ミラクル・グッバイ その6
ちょっと間繋ぎです。
私の名前は早乙女真里亜、普段は保母さんをしていて、小さな子供達に囲まれて仕事をしています。週に2、3回、近くの教会のお手伝いでシスターもしているんですよ。
教会でよく見かける女の子。今日もその子が来ています。車椅子で帽子を深く被り、眼鏡にマスクをしている。可愛らしい顔をしているのですが、顔に大きな傷と火傷の後が。きっと、足を怪我したときに顔の傷も付いてしまったのでしょう。
そんな車椅子の少女は、教会に来ていつも神様に一生懸命お祈りをしています。
前に尋ねた事が有ります。
「いつも熱心に何をお祈りしているの?」
すると彼女は、
「大切な人が日々、無事でありますように」
って祈ってたそうです。
私はてっきり、自分の怪我が治るように祈っているものだと思いました。しかし彼女は、自分よりも大切な人の幸せを願っていたなんて…私はまだまだ心の修行が足りないようです。
あっそうだ、今日は神父様から本棚の整理を言われていたのでした。
さっ上の本から…
よいしょっよいしょっ…
あれっ届かない。
えいっやーとぉー
・・・
あっ
ずるっ ドタン バサバサバサ
ゴホゴホ‥
とっ取り出す手間が省けて良かったわ……
ここは都内の高層マンションの一室。
「お邪魔しまーす」
愛莉は目を輝かせながら玄関をくぐった。
「すっごーい、ここに住んでるんでか?でも、結構家具とかないんですね」
「ここはいくつか在る部屋の1つで、主に着替えと睡眠にしか使ってないのよ」
「わぁー家が1つじゃないって、凄ーい」
志恩、愛莉、佳澄の3人は、取り敢えず亜理沙ーーいや今はリサーーの家に警察署からタクシーに乗ってやって来ていた。
「志恩、なんでリサさんと知り合いだった事、言わないのよ」
「いや、ほら、えー、そうそう、芸能人は些細な事でも秘密にしなくちゃならないじゃん。それにそんな大した知り合いでもないし…」
リサは、志恩の耳元で囁く。
「へぇ~大した知り合いじゃないんだ~」
「いやっアハハハハァ~」
志恩は、顔をひきつらせて笑う…
愛莉は志恩とリサの二人を眺めながら、
「確かにリサさんは有名人だから、秘密にしなくちゃいけないんだろうけど、どこでいつ知り合ったの?なんか、只の知り合いには見えないんだけど…」
愛莉は上目遣いで二人をじとぉ~っと、見詰め続ける。
「そんな目で見てないで、佳澄さんの傷の手当てをちゃんとし直してあげないと」
ハッと愛莉は振り向き、ソファーに座る佳澄を見てから、リサに「救急箱ないですか?」と聞く。
リサは、台所から救急箱を取り出し持ってくる。
志恩はそれを見て「料理道具じゃなくて、救急箱が出てくるだね」とリサに言うと、
「この家では料理しないだけよ」
と、少し怒った風に言い返した。
愛莉は、救急箱を受け取り、佳澄のところへ向かいながら志恩に向かって、
「志恩は佳澄さんの手当てしなくていいからね。また、胸でも揉まれたら困りますから!」
と言って、プイッと佳澄の手当てに向かった。
「・・・」
「へぇ~胸揉んじゃうんだ~」
リサが白い目で志恩を冷たく睨み、志恩は、
「いやいや、あれは不可抗力と言うか‥」
「あら、本当に揉んだのね」
「えっ!いや~ハッハッハ」
リサは、カウンターテーブルに立つ志恩の横に並び‥
「厄介事に首を突っ込むの好きね。で、今回はどんな事なの?」
「あの…リサさん…その…僕の足を踏んでらっしゃる御足を退けて頂けますでしょうか…」
リサの右足は、志恩の左足をグリグリと踏んでいる。
「あ~ら、気付かなかったわぁ」
「ははは…」
志恩が顔をひきつらせながら、渇いた笑いを浮かべていた…
愛莉が佳澄の手当てをしている間、志恩はリサに現状を伝えた。
「なるほどね、彼女の素性も気になるけど、悪徳組の出方も気になるわね。さて、どうする?」
「どうすると言われても、こちらから動く訳にはいかないしなぁ」
「だったら、今日はこのまま、ここに泊まっていけばいいんじゃない」
「確かにこのまま家に帰っても親は帰って来ないし、夜、敵に襲われるのは愛莉が危険だしな。でもリサは仕事大丈夫なのか?」
「平気、平気。明日の夕方まで、久々のオフなのよね」
「じゃあ、そうすっかな‥」
愛莉にお泊まりの事を告げると、凄く喜んだ。
愛莉は、その後、ずっとリサに色んな話を聞き、自宅カラオケでデュエットしてもらい、散々楽しんでいた。
途中、楽しみ過ぎて佳澄の事を思い出し気に掛けたが、佳澄も愛莉の楽しむ顔を見て喜んでおり、一緒に話をして楽しんでいた。
気が付けば、時刻も日付が変わり愛莉の欠伸の数も増えて来たので、リサがそろそろ寝ましょうと言い、愛莉も渋々だが満足はしていたので寝る準備に入った。
愛莉と佳澄は、来客用の部屋で二人で寝ることに、リサは自分の部屋で、志恩はリビングのソファーで横になり、毛布を持ってきたリサに小声で「一緒に寝る?」と聞かれたが、「コラッ」と追い返した。
リサが着替えや寝間着も貸してくれたので、愛莉と佳澄はシャワーだけ借りて、眠りに着いた。
志恩もシャワーだけ借りて、昼間の闘いの汚れを落としながら、今後に付いて考え込んでいた。
ーー悪徳組は今日の事で、下手に動けなくなったはず。しかし、今日の襲撃で悪徳組の組長を狙った一昨日の事件に佳澄さんが絡んでいるのは間違いないだろう。今後、悪徳組の出方を待つか、佳澄さんのバックが動くのを待つか‥ 明日、葛城さんに相談してから動いてみるかなぁ…
突然、風呂場のドアが…
ガチャン‥
「リィサ!」
「しーーーーーー。起きちゃうでしょ」
「いや、起きちゃうとかじゃなくて」
「シオンは何をさっきから、お風呂場でブツブツ独り言喋ってるの?」
「それは、今後の作戦についてだなぁ…じゃなくって、愛莉達が居るんだぞ」
「まあまあ、昔は二人で水浴びとかしてたじゃない。こっちに還ってきてから、仕事の忙しさで気を紛らわせて我慢していたけど、寂しかったんだぞ!シオンは可愛い妹さんが居たから寂しくなかったんでしょうけどね」
「そっそんなことないよ、俺も寂しかったけど、こっちに来てから、色んな事件に巻き込まれたりして余裕がなかったからなぁ。でも、今は不味いだろうリサ」
「もぉ~、今はリサじゃなくって、アリサでしょ。私と居れて嬉しくないの?」
「そりゃ、嬉しいけど、アリサが芸能人だったなんて、俺、知らなかったしなぁ」
「私を知らない10代なんて、初めて会った時は驚いたけどね。でも、普通の女の子として見てくれたシオンが好きなんだけどね」
そう言って、照れて後ろを向いている志恩の背中に亜理沙が抱き付いた。
「こっこんなところで…俺の理性がさぁ…」
亜理沙はギュッとしがみつき。
「どう?あの頃より10歳も若くなってるんだよ。それにみんなが憧れるアイドル歌手だぞぉ~」
志恩は、バッと振り向き‥
「アリ‥」
「ねぇー志恩、お風呂?喋り声聞こえたけどさぁ」
脱衣場に愛莉の影が映る。
「なぁっなんだぁい、1人に決まってるだろぉ~色々考えてたら、声にでちゃぁったぁだけだぞぉ~」
「なんか、喋り方変だよ。まぁいいや。それより、リサさん知らない?ちょっと冷蔵庫の物を貰っていいか聞こうとしたら、部屋に居なくて」
リサは静かに浴槽に沈んだ。
「ああ、何かさっき、コンビニ行くって出ていったぞ。冷蔵庫の件は俺が話しておくから、適当にやって早く寝なさい」
「わかった、ありがとう。志恩も湯冷めしないように早く寝なさいね」
ガチャン…タッタッタッ
「先、出てるから、上手く揚がって来いよ」
「ブクブクブク~」
次回、新たなる…




