い妹の水着姿を見てみたいでしょ?」

「あっああぁ、…見てみたいなぁ」

「何、その素っ気ない返事、嫌ならもぉ見せません!ふんっ」

「いやぁ~愛莉の水着姿可愛いんだろうなぁ~。今年はどんな水着を選んだのか気になるなぁ~誰よりも先に見てみたいなぁ~」

「そお?そんなに見たい?」

「うんうん、そんなに見たい」

「そこまで言うなら、後で見せてあげるね」

「あっありがとう」



 やれやれ、あの後散々水着ショーを見せられたが、しかしあの水着は少し大胆じゃないか!?布の量が少ない気がするぞ!嬉しいがけしからん。




 さて、明日から少し事故の事を調べてみようかな…

 

 志恩の長い1日が過ぎていった。



次回、プール前に何か挟むか思案中です。


読んでくださった方、ありがとうございます

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