ミラクル・グッバイ その1
短いですが、書く間隔を狭めていく予定です。
2台の車が猛スピードで大通りを走り抜け、それを追い掛け、1台のバイクが駆け抜ける。
2台の車は、黒のフォームで全体を纏い、更にフロントガラス以外スモークが貼ってあり中が見えない。
後ろを走る車の後部座席の窓が開き、厳つい顔の男が体を乗り出し銃を構え、後ろのバイクに向けて発砲する。
バイクは銃弾を軽やかにかわし、ギアをニュートラルに入れるとハンドルから両手を離し、その離した両手で銃を構え、銃弾を発射する。
銃弾は車から銃撃してくる男の腕を確実に捉え、銃を一撃で弾き飛ばす。次に車のタイヤを撃ち抜き、攻撃を仕掛けてきた後方を走る車を制御不能にし、歩道のガードレールへと葬った。
クラッシュした車を尻目に、バイクはもう1台の車を追い掛ける。
追われる車は、後方の車など気にも止めず、スピードを上げてゆく。
バイクが先頭の車に追い付き銃を構えようとしたその時、前方の信号が停止の赤に変わった。しかし、前方を走る車は速度を落とす気配はなく、横断歩道へと突き進む‥ その時、横断歩道を車椅子で渡る少女の姿を車の運転手とバイクのライダーの視界に捉えた。
車の後部座席に乗る初老の男が運転手に向かって言いはなつ!
「構わん!歩行者など無視して突き進め。俺の身が無事なら、何とでもなるわっ」
黒塗りの車は速度を落とさず赤信号へと突き進む。
「ちっ‥外道」
バイクを運転する追跡者は速度を上げ、車の横へと並び運転手目掛けて銃を発砲、しかし窓ガラスは銃弾を弾き返した。
「ちっ金を掛けてやがる」
その間にも車とバイクは物凄いスピードで横断歩道を横断する少女へ近付いて行く。
「間に合わない…」
車椅子の少女が、自分へ近付く車両に気が付き、驚きで動きを止めてしまい、もはやこれまでと思わせた時、車を追い抜いたバイクが車の前輪片側フロント目掛けて、バイクを横滑べりさせながら突っ込んだ!
次の瞬間、スピードに乗った車は右車輪が跳ね上げられ、左の前輪と後輪だけの片輪走行となり、車椅子の少女の横をすり抜け横転、ガードレールへと突き刺さった。
バイクは横へ弾き飛ばされ、ライダーは宙を舞って車道に転がり倒れる。
ライダーは少女の無事を遠目で確認し「間に合った…」と呟いた。
年の暮れが近付くにつれ、街は賑わいを増していた。
そんな都会の街中を志恩は1人ブツブツと文句を言いながら歩いていた。
「なんでこんな人混みの中に、買い物に来なくちゃいけないんだよ。プレゼントなんて、近所のデパートでいいのに‥」
志恩が今居るのは原宿から表参道へ続く道である。今日はこれから愛莉へのクリスマスプレゼントを選びに来たのであるが、なぜこんな遠くまで来たかと言うと、数日前……
「しーおん!来週のクリスマス、家でパーティーしようと思うんだけど、手伝ってね」
「えっ、その日はちょっと都合が‥」
ニコニコ顔の愛莉の表情が固まる。
「はっ?まさか、家族や友達よりも大切な用事があるの?そんな訳ないわよね?」
愛莉の無表情な顔からの眼差しは、志恩に選択の余地を与えてはくれなかった。
「‥‥勿論、クリスマスパーティーを楽しみにしてますよ…」
愛莉は満面の笑みで志恩の腕にしがみつき、先程とは打って変わって、甘えた声を出す。
「ねぇねぇ、志恩へのプレゼントはもう決めて有るんだけど~志恩は私へのプレゼントはどうしてくれるの?」
そして手に力を込めてしがみついてくる。
ーー腕に伝わる感触が…妹の成長を感じさせるんだけど…流石に理性が‥
「まさか、近所のデパートとかで探そうなんて言わないわよね。安くても、一生懸命探してくれた物がいいな~」
ーー納得のいく答えじゃないと、手を放してくれそうにないな‥‥
志恩はそう考え、納得しそうな答えを探し出す。
「勿論、考えているよ!その為に明日、原宿の方まで行ってみようと思っているんだけど‥」
志恩は自分で言った言葉に、しまった…と後悔したが、葛城に会いに行くついでと、諦めたのだった。
そして今に至るのだが‥こんな場所に来たことがない志恩は、人混みに流されながら歩き回るだけで目的を達成出来ず、気が付けば人混みを避け裏路地の人気のない場所へと足が向いていた。
志恩は砂場とブランコだけある小さな公園に出ると1人ブランコに座り、人混みから抜け出した安堵を噛み締めつつ、気持ちを落ち着けていた。
ーー流石にこの時期、凄い人出過ぎて、プレゼントなんて買えるのかな…
などと、考え込んでいると‥「んっ!」
それは志恩だからこそ分かる血の匂い。志恩はゆっくりと匂いのする方へ近付いて行く。
すると、そこは公園の端の草むら…ゆっくり覗き込む‥
低いが何とか周りからは死角になる雑木の陰にライダースーツにフルフェイスの人影が全身傷だらけで倒れて居た。
志恩は驚いたが、全身の傷は事故によるものだと観てとれる。どうしたのかと近付こうとした次の瞬間、目の前に光が一閃し、志恩は後ろへ飛び退いた。それは、ライダースーツの人物が手を伸ばした志恩に向け、ナイフで斬り突けたからであった。
まるで手負いの獣の様に、傷だらけの体を肩で息をしながら起こし、戦闘体勢を取ろうとしていた。
普通の人ならば走って逃げてしまうところだが、志恩は両手を上に挙げ、攻撃の意志が無いことを示しながら近付く。しかし相手は警戒を解かず攻撃を仕掛けようとしたが、途中で力尽きその場に倒れ込んでしまった。志恩は急いで助け起こし体を支えた。
ムニュッ
「‥‥‥」
志恩が倒れた人物を起こした際、胸の辺りに手を回すと柔らかな感触が……
次の瞬間、ライダーのフルフェイスが外れ綺麗な黒髪が垂れ下がり、鋭くしかし美しい女性の顔が露になった。
「おっ女!」
「うっ‥」
「キミ、大丈夫かい?直ぐに病院へ連れて行くからね」
薄目で必死に動こうとする女性に、志恩は声を掛けた。女性は、志恩の言葉に掠れながらも何かを口からもらす。
「病院は‥だめ‥お‥お願い……」
女性は志恩の腕の中で意識を失う。志恩は怪我を負ったその女性をどうしたものかと考える。
魔法で怪我を完治させて置き去りにするか、もし彼女を連れて行くなら、魔法を使わずに治療しなければ怪しまれてしまうし…
そうこう志恩が草陰でどうしたものかと暫く悩んでいると、公園にいかにも怖そうな男が3人駆け込んで来た。
「おいっ、居ないな。かなりの怪我をしている筈だ、そう遠くに逃げらる筈はない。もっと民家の軒先なんかもよく探せ。あと、近くの病院も当たれ、いいな」
「へいっ」
不味いな、どう見てもこの子を探している様子だ。それにあの偉そうにしてる男の着けているバッチの代門、あれは確か悪徳組のバッチだったはず。この前テレビのニュースで観たぞ。
「んっ?!」
「おい、そこに人影が見えたな」
そう言って、1人の男が志恩の隠れる場所へと近付いてくる。
ーー不味い、しかたないな‥
「おいっ居たぞ!」
男は草むらにポツリと残る血の付いたヘルメットを拾い上げ。
「ヘルメットだけか!この近くに居るのは間違いない、早く探し出せ」
「くそっ」
ガシャッ
男はヘルメットを地面に叩き付け、怒りを露に焦りを感じさせるのであった。
少しずつ早目に書いて載せていく予定です。
少し長目の話になります。




