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勇者達[出会いと出発]第5話

見直ししてないので、誤字多いかもです。早目に1度見直します。

 ポタリ ポタリ


 赤黒い液体が、祭壇の角から溢れ落ち石畳で弾ける。

 祭壇の上には蝋燭の炎が揺めき、中央には少女が横たわる。その胸にはナイフが刺さり、少女は既に絶命していると思われる。


「血を絶やすでないぞ、流るる小娘の血がある限りあの女にどんな治療も叶わぬのだからなぁ。ヒッヒッヒ。早く疲れはて力尽きて死して仕舞うがいい」


 暗く狭き部屋に、男の不気味な声が響き渡った。







 港街であるパルテトは、1日中賑やかで道は絶えず人が行き交っていた。


 そんな街中を歩く二人の姿があった…


貴女(あなた)はまず、その格好からどうにかしないといけないわね」

「そうですね、流石にパジャマで旅に出るのは、気が引けましね」

「パジャマ?」

「あぁぁ、‥この服の呼び名です」

「ふぅ~ん、まっ良いわ。今回、司教様からかなりの準備金を預かっているけど、これは大事なお金。必要な物を必要な分だけしか使いませんからね」

「私も贅沢をしようとは思いませんよ」


 そんな会話をし、パルテトの大通りを歩く、ツベリラと真里亜。そんな彼女達の向かっているのが、この街の冒険者ギルド。そこへ行き、今回の任務をこなす為に必要な人員を確保せねばならなかった。


 真里亜達が先ず向かったのは、真里亜の服を買う為に庶民がよく使う服屋へと入った。


「どんな服がいいの?あまり高価な物や冒険に不向きな物は駄目ですからね」

 ツベリラは、腕を組ながら真里亜に向かって、親の様な口振りで話す。


「はいっ。そうですね、動きやすい服装なら、どんなのでも構いません。ただ、露出は少ない方がいいです」

 真里亜はモンクである。短パン半袖の様に、動きやすい服装が一番だが、神に遣える身として、露出する事に抵抗があるのだ。


「えっと、これとこれ、あとこれ。ちょっとサイズが合うか試着しますね」

「分かったわ、私はその辺見てますから、決まったら教えてね」

 真里亜はいくつか服を選び、試着室へと入る。



「どんな服がいいんですか?ここのは高くないので、好きなのを選んで下さい」

「あらそう。だったら、これとこれとこれを着てみようかしら」

「‥けっこう過激なのを選んでませんか」

「そうかしら、動きやすい服装が一番じゃないかしら」

「そうですね、シェリーさんが、それがいいなら僕はいいと思います」

「ありがとうミンツ。じゃあ、試着してみるわ」

 シェリーは選んだ服を持って、試着室に入る。


 シャー  シャー


「ツベリラ、決めたわよ」


 シェリーの入った更衣室の隣から真里亜が出てきた。


「さっ決めたなら、さっさと行くわよ」

 ツベリラは、レジへ足早に向かう。

「ちょっ、待って、ツベリラ、何をそんなに急ぐの?」

 ツベリラの後を、追いかける様に真里亜が走って行った。


 お会計を済ませて、真里亜とツベリラは店の外へと出る。

「どうしたの?ツベリラ。あんなに急いで店を出なくても‥」

「いえね、隣に居た冒険者風の人達なんだけど、男4人が裸どうぜんな格好の女の人を連れて、服を探していたんだけど、その女性も、選ぶ服が男を誘うような服ばかり選んでるのよ。下品過ぎて、その場に居るのが嫌だったの」


「そうだったんですね。こんな朝からはしたないですね」


 ーーふふっ派手な服って言うと、まるでどこかの誰かさんを思い浮かべちゃいますね。そう言えば、この世界に来てるのって、私だけじゃないはずよね。困ったわ…




 服も着替え、真里亜達は最初の目的地である冒険者ギルドへ到着した。

 冒険者ギルドは3階建てになっており、1階は半分が食事をしたり酒を飲める場所になっていて、残り半分が、ギルドの依頼を受けたり、完了した依頼の報酬を受け取ったりする場所になっている。

 2階は、依頼の持ち込みや上位の難しい依頼を受けるカウンターや個室がある。


「ここがこの街の冒険者ギルドね。私は入るのが初めてだから、少し緊張するわね」

 ツベリラが少し強張(こわば)った顔つきで、冒険者ギルドの入口をくぐった。


 ツベリラがキョロキョロすると「2階じゃないかしら」と、真里亜が声を掛ける。


「あっあなた、ここに来たことがあるの?」

 少し驚いた顔で、ツベリラは真里亜に問いかける。

「そっそうね、昔、ちょっとだけ、覗いたことがあるのよ」

 咄嗟に真里亜は答えたが、目が泳いでしまった。


「まぁいいわ、2階ね。でも、私より若い貴女が、昔って、いつ頃の話なの?変ね」

 ツベリラの言葉に、真里亜は誤魔化し笑いを浮かべるしかなかった。


 冒険者ギルドの中は、まだ朝が早い事もあり、仕事を探す冒険者達で賑わっていた。


 そんな中、階段を上がって行く2人の姿を多くの冒険者達が目で追っていて、ツベリラはその視線に居ずらさを顔に滲み出していた。


「なっなんかみんなが、私達を見ている気がするのだけど、私の勘違いかしら」

 そんな不安顔のツベリラに真里亜は、

「気のせいではないと思いますよ。この時間、依頼を探す冒険者は多く居ますが、依頼の持ち込みをする人は少ないですし、ここの2階に上がる人を冒険者達は敏感に感じ取りますから」

「なぜ?」

「なぜと言われても、2階はそう言う所なんです」


 さらっと答える真里亜の顔をツベリラはじっくり見詰め「貴女って分からないわね。若いのに変なところで落ち着いてるのよね。それに物知りだし‥」


 ツベリラに不思議がられ、焦る真里亜は、前方のカウンターを指差し、

「あそこですよ。依頼の持ち込みをするカウンターは、ささっ急ぎましょう」

 真里亜に押され、ツベリラはカウンターへとよろつく足取りで進み出た。


 カウンターに座る女性が立ち上がり、お辞儀をする。

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへ。本日はどう言ったご用件でしょうか?」


 ギルド職員に話し掛けられ、ツベリラは真里亜の事など頭から離れ、畏まってしまう。


「あっあのっ、本日は、ご依頼を、されたくて、お願いします」


 ツベリラの意味の分からぬ言葉に、ギルド職員は少し考えてから「えっと、仕事のご依頼で宜しいのでしょうか?」と、言葉をまとめる。


「はい、そうです」


 職員の女性は、優しく微笑み「畏まりました。では、詳しい内容と手続きなどの仕方を説明しますので、こちらにお掛け下さい」と、自分の前にある席を勧め、真里亜とツベリラは席に着いた。


「それでは、ご依頼の件と当冒険者ギルドのシステムについてお話をさせて頂きます‥‥



 冒険者ギルドで依頼をするには、依頼内容によってランクが付けられ、そのランクによって用意してもらう報酬も変わってくる。そして、冒険者達にも冒険者ギルド協会が定めるランクが付いている。

 なので、高いランク【難しい】の依頼は高い報酬を必要とし、低いランク【易しい】の依頼はそこそこの金額で収まる。

 そして、募集する冒険者達もランクの高い【強い】冒険者を必要なら金額が上がり、ランクの低い【弱い】冒険者なら、安く雇える。と言うことになる。

 依頼が成功した場合、冒険者ギルドは報酬の2割を報酬から差し引き、失敗した場合、必要経費と報酬の1割を差し引かれ、依頼者に報酬が返金される。

 尚、依頼内容の調査とランク設定の為、1週間から最大半月の調査期間が必要とされる。



「なるほど、大体は理解しました。しかし、最大で半月かかってしまうとなると、困りますね。どうしましょう」

 ツベリラは、急ぎの任務を与えられている。そこに来て、待機で1週間以上の足留めを(こうむ)るのは、とても不味い話であった。


 そんな、困っているツベリラを見て、職員の人が言いにくそうに言葉を挟んだ。


「冒険者ギルドとしては、あまりオススメは出来ないのですが、直接、冒険者と交渉すると言う手もございます。その場合、直ぐにでも出発出来ますが、ギルドは関知しておりませんので、逆に冒険者に襲われたり、逃げられたりしても、自己責任となります」


「分かりました。少し考えてから、また、相談させて貰います」

 そう言って、ツベリラは肩を落としながら席を立ち、真里亜も遅れて席を立った。




 時は少し戻り‥


 シャー


「どうかしら。似合う?」


 そこには、少しヒールのあるパンプスに、膝上で短めのタイトスカート。お腹が少し見え、オフショルダーの上着。最後にマントを羽織った姿のシェリーが居た。


「け、結構ラフですね。とても良く似合ってますよ」

 ミンツの少し照れた返事に、周りのメンバーも、首を縦に振って頷く。


「そう?良かった。でも、こんなに買ってもらっちゃって悪いわ。早く、クエストをこなして、出してもらったお金を返さないとね」


 シェリーはそう言ってから、目線を外すと、店の窓から外を歩く女性に気が付く。


「マリア‥」


 目を擦り、もう一度見たとき、その姿はなく…


 ーーもし、マリアだったとしたら、また会えるはず。

 シェリーは、強く拳を握り締め、胸に押し付けるのだった。


 そして、シェリーと『正義の竜剣』のメンバーは、冒険者ギルドへと到着する。

 まず、ミンツ達は薬草採取クエストの報酬とゴブリン退治の報酬を受け取り、その後、シェリーと共に次のクエストを探すのだった。


「ねぇミンツ、あなた達はいつもどの辺りのクエストをこなしているの?」


「そうですね‥‥



※クエストは大きく別けてA、B、Cの3つ。Aは街の中や街の周辺での依頼。Bは隣町から近郊都市までの依頼で往復だけでも1日以上掛かる。Cは、更に遠くの都市や村まで最低でも1ヶ月以上掛かる依頼である。

 そして、そのA、B、Cの中で、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、オリハルコンと依頼内容の難易度が設定されている。

 因みに、巨体ドラゴンの強襲、魔王討伐、魔王国との戦争など、国で動く緊急クエストは、S級のオリハルコンとして、冒険者を募る時がある。



  ‥僕達は、主にAのシルバーかBのブロンズ辺りをメインにこなしてますね。なんせ、回復系のマジックキャスターが居ないもので、なかなか危険なクエストには、手を出せないんですよ」


 それを聞き、シェリーは、口元に指を付け「そうよねぇ、確かにそれが妥当でしょうけど、それだと数をこなさないといけないわね」とクエストに目を走らせる。


 そんな時、後ろの方で声を荒げるのが聞こえた。


「おいおい、そんな怪しそうで危ない話、ギルドを通さずに受けれねぇぜ。他所当たんな」


「はぁ、やっぱり、時間を掛けないと駄目な様ね」

「そんな事ないです。もう少し、当たってみましょう」

「あなたのそう言うところは、立派ね」


 そして、真里亜は周りを見回し、シェリーは振り返り、お互いの目が合う‥

 真里亜の視線がシェリーを捉えている事に気が付いたツベリラは、真里亜の腕に自分の腕を絡ませ、シェリーと逆方向へ引っ張り、真里亜に耳打ちする。

「あの者達は駄目ですよ。あんな破廉恥(はれんち)な格好をして、男達を連れ回す様な輩は、信用なりません」


 真里亜はその場に立ち止まりツベリラの絡まった腕に力を込める。すると、ツベリラはグッと腕を引かれ上半身だけ止まり、転びそうになるが、絡まった腕にしがみつく格好で、何とか持ちこたえた。


「あの者達にお願いしましょう」


 真里亜の言葉に、ツベリラは目を白黒させ「あなたは何を言っているの?あんな訳の分からぬ者達に大事な使命を託せると思っているのですか」


 ツベリラの言葉に、真里亜はゆっくりとした口調で答える。

「大丈夫ですよツベリラ。彼等となら、どんな困難な使命でもこなせるでしょう。ミスティア神の思し召しです」


 ツベリラは、一瞬、真里亜を聖母の様に眺めてしまい、その事にハッと気が付くと、咳払いをして誤魔化し「まぁ、あなたがそこまで言うのなら、話だけしてみましょう」と言って、身だしなみを整えるのだった。



「シェリーさん、この辺のクエストなら、危険も少ないですし、無難じゃないですか」

 と、ミンツがいくつかクエストを指差している。

しかし、シェリーはミンツの話を聞き流し、力強い声で応えた。


「いえ、ぴったりの依頼が向こうから舞い込んで来るわよ」



 その後、真里亜とシェリーは、お互いの関係などは話さず、依頼主と冒険者の立場で、交渉の席に着いた。


 ツベリラが依頼内容と報酬等の話をする。


 その内容とは…このパルテトの街より海岸線に西へ馬車で1週間、そのから南へ1日行った場所にあるザハマと言う村へ行き、そこに居るであろう立ちはだかる邪教徒を討伐、悪しき儀式を阻止する事。

 敵の数は不明、敵の強さも不明、モンスターや敵の持つマジックアイテムも不明。

 報酬は大金貨2枚、費用持ち、依頼者の僧侶2名も同行、参戦。



※この国の貨幣。

銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、大判金貨の5種類。

物価などを考慮に入れず、目安として。

100円、1000、1万、10万、100万。

宿は、1泊食事付きで大銅貨2枚。



 バンッ


 ミンツはテーブルを両手で突いて腰を浮かせる。

「そんな話は無謀だ。報酬には魅力があるが、それだけに危険過ぎる。このメンバーの倍の人数が居ても、悩む内容だ」


 シェリーも真里亜も、ミンツの言葉に頷く。確かに、普通に考えたら、ここに居るメンバーだけでこの依頼をこなすには、レベルが高過ぎるし危険過ぎる。しかし、それはシェリーと真里亜の強さを知らない者の考えで、この2人が揃ってこなせない依頼など無いに等しいのだ。


 ここでシェリーが、口を挟んだ。

「あのぉー。この依頼は、敵の殲滅が目的ではなく、その行われている儀式の阻止、又は破壊が目的なんですよね?」


 突然のシェリーの言葉に、少し(うつむ)き加減だったツベリラは、顔を上げ、力強く答える。

「はい、そうなんです。別に誰を倒さなくても、その行われている儀式を阻止出来ればいいんです」


「なら簡単じゃない。こそっと調べて、ちゃちゃっと壊せばいいんでしょっ!ねっ」


 ミンツは、ゆっくりと腰を椅子に落とし、他のメンバーに顔を見やった。


 そして、全員考え込むと、

「たまには、いいんじゃないか」

「そうだね、最近、刺激が少なかったし」

「旅もいいかもな」

「女性が行くって言って、男が嫌がるのも情けないしな」

 と、段々声が上がっていった。


 その言葉に、シェリーは笑顔になり「流石、姫を救った勇者達だ」と嬉しそうに言って真里亜にウィンクをする。



 出発は明朝、馬車はツベリラが教会から借りてくる。

 その日は、買い出しなど、旅に必要な物を用意し、夕食を全員でとって自己紹介などをして、親密度を高める事にした。



 食事の席にで…


 ミンツが音頭を取り、話す。

「先程は、自分とツベリラさんだけが名乗りましたが、改めて紹介させて貰います。自分は『正義の竜剣』パーティーのリーダーミンツです。主に剣で先陣を切ります」


 などと、各々紹介を進める中、真里亜の番になり。

「えっと、名前はマリアンヌ‥


 ぶー


 シェリーが口に含んだエールを吹き出し「マリア‥ンヌ?」と動きが止まった。


「はい、マ・リ・ア・ン・ヌです。ヨロシク」




 新たな旅が始まった……



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