僕も男だ
今回はサブキャラの紹介です。
僕の名前は只野政夫、天体観測の好きな普通の高校生。
いつもクラスではのけ者の僕に、高校に入って友達が出来た。
いつも天体好きの友達しか出来ない僕に、クラスでも人気者の人達が僕の友達となったのだ。
最初は帰り道が一緒だったので何度か一緒に下校して、帰り道で僕が話す天体の話を楽しそうに聞いてくれていた。
周りのクラスメイトや僕自身もただの好奇心で一緒に居るだけで、その内飽きて離れていくのだろうと思っていた。だが、休みの日に遊ぼうと誘ってくれたのが驚きだった。
ある時、クラスの人達が僕と遊ぶのを止めてこっちで遊ぼうと友達に言ってきたとき、政夫は大切な友達だから、政夫を仲間に入れないなら俺も入らないと怒ってくれた。
そう、その兄妹は僕の事を大切な友達とみんなの前で言ってくれた。そんな気持ちを疑っていた自分が恥ずかしい。
今では何でも話せる、大切な友達である。
夏休み、みんなで海へ行ったとき、生まれて始めて人と喧嘩をした。喧嘩と言っても一方的に殴られただけでとても痛かったが、何かを守るために頑張った自分が誇らしく、それを認めて励ましてくれた友達の言葉が嬉しく思えた。喧嘩をしたとき、この人を守るためなら何でも頑張れると、その子の事を思うようになった。
しかし、その子は僕の大切な友達の事が好きである。いくら恋愛に縁のない僕でも見てればすぐに分かってしまう。だけど、その友達はその子の気持ちに気付いてないみたで、どんだけ鈍いのかと呆れるほどだ。
だけど、彼女が彼の事を好きになる気持ちは僕にも分かる。だって僕も男友達として、彼の事が好きなんだから。だからこそ、悔しくはないし逆に応援していいと思った。
夏休みの宿題は8月半ばを過ぎた頃には終わりかけていたが、2日分ほど残してあった。今日は8月最後の週、これから大好きな人達と夏休みの宿題を終らせに集まる予定である。
彼女の名前は有森柚木、内気な性格であまり自分から行動するタイプではない。
柚木とは正反対の性格なのが海堂静香、お転婆で思ったことをすぐ口にする、勝ち気なタイプである。
そんな二人が仲良くなった切っ掛けは、柚木がクラスの男子に筆箱を取られからかわれていた時、静香がその男子を殴り飛ばし筆箱を取り返したのが切っ掛けであった。
静香からすると、自分とは正反対の柚木は憧れの女子である。自分も女の子らしくしたいのだが、どうしても雑になり男っぽくなってしまうそうだ‥。
柚木からすれば、思ったことを回りを気にせずハッキリ言える静香が羨ましく、お互いに無いものを持っている同士だからこそ、馬が合い仲良くなれたのかもしれない。
そんな静香は剣道部で、中学から同じ剣道をしている佐藤猛と仲が良く、同じ剣道部の甲斐愛莉とも仲良しである。
柚木は最初、志恩と愛莉は仲が良すぎるので付き合っているのかと思っていたが、あとで兄妹と聞いて驚いた。だが、名字が一緒なので納得出来た。
志恩と愛莉の仲の良さに憧れを感じていて、それがいつしか恋心に変わったのは夏の頃である。
加藤貴司は昔からモテていた。スポーツが好きでテニスを中学からやっているが、運動神経が良くすぐに上手くなっていき、勉強も出来てスタイルも顔もいい!天は二物を与えるなどと言われていた。
貴司の家は女家族で、貴司は唯一の男子である。その為4人姉弟の3番目である貴司は、女性が苦手であった。
そんな貴司気持ちとは逆に、いつも女子生徒が貴司の周りにまとわりついていたので、いつしか貴司は話す事を止め、無口になり、友達を避けるようになっていった。
そんなとき、クラスでグループ研究をすることになった。
貴司は周りを避け誰とも組もうとしなかった。それを見た愛莉と静香が貴司を誘ったのだが、貴司はその誘いを断る。その時、愛莉と静香は貴司に向かい「ダサくてモテないからっていじけて一人で居るなよ、クラスメイトじゃないか」と怒鳴りつけた。
それを言われた貴司は「俺って格好悪い?」と聞き「そうだね、男としてはダサい根暗くんだね!だからモテないんでしょ」と二人に言い返されたとき、驚きと同時に嬉しくてたまらなかった。
その後、自分からお願いをして、愛莉達のグループに入れてもらうことにしたのだった。
彼女達は俺を外見ではなく、人として内面を見てくれる友達であると信じて。
9月も終わりに近付くと、体育祭の用意が始まる。
学年、クラスで出場競技を決めて代表者を選抜していく。
そして青空ヶ塔高校名物、二人三脚にクラスの空気が変わった。
毎年行われる体育祭の二人三脚は、各クラス全員参加であり得点も高い、だが一番の注目点はこの二人三脚でペアを組むと高い確率でカップルになると言われている伝統行事であった為である。
組み合わせは勿論くじ引きであり、生徒の目の色が変わり鋭くなるのは当然の流れであった。
志恩や愛莉、貴司などは馬鹿馬鹿しいと呆れかえっている。
さあ、運命のくじを引き当てろ…
「ねぇ知ってる?最近、この近くで女の子がよく拐われるんだって」
「えっ人さらい?」
「違うの、声を掛けて連れてくんだって」
「それって、ただのナンパじゃないの?」
「それがね、声を掛けた女の子は必ずお持ち帰りされちゃうんだって、でもその相手はそんなに格好いい訳でもなくて、催眠術にかかったかの様についてっちゃって、本人もなんでついて行ったのかわからないって」
「なんかヤバくなーい!」
まだ暑さも残る9月終わり、夕方の太陽も真夏に比べ少し暗くなる時間を早めてきた様に感じる。
放課後の教室、政夫は掃除当番を終えて帰り支度し、教室の窓から校庭を見下ろした。その時、目に入ったのは1人校門へと向かっていく柚木の姿である。
今日は1人で今から帰るのかな?追い掛ければ2人で帰れそうだな。政夫は足早に校門へと急ぐのだった。
政夫が柚木に追い付いたのは、校門から結構離れた場所だった。柚木の帰り道は何度か一緒に帰っているので、見失っても寄り道しなければ追い付くことが出来た。
柚木に追い付いたのは人気の少ない高架横で、その時、柚木はブレザーを着た3人の男子学生に声を掛けられていた。
3人の男子学生の内、体格はあまりよくないが偉そうにしている男、宮田雅彦17歳は近くの私立校に通う2年生である。
政夫は一瞬、躊躇ったがすぐに柚木の元へと駆け出した。志恩達と付き合うようになり勇気を持つことを体が覚えたのである。昔の自分からは考えられず、本人が1番驚いていることだろう。
「柚木さんっどうしたんですか」
政夫の声に4人が振り向いた。
男子3人は一瞬焦り顔で振り向いたが、政夫を見て顔つきを変えた。
「なんだお前、この子の知り合いか?」
「この子は俺達と遊びに行くんだ、お前は大人しく帰ってな」
そんな男子学生の言葉を無視して政夫は言葉を振り絞る。
「柚木さん、僕と帰ろう」
政夫が柚木に話し掛けたが、柚木は振り返り。
「私、この人と遊びに行くの~」
虚ろな表情で、柚木はそう言って男の腕にしがみついた。
「ほらっ分かったろ!この子が俺らに付いてくるっつってんだから、お前は帰って糞して寝ろっ」
「柚木さんどうしたの?変だよ!僕と帰ろう」
政夫は引き下がらず、柚木の手を取ろうと近付く。
しかし2人の学生が政夫の行く手を阻み、柚木との間に入る。
だか、政夫はめげずに2人の間をかき分け、柚木へと食らい付いこうとした。
「お前、この女の彼氏か?」
「違う、僕の大事な大事な友達だ!」
一瞬、柚木の眉が動いた気がし、政夫は更に叫んだ!
「柚木さん、僕と帰ろう。こんな奴等の言うことを聞く必要ないよっ」
だか柚木は、怯えたように宮田の後ろに隠れてしまった。
「おいっこいつうぜぇから、ちょっと遊んでやれ。俺はこの可愛い子ちゃんと先に行ってっからよ」
「オッケー」
そう言って、宮田と柚木は先へ歩いて行ってしまう。
残された政夫を、残った2人は胸ぐらを掴み殴り始める。
政夫はこの時考えた。今無理をしてやられてしまい、柚木を見失ってしまったら、柚木の身が危険にさらされてしまう。先程の柚木の言動は絶対に惜しい。なんとしても柚木の行方を確認しなければならない。
昔の自分だったら、こんな状況で冷静に考え事など出来なかっただろうと思い、ピンチな状況だったが少し可笑しく思えた。
政夫は二人の暴行に抵抗せずじっと耐え続け、二人が諦めるのを待った。
「なんだこいつ何にも出来ねえじゃねえか、つまんねぇ~もう動かねぇし行こうぜ」
二人が振り返らなくなるまで離れるのを確認すると、政夫は動き始めた。
二人の後を付ければ、必ず柚木の居場所を突き止められる。
そう信じて。
宮田は柚木を連れて、先程の場所から少し離れた場所にある一軒家に入っていった。裏路地にちょっと入った空き家で、外見はボロボロだったが中にはソファーや冷蔵庫など生活用品が少なからず用意してあった。
宮田はソファーに柚木を座らせると、ニヤニヤと舐め回す様に眺め、今日はこの子をどうやってもて遊ぼうかと楽しそうに考え始める。
政夫は体の痛みを我慢しながら、見付からないように後を追い、暫く付けていると、住宅街の人気の少ない場所で家と家との細い路地を抜け、一軒家のボロい家へと入っていった。内部を伺える窓から覗いて見ると、どう見ても空き家になっており、周りの家も同じような空き家が並んでいた。
奴等が入っていった家の外側を回り、リビングらしき大きな窓を見付けて覗いて見ると、先程の3人の内、1人がソファーに腰掛け2人がその後ろで立っている。そして柚木は、男達の前で棒立ち状態であった。
政夫はどうしようかと思ったその時、柚木は力無く笑うと自分のブラウスのボタンに手をかけ始めた。そして、スカーフを取りゆっくりとボタンを外してゆく。
気が付けば、柚木は上着を脱いで下着が露になっていた。
柚木さんはそんな子じゃないっ!
政夫は考えるよりも先に体が勝手に動いていた。
政夫は鍵の掛かっていないリビングの窓を開け、宮田らの前に飛び出し、柚木を庇うように自分の背中へと押しやった。
「おいおいおいおい!お前らなんでこいつがここに居るんだ?」
宮田が叫び、2人の男がソファーを回り込んで政夫の胸ぐらを掴み。
「なんだこの野郎!俺達をつけてやがったのか!」
政夫は必死に柚木に話し掛ける。
「柚木さん、しっかりしてください」
柚木は呆然と立ったままで、何の反応もない。
男達は政夫の顔目掛けてパンチを繰り出す。政夫はその拳を顔で受け止め耐えてみせ、相手の男にしがみついた。
「柚木さんにはこれ以上、手出しさせないっ」
掴まれた男は政夫の背中にパンチをして引き剥がそうとし、もう1人は政夫の横っ腹に拳を繰り出す。
次第に政夫は崩れていき、男達の足下へと倒れ込んだ。
宮田はソファーに座った体勢で、倒れた政夫の顔を覗き込むと。
「なんだお前、この女の子が好きなのか?必死だぞ」
そう言うと、指を鳴らし。
「そうだ、おいっお前らどっちか、こいつの前でその女ヤっちゃえよ」
「いいんすかっ!なんか燃えますね」
などと言い、じゃんけんを始めた。
政夫は口から血を垂らしながら叫ぶ。
「止めろー止めろー!柚木さんに手を出すなっ」
しかし、どんなにもがいても政夫の体を押さえ付けている男の手から、逃れることが出来ない。
宮田はニコニコ笑みを浮かべながら!
「止めろ~だってさ。さあ、柚木、その邪魔な物も全部脱いで、楽になっちゃおっか」
柚木は腕を後ろに回しホックを外す、柚木の小振りな張りのある胸が露になる。そしてスカートのチャックに手を掛けて床へと落とす。
宮田は声に出して笑いながら、
「良かったな~良いものが見れて、これからもっと楽しくなるぞ~」
政夫は目を伏せ震える声で呟いた。
「止めてくれ…助けてくれ…」
その時、柚木の頬に一筋の涙が流れた。
「宮田さんっ俺もう我慢出来ないっす」
「おうおう、好きにしなっ」
男は手を伸ばし、柚木の体に触れ…
ドバーン! バリーン!
台所に近いソファーの後ろの大きな窓が吹き飛んだ!
ガラス片は壁にめり込み、風圧と埃が全員を襲う。
宮田は埃に咳き込みながら狼狽える。
「なっなんだ、何が起きた?」
メリメリ、バリバリ
割れた硝子を踏みにじりながら、部屋へと歩を進める志恩。その目は怒りに満ちていた。
宮田は焦りを見せたが、フンッと気を持ち直し、
「おい、そのド派手な登場をする兄ちゃん捕まえな」
その言葉に、2人の男子学生は腕を回しながら志恩へと近付こうとした。が、次の一歩を踏み出す間も無く、志恩の伸ばされた腕に気付いた瞬間、1人はリビング入口の扉を突き破り玄関近くまで吹き飛び、もう1人はリビングの窓を突き破り庭へと落ちていった。
「ヒイッ」
宮田はたじろぐ、だが直ぐに悔し笑いをしながら。
「そうか、お前も同類かっ!だがな、先手必勝だっ」
『チャーム』【魅了】
宮田は勝ち誇り顔で立ち上がり。
「はっはっは、お前も相手が悪かったな!これからは俺の下僕にでもしてやるよっ」
志恩は表情を変えず、真顔のまま口を開いた。
「それで?」
「なっ!なぜ効かない」
驚きと困惑の表情になった宮田に志恩は言い放つ。
「お前程度の魔法が、俺に効く訳ないだろう」
宮田は歯軋りをして悔しがり、そして。
「どうやらお前は面倒な相手みたいだから、早目に片を付けた方がいいみたいだな。こっちの世界で人殺しにはなりたく無かったがしかたない!俺の最大級の魔法で死ねっ!」
そう言うと、志恩に向かって人差し指を突き出し呪文を唱える。
『ライトニングボルト』
宮田の指先が光った瞬間、光の雷光が一筋の線となって志恩へと迸る。
宮田は勝利の笑みで笑い始めようと…
雷光は志恩の体に当たる直前で花火の様に煌めき、四散して消えた。
透かさず、志恩は詠唱する。
『パラライズショック ストレング』【麻痺 強化】
「ぐあああぁぁぁっ」
「お前では俺の魔法は解けねえよ、当分そうやってな」
宮田は強力な麻痺魔法のせいで、白目を向いて倒れ、それを見届けてから、志恩は素早く政夫に駆け寄り、声を掛けた。
「頑張ったな、男だったぞ」
政夫は薄目を開きながら、か細い声で…
「さっさすが志恩くんだね、あっと言う間に奴等をやっつけたんだね、柚木さん守れたかな」
「ああ、柚木には指一本触れさせてないよ。政夫は安心して休め」
それを聞いて政夫は、か細く笑ながら気を失った。
志恩は柚木に服を[今度は間違いなく]着させ、二人に回復魔法を唱えると、柚木を政夫の膝の上に乗せ、葛城達の到着を待った。
普通の警官などに説明しても志恩の言うことなどは信じられないが、葛城なら志恩の言うことを全て信じて貰える。志恩は葛城に事情を話し自分や政夫達の事は居なかったことにしてもらい、宮田達を逮捕、連行してもらった。
柚木には催眠術で拐われた柚木を政夫が追い掛けて助けたと話し、政夫には遅れて到着した志恩が少し手助けした事にするよう伝えた。
政夫は否定しようとしたが、志恩が秘密を守る取引だからと伝え、政夫は全てを理解し頷いた。
「チャーム」の魔法は魅了、洗脳だが、術者の魔力が弱く対象が多少の抵抗力を持っていると、断片的にだが魔法に掛かっているときの記憶が残っている事がある。柚木にもその可能性があるか心配だったが、目を覚ました柚木は覚えて無いようだったので気にしなかったが、何度か俺を見る顔が赤らめていたのは気のせいだろう。
柚木は何度も政夫にお礼を言って3人は自宅へと帰っていった。
志恩は猛や静香達に今日のことを話し、みんなは政夫を称えた。
その後、学校では人拐いの噂も消え、平穏な日々に戻った。
宮田は反省して警察に協力すると約束して、余罪などを保留にしてもらったと言うことだが、その話は後程…
オフィスビルの高層階の一室。
「はぁはぁ…お前が裏切り者だったとはな…」
「正体がバレると、今後動きづらくなってしまうので、高坂さんには死んで貰いましょう」
「逃げ道は無いようだな」
「逃がしません」
高坂は既に身体中ボロボロであった。胸元から銃を取り出し。
「そんな物、僕に通じるとお思いですか?」
「さーな、やってみないとな」
高坂は窓際へ走り、相手はそれを呆れるように眺めたが次の行動に顔色を変えた。
高坂は窓際に走ったのではなく、窓に走ったのだ。窓に向けて全力で走ると窓に銃を向けて発砲、高層階の窓は頑丈に出来ているが、銃弾を何発も受けてしまえば脆くなり、高坂は窓に突っ込んだ。
「くそっ高坂の奴、自分の体をメッセージに使うとは、油断ならない相手だ。しょうがない、ここは手を引くしかないか」
ビルの下では、人の悲鳴が聞こえた。
次回、犯人を追え。




