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勇者達[シェリーの想い]7第話

ちょっと長めになってます。話は完結してます。

 真里亜達一行は順調に旅を進め、パルテトの街を出発してから4日目、目的地へ向かう途中で唯一の補給場所であるザクトスの村へと到着した。


 ザクトスの村は、主に漁村として生計を立てており、たまに通る旅人を相手に宿場としての役割も担っていた。

 村の人口は200人程と、村としては中規模に栄えている。




「やっとゆっくり休める。早く体を綺麗な水で洗いたいわ」

 馬車の狭い中で、手足を伸ばしながらシェリーが村への期待を口にする。


「シェリーさん、村へ寄るのは今晩だけで、明日の朝には出発するんですから、そんなにのんびり出来ませんよ」

 ツベリラがはしゃぐシェリーに釘を刺すと、真里亜が口を挟んだ。

「でも最近、私も体が(なま)ってるせいか辛くて。ベッドが恋しいわ。ツベリラさんだってそうでしょ?」


 ツベリラは、ちょっと頬を紅くして「そりぁ、私だって、体を綺麗にしてベッドで静かに眠りたいわよ。でも、今は大切な御勤めの最中、思っても口にしてはならないのよ」



 女性陣が村への期待を高めていると、馬車は村の入口へと到着する。村の入口は開放されており、馬車はそのまま村の中へ進むことが出来た。


「何か静かね?」シェリーは不思議そうに尋ね「確かに、昔来たことがあるけど、こんな雰囲気の場所じゃなかったなぁ」と隣に座るミンツが答えた。


 一行が村を訪れたのは、夕方前の時間帯であり、どんな町や村でも賑わっていておかしくない時間である。しかし人出は(まば)らで、道行く人は、馬車を遠巻きに見ている気がした。


「漁村で朝が早いから、夕方はもう寝る準備してて、静かなんじゃない?」ツベリラが何気なく言うと「それでも、この時間は早すぎですよ。今から買い出しとかで賑わってくる時間帯なんじゃないかしら」と真里亜が応えた。


 馬車は村の中央に位置する一番大きな宿屋へと到着し、一行を降ろす。

「まあ何はともあれ、ここで朝まで体を休め、明日からの旅に備えましょう」

 ツベリラの言葉に全員が頷き、宿へと入っていった。


 宿屋は、この村では数少ない2階建ての建物だ。客室が6部屋と然程(さほど)大きくはない。馬車を建物の裏手に止め、7人は男と女で二部屋に別れ、体を休める。男女供に4人部屋で男性部屋は、1つ補助ベッドを用意してもらった。


「夕飯迄は時間あるから、ちょっとマリア‥ンヌと村の中を見てくるね」シェリーは同部屋のツベリラにそう言うと、ツベリラは「あ、そう。私は明日からの仕度をしなくちゃいけないから、気を付けていって来てね。でも、遠くまで行くなら、あなた達だけじゃ危ないから、男の人も連れて行くのよ」


 シェリーは「ラジャー」と片手を真っ直ぐ頭に沿わせ、ツベリラに敬礼をする。ツベリラは「ラジャー?‥」とシェリーの行動と言葉に首を傾げた。






「またカモが着ましたぜ、親分」

「どんな奴らだ?」

「冒険者7人で、その内3人は極上の女です。持っている武器もたいしたこと無さそうでしたし、女を先に捕まえられれば、どうにかなりやす。馬車から見て、金目の物は持ってそうでした」

「そうか、ならば俺は慎重な男だからな。その女を人質にする作戦でいけ」

「へい、分かりました」






 シェリーと真里亜は、部屋を出て宿屋の1階へと降り、受付に居た女将と思われる女性に話し掛ける。

「あのぉ、少しお伺いしたいのですが‥」


 すると、受付の女性はビクッと反応し「なっなんですか」と上擦った声で答える。


「いえね、外があまりにも静かだったんで、この村で何かあったのかな?と思いまして」

 シェリーの質問に女性は視線をキョロキョロとしながら、

「な、何もないですよ。怪しいところなんて、何も。何も怯えてなんてませんから」

 そう言って、受付の裏へと引っ込んでしまった。


 シェリーと真里亜は、お互いの目を合わせ、あらあらと言った空気を醸し出すのだった。そして二人は宿の外へ出ると、辺りの探索に取り掛かる。


 シェリー達が泊まる宿屋の向かいの民家。その2階窓の暗がりから、シェリーと真里亜の二人が、宿屋を後にするのを見届ける2つの瞳が浮かび上がり、消えた…。


 シェリーと真里亜は、近くに居る村人に話し掛けるが、誰もまともに取り合っては貰えず、直ぐに立ち去られてしまう。そのうち聞き込みを諦め、辺りの捜索に切り替え、村の裏道へと差し掛かる。その時、前方から如何にも、と言う人相の悪そうな男が3人現れた。


「こんなところを、女の子だけで彷徨(うろつ)くのは危ないぜ。俺らみたいな、狼が出るからよぉ」

 先頭の男がそう言いながら、腰から剣を抜いた。


 シェリーは一瞬、口元の端が上がってしまい、すぐに口元を両手で抑え「怖~い」と声に出し後ろを振り返る。するといつの間にか背後にも3人の男達が現れていた。


 真里亜が1歩前に出ると「あなた達は追い剥ぎ?それとも強姦?」と強い口調で言う。すると男は「おいおい、こちらのお嬢さんは威勢がいいじゃねぇか。だが、抵抗しようなんて思うんじゃねぇぞ、傷物にしたくないからな。ここでお前達をどうこうしようとはしねぇからよ。先ずは、親分の所へ連れていって、人質になってもらうからよ」


 相手の台詞をそこまで聞くと、シェリーは隣で今にも相手を殴り倒しそうな真里亜の手を掴む。

「駄目よ逆らっちゃ。この人達には敵わないわー」

「‥‥」《ちょっと棒読みでしょ!》


「よしよし、そっちの姉ちゃんは状況が呑み込めている様で、聞き分けがいいな。威勢のいい姉ちゃんはどうなんだ?大人しくするのか?」


 真里亜はシェリーの意図を察し、握った(こぶし)を開いた。


「分かったわよ」


「よしっ、手を縛って連れてけ」










「遅いわねぇ、まだ戻らないのかしら」

 ツベリラは明日の準備を済ませ、ベッドの上で退屈していた。


 コン コン


「ノックなんてしないで、普通に入って来なさいよ。鍵なんて掛けてないんだから」


 ガチャ


 ツベリラが扉を開けると、そこに立って居たのは隣の部屋のミンツであった。


「そろそろ食事にしようかと思いまして、お迎えに来ました。この宿の1階で食事が出来る様なので、そちらでいいですよね?」


 ツベリラはミンツの顔を見てから、困惑の表情をするのでミンツは不思議そうに「どうかしたんですか?」と小さな声で尋ねる。するとツベリラから聞き返された。


「アリアンヌとシェリーさんが二人で辺りを見回りに出たのですが、そちらから誰も連れ添ってはいませんか?」


 ミンツは少し驚き「いいえ、こっちには来なかったので、誰も出てませんよ。みんな部屋に居ます」と説明する。それを聞き「まぁ、時期戻るでしょう。私も用意しますので、1階の食堂で、皆で待ちましょう」


「そうですね。では後程」

 ツベリラの発言にミンツも賛同し、部屋へと戻って行った。



 宿屋の1階は、その大部分が食事処となっており、四角いテーブルと丸いテーブルが6個置かれていた。ツベリラが用意を済ませ下へ降りた時、ミンツ達4人は、既に食堂のテーブルに着いていた。


「お待たせしました」

「いえいえ、僕達も来たばかりですから」


 ツベリラが席に着くと、ローゼンが声を低くして全員に声を掛ける。

「みんな、静かに聞いてくれ。何か外の気配がおかしい。それに宿の様子も先程からおかしいんだ」

 そう言われ、各々、辺りを目だけで探ると、確かに。夕食時だと言うのに、周りには他に客もおらず更には従業員の姿もない。一同の緊張が高まってきたその時…


 バンッ


 入口の扉を蹴り開け5人の人相の悪い武装した男達が入ってくると、武器を構え威嚇してくる。

 ミンツ達パーティーは、素早く立ち上がり、持ってきていた武器を各々構えた。


「貴様ら、大人しく捕まれば、痛い思いをしなくてすむぞ。さあ、武器を捨てて投降しろ」

 乱入してきた先頭に立つ男が叫ぶ。


「バカを言うな。お前らごとき、返り討ちにしてやる」

 ミンツは剣を突き付け、応えた。


 男達5人は、一斉に斬りかかって来るが、ミンツ達はショートソードやショートアックス、メイスで切り結び、一方的に相手に傷を負わせ、モーリスは魔法の矢で相手に大怪我を負わせた。


「くそっ、一旦表に出るぞ」


 乱入者達は一斉に表へ駆け出し、ミンツ達も素早く後を追う。そして表へ出たミンツ達は、足を止める。


 宿屋の外には、先程の男達も含む15人程の男達が武器を構えて囲んでおり、その他、民家の屋根や2階の窓からも弓を構えた者達が5人程こちらを狙っていた。

 ミンツ達は、モーリスを中心に円形陣で構えるが、防具もなく、予備の武器で出てきている。その上、多勢に無勢。正面からまともに戦えば、負ける気はしないが、この状況では無傷とはいかない。ミンツは、悩んでいた。


 その時、周りの男達とはひとランク上の武器と分かる剣を持った男が前に出ると、ミンツに叫んだ。


「お前らの仲間二人の女は、こちらで預かっている。無傷で返して欲しくば、大人しく武器を捨てろ」


 その台詞を聞き、ミンツは奥歯を噛み締める。そして、悔しげな表情でツベリラを振り返ると、ツベリラは辛そうな顔をするが、ふっと力を抜きミンツに黙って頷き、持っていたメイスを放す。


 メイスが地面の土の上に落ちると、周りで剣や斧も静かな音を立てて地面に落ちていった‥









 数時間前…



「ほらっさっさと付いて来い」


 手を前で縛られ2人並んで連行されるシェリーと真里亜。2人は手に何も持たず、上着は麻のシャツを着ており、シェリーは短目のタイトスカート、真里亜は足先の見えるキュロットスカートを履いていた。


 2人の後ろを歩く男は、シェリーの見え隠れする太股を見ながら生唾を何回も飲んでいた。

「なぁ、兄貴。この女、味見したら駄目かな。俺、もう我慢出来ねえぜぇ」

「バカ言うな、許可なくそんなことしてみろ。親分に殺されちまうぞ」

 そんな会話をしながら進み行く先には、村外れの大きな屋敷が見えて来るのだった。


「あれが親玉の居る場所って訳ね」


 見えてきた屋敷は、暗く不気味にその姿を現し、近付く者を呑み込んでいくようだ。そして、シェリーと真里亜は男達に引かれながら、屋敷の中へと消えて行く。


 ギギギ、古く重い扉。そんな扉をくぐり、入った屋敷の中は少し古びており、(ほこり)やクモの巣などがあちこちに見られた。屋敷は2階建てで外から観たときは、中心の大扉から左右対象に横に広がり、1階部分と2階部分、左右も別々に5個づつの窓があり、その部屋数の多さを物語っていた。


 エントランスは、前方に大きな階段があり、壁際で左右の2階へと通じている。

 シェリーと真里亜の2人は、階段を上がり2階の一室へと連れて行かれる。そこは教室程の広い部屋で、壁には本棚等があり昔は書斎などで使われていたようである。そして窓際の中心に置かれた机に、1人の男が座って居た。


「親分、例の女を連れて来ました」


 机の椅子に深く腰掛ける男が2人を睨む。頭は剃っており、色黒の肌、30代半ば程と見えるが筋肉の張りや体の大きさから、更に若くは見える。


「俺がここを占めている『ガザン』だ。お前達は人質として、暫くここに居てもらう。下手な真似さえしなければ命までは取りゃしねぇからよ」


 ガザンはそう言うと、シェリーと真里亜を下から上へと嘗めるように見て口元を緩ませる。


 その時、シェリーが口を開く。

「あなた達の目的は何?この村の人に何をしたの」


 するとガザンは、ニヤリと笑い「俺らは別に村人を食いもんにしてる訳じゃねぇ。ここを通る旅の奴から、ガッポリ通行料を頂いているだけだからな」


 シェリーは怪訝(けげん)な顔をし、

「村人もグルって事?」ポツリと言う。


「いや、村人は関係ねぇよ。仲間は俺らだけだ。どうだ二人供、俺らの仲間になって悠々暮らしてみねえか?美人さんの二人なら、歓迎するぜ」


 真里亜は嫌そうな顔をするが、シェリーは顔色を変えず「そうね、それも良いかもね。ただ、こんなことをしていたら、その内、村人が逆らったり、近くの街の役人に助けを求めたりして、不味い事になるんじゃないの?」


 するとガザンは「ガハハ」と笑い「抜かりはねぇよ。村の奴等は、逆らえない様に人質を取ってあるからな」と胸を張って自慢した。


 コンコン


 その時、扉をノックして入ってきた一味の男が、ガザンの元へと歩み寄り、口早に報告をする。


「準備が整いました」

「よし、すぐに向かえ」

「わかりやした」


 報告に来た男は、(きびす)を返して出ていく。ガザンは、男が出ていくと、イヤらしい笑みを浮かべながらシェリーに話し掛ける。

「お前の仲間を今から縛り上げに行ったぞ。こちらには、お前ら二人が人質で居る上に、俺らの殆どの仲間が向かった。どうあがいてもお仕舞いだ。どうだ、俺らの仲間に寝返る気になったか?」


 シェリーは「ふぅー」と溜め息を吐くと「分かったわ。その前に1つだけ聞かせて、村人の人質って、この館に監禁してるの?」そう言って、胸元をアピールするように、前屈みになる。


 ガザンは、椅子から腰を少し浮かせ、前のめりになりながら「そうだ。ここには地下室が在って、便利に使わせて貰っている。人質は身近に置いておくのが安心だからな」


 そこまで聞くと、シェリーから笑顔が消える。

 そして、口元が静かに動くとシェリーと真里亜を拘束していたロープが床に落ち、それを見たガザンや周りの男達が目を丸くした。


「マリア、聴きたい事は聞けたわ。殺るわよ」

「もういいのね」


 真里亜は、そう言うとその場から姿が掻き消え、次に見えた時には、男の1人に肘鉄をお見舞し、男が腹を抑えて悶絶しているところだった。


 男達は、一瞬、何が起きたか理解出来ずにもたつく。シェリーはそんなもたつく敵2人へ『サンダーボルト』を唱え、黒焦げに感電させ倒した。


 残った3人の子分達は、一斉に剣を抜くと、真里亜に斬りかかる。しかし、真里亜の上段回し蹴りが、襲い来る剣の側面を弾き、後方へと退(しりぞ)けた。


 その間に、ガザンは後ろに置いてあった斧と盾を拾い上げ、シェリーに対峙する。シェリーは透かさず、先程と同じ『サンダーボルト』をガザンにお見舞いしたが、ガザンの構える盾によってシェリーの魔法が弾かれてしまった。


「ガハハハハ。まさか魔法使いだったとはな。しかし、相手が悪かったな。俺の持つこの盾は、昔倒した勇者から奪い取った《水竜の盾》。どんな魔法だろうが無効化してしまうのさ。これで貴様に勝ち目は無くなったぞ」


 それを聞き、シェリーは少し黙ってしまい、それを見たガザンは嬉しそうに笑う。

 すると、シェリーは小さな声で呟く様にガザンに話し掛ける。

「その盾の持ち主を、殺したと言うのか?」


 ガザンはシェリーの言葉が聞き取れなかった様で、嬉しそうに怒鳴る。

「ああ?ブツブツ何か言ったか?泣き言でも言うなら、もっと大きな声で言うんだな」


 シェリーは大きく息を吸い込むと、怒鳴る様な大きな声で、先程と同じ言葉を口にした。

「貴様はその盾の持ち主を、殺したと言うのか!」


 ガザンは、シェリーの迫力に一瞬たじろいだが、すぐに持ち直し、鼻で笑う。

「はっ。そりゃあ当然だろう。なかなか手強い相手だったが、俺様の知恵と実力にかかれば、大したことはなかったぜ」


 シェリーは、落ち着きを取り戻し、冷めた表情で淡々と喋る。

「そうね、大体呑み込めたわ。彼がそう簡単にあなたごときに負ける訳がないわ。余程、汚い騙し討ちでもしたのでしょう。いいわ、あなたには、相応の(むく)いを受けて頂きましょう」


 ガザンは盾を前に突きだし斧を構えて、シェリーに対し攻撃体制に入る。

「報いだとぉ。はっ魔法の使えぬ貴様が、何をしようと言うのだ。逆に、こちらがさっさと終わらせてやる」


 シェリーは両手を前に突き出し闇の言葉を紡ぐ‥


「闇の盟約 その力 闇の炎 その魔力 紅蓮の炎 全ての闇‥」


「なっなんだ?魔法か?いくらやっても無駄だと言うのが分からんのか」

 ガザンは、斧を振りかぶりシェリーへ襲い掛かった‥だが!


「おそいっ」


『ダークヘルファイア』


 ガザンが斧を振り下ろすよりも早く、シェリーの魔法は完成し、掌からはどす黒い蛇の様な闇が生まれ、飛び掛かるガザンを押し返しながら襲う。

 

 ガザンは叫ぶ「はっバカめ。何度やろうが、無駄だ」。そして、盾を力一杯押し返そうとする…


 しかし


「なにっ!」ガザンが盾を前に押し返そうとするがびくともせず、黒い闇はガザンの体を包み始める。


 ガザンは、(うめ)きもがき、闇を払って逃げようとする。

「なっなんなんだ!どうなっている」

 体を侵食していく闇は、抵抗するガザンの行動など気に介さず、どんどん体を覆い尽くし、最後にはガザンの体が見えなくなり、黒い闇の塊が出来る。


 そして次の瞬間、闇の塊はどす黒い炎を上げ消失すると、そこには真っ黒に焦げたガザンが崩れ去っていき、黒く焦げた盾と斧が床に音を立て転がるのだった。


「いくら無効化出来る盾でも、その防御力を上回る攻撃は防げなかったようね」


 シェリーが振り返ると、そこには真里亜だけが立っていた。男達は、気を失って倒れているか、呻き声を上げながら床に転がって居るのだった。


 シェリーと真里亜は、直ぐ様、部屋を後にし、地下を目指す。途中、大階段に出たところで3人の敵に出会ったが、シェリーの魔法の雷撃により、消し炭となった。


 地下室への階段は、大階段裏に設置されており難なく発見出来、2人は怖れることなく降りて行く。


 地下に降りると、一本の通路が曲がっており、その先に扉が1つだけある。真里亜が扉を開けて入ると、6畳程の薄暗い部屋に男が2人机で向かい合ってカード遊びをしていた。


 扉を開けて堂々と入ってくる真里亜に、1人の男が立ち上がって「女がここに何の用だ?親分からのご褒美かぁ」と、イヤらしい顔付きで真里亜をなめ回す様に見る。


 無警戒で近付く男に真里亜の素早い蹴りが炸裂。男は吹き飛び、机に激突。カードを宙に舞わせながら机を薙ぎ倒し、男は泡を吹いて倒れ、連れの男が怒りを露にダガーを抜き「このアマ」と真里亜に斬りかかるが、真里亜の後回し蹴りを頭に喰らい、横の壁まで吹き飛んで倒れた。


 後から部屋に入ったシェリーは、手を叩きながら「お見事」と言い、そのままスタスタと歩いて男達に近寄ると、持ち物を探り鍵の束を見つけた。


 部屋には、シェリー達が入ってきた扉と反対側にもう一つ扉が有り、その奥は通路になっていた。通路は大人が二人横並びに悠々歩ける広さがあり、左右に4つづつ、合計8個の扉が付いており、その先は行き止まりになっていた。


 シェリーは、手前の扉から、

『センストラップ』【罠感知】

 の魔法を使いながら、慎重に扉を開けていった。


 8個の扉のうち、2個の扉に罠が仕掛けられており、その向こう側は壁になった扉だけの飾りだった。残り6個は、部屋になっており、4つの部屋に女性と子供が1人づつ監禁されていた。


 部屋に入り「助けに来ました」と真里亜が笑顔で話し掛けると、皆泣いて喜び、家に帰れる安堵を露にした。




 シェリーと真里亜は、人質だった4人を連れ、屋敷を後にし、村へと急いで向かう。

 人質の中には、村長の娘も含まれていたので、先ずは村長宅へと向かい事情を説明するのだった。











「ひゃあっはっは、残念だったな」

 この場のリーダーらしき男が、高笑いをし喜んでいたその時‥



 ドッカーン



「なっなんだ」

 高笑いをしていた男が、爆風を腕でしのぎながら慌てる。


 爆発は、数人の敵を吹き飛ばし地面に焦げた跡を残す。


「残念だったのは、あなた達だったようね」

 魔法の爆発による煙が晴れると、そこにはシェリーと真里亜が立っていた。


「二人供、無事だったのか。よかった」

 ミンツ達は歓喜の声を上げる。


「きっきさまら、どうしてここに?親分はどうしたんだ?」

 慌てふためく男に、シェリーが答える。

「あなた達親分は倒したわ。大人しく降伏するのね」


「なにっ!‥だが、今の状況でこちらの有利は変わらぬ。野郎共、こいつらを血祭りに上げろ」

 そう言って、剣を高らかに掲げるが、誰も反応をしない。男は焦りながら「どうしたんだ?」とキョロキョロ回りを見回す。すると…


「状況は変わったのよ」

 真里亜の言葉に続き、周りで一斉に轟きの声が上がる。辺りには、村中の村人が武器を持って囲い、2階や屋根の上の敵も武器を落として降参していた。


 各所で勝鬨の声が上がり、こうして村に平和が訪れたのだった。







 シェリーがミンツ達に話したのは、偶然怪しい屋敷を見付け潜入すると、たまたま人質とされた村人を発見し、助け、油断していた敵の親玉を倒したのだと。そして、ミンツ達の危機を聞き付け村長に協力をお願いし、今に至ったのだ。と、説明した。


 捕まえた盗賊団は、領主に引き渡す手筈を整え、今後警備の巡回をお願いする事にした。



 ミンツ達は、お礼をしたいとその晩もてなされ、村人に長居をせがまれたが、先を急ぐのでと断り、次の日の朝、出発するのだった。


異世界より現代の方が良いのでしょうか?

次回、目的の場所へ

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