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勇者達[初詣]第1話

ここから新しい章になります。


 ご~~ん、ご~~ん


 百八つの鐘が、年の移り変わりを人々に伝えている。


 志恩達は、最寄り駅から電車で少し行った場所にある大きなお寺で、出店を楽しみながら、大晦日、年越しをしていた。


 今日集まったメンバーは、志恩を筆頭に愛莉、静香、猛、貴司、そして、美沙と友梨。何故かシェリー…とアサヒだった。


「政夫と柚木は田舎で年越しみたいだね」

「まぁ、家族で毎年帰っているんだし、しかたないよ」

「でも、美沙と友梨が来てくれて嬉しいなぁ」

「こちらこそ、誘ってもらって良かったですよ」

「そろそろカウントダウンだね」

「うん」


 お寺の境内で人混みに列びながら、皆で0時を過ぎるのを今か今かと待ちわびていた。


「で?どうしてお前がここに居るんだ?」

 ボソボソと、志恩がシェリーに呟く。


「あら、子供だけで深夜の徘徊は心配だから、保護者として付いて来たのよ」


「よく言うよ。だいの大人が、子供に付き合わないで、早く良い相手でも見付けろ」


「あ~セクハラ~」


「それは、大人が子供に言う台詞じゃないぞ」


「いいもんね~だ。ねっアサヒ」


「わしゃ知らん」


 アサヒは、この世界をもっと知りたいと、外に出ようとするので、迷子や問題を起こされても困るから連れてきているのだ。



 ご~~~んご~~~~ん


「「「明けましておめでとうございます」」」


 去年は人生を1回繰り返したくらい、色々有りすぎたんで、今年は静かに暮らしたい。等と考え、お願いをしている志恩であった。



 参拝を済ませ、出店で買った食べ物をシェアしながら、境内の隅に集まり、皆で盛り上がっていたその時、ガラの悪そうな若者達が志恩達の近くに寄ってきた。


「何かお子様が女の子を一杯集めて、楽しそうにしてるじゃないねぇか」

「数が合わねぇみたいだから、俺らが混ざってやるぜ」

 男達が、酒の臭いを漂わせながら、志恩達に絡んできた。


「やだ、お酒臭い」

「私達に関わらないでください」

「なんだお前ら」

 静香や愛莉は、絡んできた若者達を拒絶したが、男達は、よけい迫り脅してきた。が、


「はいはい、若者達。この子達はまだ未成年なのよ。犯罪になるから、関わっちゃダメ。お子様相手より大人な女がいいでしょ、私がみんな相手してあげるから、付いてらっしゃい」

 そう言って、シェリーが男達の前へ進み出る。


「先生、私達は大丈夫です。無茶しないで下さい」

 静香達がシェリーの手を掴み、止めようとしたが、

「大丈夫よ。私はこう言うの好きだから、心配しないで」

 そう言って、男達を引き連れ、林の奥へと消えて行く。


「志恩、先生が‥助けを呼ばないと」

 愛莉は、志恩の腕にしがみつきながら訴えるが、志恩は反対側の手で掴まっている愛莉の手を優しく自分の手で包み込み、

「先生なら大丈夫。人間の子供相手に無茶はしないって。それに、人が来ると先生の方が困るかもよ」

 と、イタズラ混じりな苦笑いで応えた。


「にぁおん」


 アサヒが志恩の肩から愛莉の肩へと乗り移り、頬を擦り寄せると、愛莉は顔を少し(ほころ)ばせる。それを見て志恩が、


「アサヒもそうだって言ってるよ」


「えっ、そうなの?」


「にぁ~~あ」



 志恩達は改めて、境内横で会話を始めたが、不安が垣間見える中、次第に口数も少なくなり、暫く、沈黙が続いてきたので、志恩はシェリーに早く戻って来るように、魔法でメッセージを送る。


 すると、暫くして、林の中へと消えて行ったシェリーが、何事もなかったかの様に悠々と戻ってきた。まるで、ちょっと散歩にでも行ってきたかの如く。


「「「せんせーい」」」

 愛莉と静香がいち早くシェリーに駆け寄り、それを見守るように、他の仲間が囲んだ。


「先生、大丈夫だったんですか?」


「あらあら、心配してくれてたの、ありがとね。私は大丈夫よ。ちゃんと話し合って、大人しくなってもらったから」


 志恩とアサヒは顔を見合せ、

「・・・・」


「さすが教師、大人ですね」

 愛莉と静香は、シェリーの傍で喜んでいた。



 後日、町内で山寺に女の鬼が出ると噂がたったが、シェリーには伝えていない…






 新年を迎え、それぞれの生活が始まった。


 志恩の家では、今年は父親が海外出張の為、田舎に帰らず、志恩と愛莉の二人[+1匹]だけで正月を過ごしている。


「ねぇ、志恩。今日はどうするの?」


 リビングでお正月のテレビを観ながら、愛莉はアサヒを抱えて志恩に振り返る。

 志恩は台所で、朝食の片付けをしていた。


「今日は隆二達と新年の集まりをするんだ、だから愛莉は留守番しててくれ」


 愛莉は頬を膨らまし、

「ええぇー、つまんないの。友達みんな家族とお出かけちゃってるって言うのに‥いいよぉーだ、アサヒちゃんとお留守番してますから」

 と言って、アサヒを抱き締めながら応えるが‥


「ごめん、アサヒも一緒に連れて行くんだ」


 アサヒを抱いていた手が離れ、アサヒが床に落ちる。

「にぁっ」

「そんなぁ~アサヒも連れてっちゃうなら、私も連れてってよ。みんな知らない仲じゃないんだしぃ~」


「んん~ん」

 志恩は、愛莉を連れて行くと、異世界での下手な話が出来なくなるから、連れて行きたくはなかったが、確かに断る理由が思い当たらなかった…


「聞いてみるよ‥」

「なんか嫌そうだね。私が居ると、そんなに不味い集まりになるわけ?」

 志恩の態度に、愛莉の頬が更に膨れ上がった。


「そっそんなことはないよ、うん、ないよ…」






 かくして、勇者パーティー+1匹+1人の新年会が始まるのであった。


 集まる場所は、勿論隆二のお店『ティームーン』。この日は、店の入口に鍵をして窓のカーテンを閉め、外からは分からない様にしてある。なぜなら…


「この集まりは、どういったメンバーなの?私にはさっぱり分からないんですけど!」

 と、愛莉は唖然としていた。


 ここに集まったのは、お店の店主隆二、志恩に愛莉、シェリーと真里亜、そして勿論、アイドル歌手一条リサこと、北条亜理沙である。


「真里亜さんも皆さんのお知り合いだったんですね」

 など愛莉は終始、不思議がっていた。しかし、志恩が愛莉を連れていく条件として、みんなの過去を詮索したり、質問したりしない事、と言う約束をしていた。なぜなら、みんな過去に色々な辛い思い出が多いからだ、と言いくるめておいたのだ。

 実際は、嘘を付いて誤魔化すと何処かでボロが出そうだったからである。


 と言い訳で、皆で隆二の手料理を摘まみながら、酒盛りで話に華を咲かせていた。



「志恩、未成年なんだから、あなたは駄目だからね」

 と、愛莉が志恩のお酒を取り上げようとするが、

「まぁまぁ、年に1度の正月なんだからさ、少しくらいはねっ」


 志恩は愛莉をかわし、日本酒を(あお)る。


「せんせ~い、シェリー先生も教師なんだから、止めてください」


 シェリーは既にけっこう酒が入っている。


「まぁまぁ愛莉ちゃん、志恩も中身はおっさんなんだから、今日くらいは大目に見てあげて」

 と言って、ウィンクをする。


「中身がおっさんて、意味が分かりません。それでも教師ですか。まったくもぉ」


 愛莉は呆れてながら座ると、手元にあったコップの透明な液体を飲み干した‥「ヒッく」


「おいおい愛莉ちゃん、そりゃ酒だぜぇ」

 隆二が唖然と眺めていた。


「ううぅ~ん、なんかどうでも良くなって来ちゃった。なんか楽しぃ~」

 愛莉の目が虚ろになっていく…



 そんなこんなで、愛莉の記憶も曖昧になっているので、懐かしい話を皆でしながら盛り上がっていたいくのだった。





 夕方近くになり、志恩達の酔いも程好く醒め、皆で初詣に行こうと話が盛り上がり、途中で寝てしまった愛莉も目が醒めたようなので、揃って出掛けることにした。



 近くの神社にやって来たが、亜理沙はマスクを付け帽子を被り、更に幻影の魔法を掛けているので、別人である。

 愛莉は、そんな亜理沙を「別人みたい、凄いですね」と驚いていたが、幻影を見破る事が出来なければ、別人みたいではなく別人になっているのである。


 人の賑わいも少し和らいで来た中、志恩達は神社の境内で、参拝の列に並んでいた。


《人間は何でこんなに並んでおるんじゃ。食べ物でも配っておるのか》

 アサヒが志恩の頭へ直接話し掛けて来る。

《いやいや、食べ物は配ってないですが、神様に色々なお願いをする為に並んでいるんだよ》

《ほほぉー、こちらの神は、こんな多くの人々の願いを叶える程に働き者なのかのぉ》

《いや、こっちの世界には神様は居ないんだよ。皆、神様を心に居ると願って、祈りを捧げているんだ》

《なるほど、みな真面目じゃな》


 志恩は皆に願いを聞いてみた。

「隆二はいつも願いは決まってるもんな」

「当たり前じゃねぇか。商売繁盛だけが生き甲斐だからなぁ」

「はいはい。亜理沙は何をお願いするの?」

「ふふ~ん、な・い・しょ。言ったら願いが叶わなくなっちゃうからね」

「ほぉ~お。真里亜はお願いなんてするの?」

「そりゃあしますよ」

「だけど、異世界(あっち)でリアルに信仰してる神様がいて、今は教会でキリスト様だろ?」

「いいの!今日のは自分の個人的なお参りなんだからさ」

「良いように言ってるよ」

「愛莉はどうなんだ?」

「私はいつも決まってるよ。皆が日常のまま、幸せでありますようにってね」

「さすが、良く出来た妹だ」


「「「で?志恩は?」」」


 自分ばかり人に聞いてばかりいた志恩に、当然みんなの突っ込みがくるのだった。


「俺は~、、、」


 皆が聞き入る中、志恩は自分の掌をポンッと叩いて、


「考えてなかった」


「「「ハァー」」」



 お参りを済ませ、そのまま全員は解散する事にし、各々、電車、バス、タクシーと別れて行く中、真里亜が別れ際、志恩の手を引き耳元で話をしてきた。


「ねえねえ志恩」

「どうした?」

「さっきのお参りなんだけど、お願い事をし終わった後に、神様の声が聞こえた様な気がしたの」

「どんな?」

「わかったって‥」

「いくらなんでも、こっちの世界の神様とは喋れないだろぉ」

「そうなんだけど…どっちかって言うと、異世界(あっち)の神様っぽかったんだよね」

「聞き間違いだよ。まぁ、願いが叶ったら、教えてくれ」

「叶っちゃうと、まずいんだけどぉ‥」

「叶うと不味い願いってどんなだよ!、まぁ、明日にでもその話、みんなで聞くよ」

「明日?うっうん…」


 真里亜は、渋々家路に向かい、志恩達も帰って行くのだった。



 まさか、このことが、あんなことになるなんて…



次回、どこ?だれ?どうしよう。

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