表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/68

ハチャメチャ大乱戦!そんなはずじゃなったのに

2018.5.7 誤字修正 表現などを書き換え修正。


 学生に夏の始まりを告げる試験も終わり、学校には楽しい夏休みを今か今かと待つ学生で賑わいでいる。


 しかしその前に、学生達には大事な試練が待っているのだった。


 ガラガラ ガシャン


 教室の入口をくぐり、担任の教師が現れ緊張が走る。


「はい、名前順に答案用紙を返します。呼ばれたら取りに来てください。先ずは阿部くん‥」


 試験休みも終わり、志恩達のクラスでも答案用紙が返されていた。


 志恩は、全ての答案用紙を眺めながら「全て平均点以上だ。よしよし」と、満足顔をしていた。


 それを横目で見ていた愛莉は「器用だよね、全部80点って、狙っても出来ないよね」と驚く。


「たったまたまだよ。はっはっは」

 志恩は、少し顔をひきつらせながら、笑って誤魔化す。


 ーーまぁ、半分は偶然だからいっか。


 愛莉は全教科高得点。

 我が妹ながら、立派である。


 猛と静香はギリギリの教科もあったようだが、赤点補習になった志恩の仲間は誰もいない。あとは夏休みに入るだけであった。



 今日の学校は午前中で終わりなので、お昼はみんなでランチにでも行こうと話していると、校門の方で何かあるらしく、窓際の生徒が騒がしくしていた。


 志恩達も気になり窓から外を覗いてみると、校門の外辺りにガラの悪い男達が下校する生徒達を眺めていた。


 その内の1人に、志恩達は見覚えがあった。


 そう、この前の休み、渋谷で揉めた男の1人で、どうやら志恩達を探している様子だった。


「あれって、私達を探してるんだよね?」

「どうみてもそうだな」

「どうしよ~」

「あの人数なら、竹刀があれば勝てそうだけど、そう言う訳にはいかないよな」

「当たり前でしょ!揉め事を起こせば、非があるなしに関わらず問題になるのよ」

「先生に相談するしかないかな?」

「でも、どうしてここが分かったんだろう?」

「ここで逃げたとしても、帰り道で柚木とかが1人の時に出会ったりしたら危ないよね」


 みんなで四苦八苦悩んでいると、志恩が静かに手を上げ「ごめん、ちょっとトイレ」と恥ずかしそうに言う。


「ちょっと志恩。緊張感な無さすぎ~」

 静香が、呆れ顔だが、少し笑みを浮かべながら言った。


「しょうがないじゃん、取り敢えず戻るまでにどうするか相談しといてよ。戻ったら、みんなで行動しよう」


「わかったわ、早くね」


 志恩は教室を出ると走り出した。




 ーーこんなところで揉め事なんて、真っ平御免だ。それにこんな早く、俺達の通う学校が割れたと言うことは、俺達の情報を唯一知るはずの警察にコネのある連中ってことになるな。


 ここがバレたなら、今日を凌いでも今後の憂いは残ることになる。


 ここは何としても元を絶たないとならない。



 志恩は校舎裏から出て塀を乗り越え校外へ出ると、愛莉達の居る教室から見えない死角の位置へと移動し、校門の前の男達に向かって叫んだ。


「おいっ、探してるのは俺じゃないのか」


 その声に気が付いた男が厳つい顔で振り返る。

「あぁん!おっそいつだ、みんなそいつを捕まえろ」


 志恩に気付いた男達は、我先にと駆け出してきた。


 志恩はある程度学校から離れたところまで逃げ、周りに人がいない場所まで行くと、足を止め、両手を挙げ男達に捕まる。


「おいこらぁ、他のガキ共はどこだ?」

 志恩の胸ぐらを掴み、男が凄みをかけてきた。


「今日は試験後なんで、俺以外は登校してませんよ」

 志恩はされるがままの状態で、男達に答える。


「あぁぁ!本当か? まぁいい、1人でも拐っとけば、他の連中もすぐに捕まえられるだろう」


 男達は、志恩の手を縛り、口に猿轡(さるぐつわ)をし、車に乗せると、そのまま何処かへと走り去るのだった。




 学校では、愛梨達が教室の窓から校門を見ていると、たむろしていた男達に動きがみられた事に反応していた。


「あれ。奴等、居なくなっちまいやがった」


「ほんとうだ、良かったね」


「隠れてたり、戻ってきたりしないよね?」


「それは分からないわね。念のため、今日はみんなで一緒に帰りましょうか」


「そうしましょう。あっそう言えば、志恩はまだ戻ってこないの?」


 愛莉は(おもむろ)に携帯を取り出し、志恩に連絡をしようとした。すると、

「あっメールが入ってる。志恩からだ。えっと、お腹の調子が悪過ぎるので、急いで家に帰ります。荷物宜しく。ランチは食べれそうにないです。だって」


「しょーがないなー」


「まぁ~志恩1人なら奴等に見つかる心配も無さそうだし、うちらは一緒に帰ろうか」


「そうだね」


「うっうん‥」

 愛莉は何か引っ掛かりを感じ、じっと志恩のメールを眺めていた。





 志恩を乗せた車は、郊外へと走り続けていた。


 車に乗ってかなり遠くまで来たとき、車窓から見える景色に同じような柵がずっと続き、暫くすると柵の終わりに入り口らしき門が見えてきた。


 車は入口とおぼしき門をくぐり敷地の中へ。綺麗に整備された芝生が一面に広がり、道の両脇には並木が続く。そんな広い敷地内を暫く走っていると、前方に大きな真っ白い建物が見えてきた。

 

 ーー相手は相当な金持ちだな…


 などと志恩は優雅に考えていると、正面の大きな白い建物を通り過ぎ、その先の少し離れた別館と思われる建物の前へと車は停車した。



 

「おらっ着いたぞ、さっさと降りろ。お前にとっては地獄への到着だ。へっへっへ」


 車から降ろされた志恩は、辺りを見回し、もっと違うことにお金や労力を使ったらいいのに…。などと呑気に見ていた。


 そのまま志恩は建物の中へと連れていかれる。


 建物に入ると木造式で1階のエントランスは広々とした空間になっている。そこから、奥の部屋へと向かい、中へと入ると大きなソファーに大きなテレビ、ピアノまであり、応接室となっているであろう場所に連れて来られた。


 部屋の中には、10人を超える強面(こわもて)なお兄様方が立ち並び、その中心には渋谷のマンションで最後に電話しているところを志恩がお灸を据えた男がソファーにいた。


「よぉガキ!先週ぶりか、この前はいいようにやってくれたが今日はそうはいかねぇからな。お前に変な力があったとしても怖くねぇぞ、今日はより凄い兄貴を連れてきてるからな。それに、今日は親父がもうひとつの建物で会合を開いててな、ヤバい奴等がごまんといる。逃げようなんて、思わないことだな」

 満足そうな笑みを浮かべ、ソファーにふんぞり反りながら、余裕の表情をしている。


 ーー聞いてもいないことを、よくベラベラと喋るもんだ。奴の話からして、こいつがボスで隣の建物に居るバカ親が大ボスってところか。


 そして、男達の中からフードを深く被った1人の男が前に出てきた。


 男はこちらを冷たい目で見詰め、志恩に話かけた。


「まさか、向こうの世界からの人間に会えるとはな。その上、同じ様に魔法まで唱えられるとは驚きだ。しかし残念だったな、猿ぐつわをされていたら、お得意の魔法も唱えられまい」


 話を聞き、志恩はこいつが同じ異世界から戻った奴かと確認し、探す手間が省けたと思った。


 そこまでの話を聞き、床に座らせられていた志恩は、スッとその場で立ち上がり、ニヤリと笑った。


 志恩の近くに居た男が「こらぁ座れ」と志恩の肩に手を置こうとしたそのとき、志恩は頭の中で魔法を詠唱する。


『アンチリストレクション』【拘束解除】


 その瞬間、志恩を拘束していた腕のロープと口に巻かれていた猿ぐつわが、スルスルっとほどけて落ちる。


 志恩を抑えようと肩に手を置いた男の手が、協力な静電気に触れたように、バシッっと、大きく後ろに弾かれた。


 そしてフードの男は狼狽え、志恩に向かって叫ぶ。


「なっなんだ。どうして拘束が外れる…きっきさま、何をしたっ」


 高レベルのマジックユーザーになれば、声帯からの詠唱でなくとも魔法は発動出来るのだ。


 志恩はフード男を指差し「さぁな、お前とは違うってことだよ。そんな事より、お前には聞きたいことが山ほどある。逃がしはしないぞ」


 志恩はそう言って手を開くとフード男に翳し、魔法を唱えた。


『スパイダーロープ』【粘着ロープ】


 「パーン」と(てのひら)から光る蜘蛛の糸のような粘着糸が飛び出し、フード男とその回りの男達を巻き込んだ。


 一瞬の出来事に、遅れを取った周りの男達が、事態に気が付き志恩へ襲い掛かった。


 志恩は襲い掛かる男達の間をすり抜け壁際まで移動し、背中を壁に寄り掛かけると、素早く視界に見える男達の数を視認する。


「いち、にい、さん、よん・・・じういち、じゅうに。よしっ!」


 そして高らかに魔法を唱えた!


『ファイアーアロープラル』【火の矢多重攻撃】


 魔法の詠唱と同時に、志恩の周りの空間に複数の火の玉が浮かび、一斉に男達へと強襲した。


 魔法で作られた炎の玉が男達へ飛来し、命中した者は火に包まれながら吹き飛び、動けなくなる。


 志恩が、気が付くとフード男はいつの間にか1人だけ魔法の拘束から逃れ、距離を取って戦闘体勢に入っていた。


「くそガキ!先手を取られたが今度はこっちの番だ。死ね」

 そう言って、フード男は手に持った杖を志恩に(かざ)し唱えた。


『サンダーボルト』【雷球攻撃】

 

 フード男の杖から放たれた稲妻の光が志恩を襲う。


 志恩は相手の魔法を手で受けるように魔法で対抗する。


『アンチシールド』【魔法キャンセル】


 パシンッ


 稲妻は志恩の目の前で弾け飛んだ!


「なにっ!!俺のサンダーを防ぐかっ!」


「そろそろ諦めた方が、いいんじゃないか」


「ちっここまでのようだな」

 そう言って、パーカー男は近くにあった消火器を蹴り倒す。

 すると、消火器から白い粉が吹き出し辺りを白く染め、視界を奪う。


「不味いっ」


 ガチャッ


 扉が開く音がし、何人かの足音が。どうやら数人、外に逃げ出したみたいだ。


「このまま見逃す訳にはいかないんでね」

 志恩はそう言うと、窓のある壁に向かって手を翳し魔法を唱えた。


『エアーボム!』【空気爆弾】


 ドカーン!!


 窓もろとも壁が吹き飛び、大人が3人ほど通れそうな大穴が壁に空き、志恩はその壁の穴を通り外へ出る。


 ーーさっさと終わらせて帰らないと時間も不味な。もう遠慮して時間を掛けるのも得策じゃない。


 志恩は悠長に事を進める事を止め、大きな隣の屋敷へと逃げ走る車に向かって魔法を詠唱する。


『ファイアーボールプラル』


 大きな火の玉が複数現れ、走る車へと襲い掛かり、車の近くで炸裂する。


 車の周辺には、爆発で出来た大きなクレーターがいくつも出来、逃げる車を揺さぶる。そして最後には、爆風に巻き込まれた車が回転しながら吹き飛び、逆さまの状態で停止した。


 その頃、爆発の音を聞き付けて、隣の屋敷からはぞろぞろと危なそうな顔つきの大人や怪しいスーツの大人達が出てきた。


「なんだなんだ、だれや」


「どこかの組のカチコミか!」


「誰だこらぁー」


 出てきた男達は、手に多種多様な武器を持っており、「一杯いるな~」などと呑気に見てた志恩だったが、武器を構えて此方に威嚇をしてきたので、呑気にもしていられなくなった。


 どう見ても、普通に対処しても意味がないようだったので、遠慮せず、一気にけりを付ける様に行動をとる。




 それからは…


 志恩は自分の回りに強力なプロテクションの魔法を張り、敵の屋敷へと突撃する。


 相手からの弾を弾き返し、炎の壁で敵を囲み、巨大な雷撃と爆発で攻撃、建物を破壊していった。


 周りが静かになった時、建物は半壊しており、そこら中で呻き声を上げて倒れる男達が転がっていた。


 志恩はゆっくりと建物の2階へと上がり、正面の一番大きな扉の部屋へと入る。


 部屋の中には、埃まみれになりながら集まる、一見強面な大人達が偉そうに机で部屋の中を囲み、何人も集まっていた。


 その内の一番上座の席と思われる場所に座っていた、スーツ姿の男に歩みより、志恩は話掛けた。


「これ以上俺に関わると、次はこんなものでは終わらないぞ!損得考えて行動しておけ」


 そう言って、志恩はその場に背を向け扉に歩みを進める。すると、先程志恩が啖呵を切った男が、志恩に向かい叫んだ。


「お前は何者なん」


 志恩は後ろ向きのまま歩みを止めずに軽く手を振り。


「ただの高校生だよ」

 と言ってその場を出ていくのだった。





 クタクタになりながら、疲れ果て汚れた顔で帰る志恩。


「もうこんなことは、今回だけにしよう」


 そんな愚痴を口に出すが、異世界では毎日が戦いだった事を思い出し、改めてこちらの世界では平和に過ごそう…


 些細な願いを胸に刻みながら、家路へと急ぐ志恩であった。




次回からは、ちょっと平穏な?学生夏休みに入ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ