生き残れ。
ちょっと遅れてますが、なんとか次で今回の事件を終わらせたいです。
「追い詰めたぞ!」
志恩の拳が相手の頬を捉える瞬間、相手は姿勢をずらし紙一重でパンチをかわた。
そのまま、志恩の腕を掴むと自分の体を捻り、志恩の腕に逆関節を決める。
志恩は膝をついて堪えていたが、力任せに仰向けに倒されてしまった。
相手は志恩の上に股がり…志恩の上に乗っかり、首をギュウギュウ…ほっぺをビヨビヨ…
重い…ほっぺが伸びる…
志恩の目が開かれると、そこにはドアップの愛莉が制服姿で志恩に股がりほっぺを引っ張っていた。
「わ、に、し、て、う、ん、だ」
「おはよ!遅刻しちゃうよ」
志恩は愛莉を乗せたまま跳ね起きた。その拍子に愛莉はベッドから転落、床に尻餅を突いて座り込む姿勢になった。
「もぉ~折角起こしてあげたのに、酷いんじゃない」
「もっと普通に起こしてくれよ」
「こっちの方が、昔っぽくていいでしょ」
「もう、高校生なんだし、愛莉も女性らしさを出したらどうだ?」
「あら、女っぽくなったって周りによく言われるんだからね」
「そうか、そうか、女っぽいんだったらいつまでもイチゴのパンツ見せてないで、俺に用意をさせてくれ」
愛莉は開きっぱなし脚を閉じ、顔を赤くして素早く立ち上がる。
「もおっ!知らない!置いてってやる」
愛莉は部屋のドアを賑やかに開閉して出て行くと、ドタドタと階段を降りて行った。
志恩は葛城達との行動で、夏休みの宿題がギリギリになってしまい、このところ寝ずに宿題を終わらせていた。夕べも寝たのは朝方で、ベッドにいつ入ったのか覚えていなかった。
愛莉のお陰で遅刻せずに起きれたが、眠気は取れず、目を擦りながら欠伸を繰り返し、学校へと向かって行った。
2学期が始まって直ぐは、部活動などは殆ど休みで、先生も生徒も夏休みの宿題の整理や勉強の予習に追われていて、それどころではないらしい。
結局、猛と静香は宿題が終わらず、放課後学校に残り、居残り学習をしている。
志恩はこの日も葛城達と会う予定となっていたのだが、愛莉が付いてくると言うことを聞かず、断るなら、たまに夜中出掛けている事を親父にチクると脅してきたので、仕方なく同行させる羽目になってしまった。
愛莉にとっては久しぶりの「カフェ・ムーン」で、扉を開けると、カランカランといつも通りの音色で来店コールが掛かった。
平日のランチ後と言うこともあって、店内はガランとしていた。奥の席には男性が二人座っており、愛莉にとっては間野刑事は初対面である。愛莉と間野の挨拶が終わると、葛城が今日呼んだ説明をしてきた。
「この前の議員爆破事件なんだけど、あれから色々事件が起きてね、間野刑事が志恩くんみたいな若い人の意見を聞きたいって言うもんだから、来てもらったんだよ」
「そうなんですね。僕の意見なんかで参考になるならいいですけど。 それで、何があったんですか?」
愛莉は隣で静かに相づちをうっていた。
「ここだけの秘密にして欲しいんだが、先日被害に合った議員が病院で治療をしていて、一昨日忽然と姿を消してしまってね。それを間野刑事と調査しているんだ」
「あっ私知ってます。大掛かりな武器で、吉田議員を白昼堂々と国会の前で攻撃して、何人も死傷者が出たって言うやつですよね?ずっとテレビでやってました!吉田議員って、まだ治療してたんですね」
志恩は愛莉の腕に手を起き、愛莉が喋るのを抑えると、葛城達へと質問した。
「失踪したなんて、テレビではやってなかったですが、それが事実なら、そんな秘密を話してまで何を自分に聞きたいんですか?」
間野が咳払いをすると、話始めた。
「そこなんだけど、吉田議員は結構危ない状態だったんだよ、それが急に居なくなったって事は、連れ去られたとしか思えず、今全力で手懸かりを追っているんだ。だが、なかなか足取りが掴めなく、現場の医師達は、治療の間に突然消えたとし言わないし、目撃情報も監視カメラ映像もなくてね。唯一聞けたのが、吉田議員と一緒に治療を受けて、重症だった秘書のお子さんだったんだが。5歳の子供が言うには、勇者達が現れてお母さんを助けたから、お母さんは無事に帰ってくるって言うんだよね。意味は分からないが、今回の事件も不可解な事ばかりだし、その勇者達が吉田議員と秘書を拐ったんじゃないかと僕は思ってて、志恩くんはどう思うか聞きたくてね。流石に僕の上司に、勇者が犯人ですとは報告出来なくて」
志恩は、病院側の口止めも上手くいってるのだなと、安心した。
志恩と葛城は、吉田議員を回復させた後、その場に居た医師と看護士を呼び、吉田議員の口から口止めするように約束させたのである。
最初医師達は、吉田議員を見て腰を抜かしていたが、本人の口から国家の一大機密だと言われ、口をつぐんだ。しかし、全てが終わったら、治療法を教えて欲しいとせがまれてしまったが。
まさか、5歳児の証言まで参考にするとは思ってもみなかったが、と志恩は驚いていた。
愛莉は少し笑いながら、
「勇者って、ファンタジーなお話ですね。でも、勇者は現代風に言うと、正義の味方なんですよね?そんな正義の味方が人を拐うって、変な話ですね」
「人が忽然と消えたって言うのも、魔法か何かの仕業なら、探すのは厳しいですね」
「そうなんだよ。もしも魔法や超能力なら、手の打ちようがなくってね」
「でも、5歳児の証言しかないって言うのも、捜査がたいふぇんはーぁ、すいません、大変ですね」
「志恩くん、寝不足かい?」
愛莉が頬を膨らませ、
「そうなんですよ、最近夜な夜な出掛けたりして、学校の宿題もギリギリだったし、大人から怒ってやってください」
葛城はばつが悪そうに、知らん顔していた。間野は、愛莉を見てから志恩に向き
「そうなのかい、志恩くん?まだ、高校1年なんだし、夜遊びは不良の始まりだよ。こんな可愛い妹さんがいるんだから、大切にしてあげないと」
志恩は、頭をかきながら、
「いやぁ~たまたま友達と用事が色々あって、まだ、夏休みだったもんですから」
結局、志恩もネットなど調べて調査に協力しますと言って、店を出た。
4人が店の外に出ると、少し先の十字路で上を向いて人だかりが出来ており、気になったので4人で向かって上を見上げると、そこには6階程のビルの屋上にアイドルが着ている様な赤いヒラヒラの服を着た女の子が立っていた。
志恩達は急いで屋上まで上がり、扉を開いた。
大型室外機と貯水槽しかない殺風景な屋上には、大人の胸辺りの高さで出来た柵で囲まれており、屋上の端の柵の向こう側に少女は立っていた。
遠くからサイレンの近付く音が聞こえ、時折吹く風に少女の体が揺れる。
葛城が少し近付き声を掛けたが、少女は近付いたら、飛び降りると叫んだ。
すると愛莉が優しい口調で話し始めた。
歳が近い女の子同士と言う事もあり、愛莉の会話に少女は話を始めた。
少女はアイドルを目指して高校も辞め毎日頑張っていたのだが、なかなか売れず苦労ばかりで挙げ句に最近ストーカーの様なファンに付きまとわられノイローゼになってしまい、死ねば楽に全て忘れられると思ったようだ。
愛莉はここに居るのは刑事でストーカーからは必ず守ると、葛城達に約束させ、死んだらアイドルの夢は本当に終わりだよと説得し、ゆっくりと少女の元へと歩み寄った。
そして、柵を乗り越え少女の手を握る。
志恩がホッとした瞬間、後ろの扉がバタンッと勢いよく開いた。下に到着した警察官が屋上に上がって来たのだ。
突然響いたその音に少女は驚き、そのタイミングでビル風が吹いた。
少女の体は外へと吸い寄せられ、手を握っていた愛莉の体も一緒に引き寄せられて行った!
不味い!志恩は走り込んだがどう見ても間に合いそうにない、志恩は頭の中で愛莉達を救える魔法を考え詠唱しようとした、その時!
柵を飛び越え、ウル○ラマンが空を飛ぶような格好で愛莉と少女の手を掴み、飛び越えた柵に足を引っ掛け、二人の落下を食い止めた間野の姿があった。
志恩と葛城は急いで間野の元へと行き、愛莉と少女を引き上げた。
少女は泣きじゃくり、愛莉は志恩に抱き付き、間野は腰を落としてホッとしていた。
「いやぁ~無事で良かったよ。愛莉ちゃんは大活躍だったし」
「いえ、私の方こそ助けてもらって、命の恩人です」
「そうですよ、間野刑事のお陰で愛莉が助かって、感謝してます」
「間野刑事、お手柄だな」
「いえいえ、無我夢中でしたよ。それと僕のことはもっと気安くヤスって呼んでくださいよ」
こうして、魔法を使うことなく事件を解決でき、志恩と愛莉は家へと帰って行った。
後日、葛城経由で間野から連絡があり、この前助けた少女と話をしたいのだが、少女が話しやすいように、愛莉を連れて来て欲しいとの事だった。
この話に愛莉は、喜んで協力すると言ってくれた。
今回は葛城がいないとの事だったので、いつもの待ち合わせ場所ではなく、秋葉原から近いファミレスで待ち合わせをした。
愛莉を連れて待ち合わせ場所に着くと、そこにはスーツの男性2人と落ち着いた格好の少女が待っていた。
スーツの男性の1人は間野刑事、もう1人は1課からの応援でちょっと怪しい目付きをした、市川浩史刑事。少女の名前は生田里奈16歳、高校を中退して、アルバイトをしながらアイドル活動をしている。
そこでの話は、里奈のストーカーに対する調査と愛莉から里奈への励ましや相談で終わった。
しかし、里奈の話が終わると、市川刑事から葛城や間野との詳しい関係や軽い吉田議員事件の話、志恩達の住んでいるところなど、6課の話や志恩の話をしてきた。
間野は志恩に、市川刑事は仕事熱心で融通が聞かない奴なんでごめんねと、最後に謝ってきた。
それから数日後、事件は起こった。
学校が終わり、自宅に帰った志恩の元へ1本の電話がなった。
「志恩くん不味い、今、吉田議員と襲われている。我々ではいつまで持つか分からない、至急救援に来てくれないか」
葛城からの電話である。
志恩は取るものも持たず、玄関を飛び出し、テレポートと飛行の魔法を駆使して、葛城の元へと急いだ。
玄関から飛び出した志恩を追って、愛莉も急いで飛び出したが、既に志恩の姿はそこにはなかった。
吉田議員が身を隠していた場所は、北関東の山間にあるロッジで、葛城の知り合いの別荘らしい。
志恩が駆け付けた時には、ロッジは黒い煙を上げており、葛城達の姿も犯人達の姿もなかった。
志恩は上空に上がり、辺りを見渡した。辺りは山と木々に覆われており、静まり返っていたが、一瞬数百メートル離れた場所で、何かが光ったように見えた。
静まり返った山の中を走る1台の車。
まだギリギリ夏のシーズンなので、たまに車とすれ違うが人気の少ない森の中である。
目的地のロッジが見えてきてホッとするが、車の後方や辺りを警戒するのは怠らない。
辺りを警戒しつつ、ロッジ扉の前へ行くとノックをする。
「お疲れ、変わりは?」
「お疲れ様です、変わりはないです」
葛城は、ロッジの中へと入った。
ロッジには食材等は豊富に備蓄しており、生活環境も整っている。秘書の長谷部は秘書であると同時に1児の母であり、生活する上での家事は完璧である。
吉田議員は不自由なく生活しており、代わる代わる葛城か三上が護衛で付いていた。
しかしその日、葛城は三上との交代で来たときから違和感を感じており、その予感は的中した。
葛城も素人ではない、長年の現場をこなしてきたプロであるにも関わらず、尾行されていたのだ。その時点で、敵は只者ではないのが図り知れた。
葛城は三上に合図すると、三上は議員達に用意をさせ、逃走の準備に取り掛かる。
数分と掛からず、銃撃戦が始まった。
表の車は既に破壊的されており、ロッジ裏の山道に逃げるしか手はない。
葛城達は普通に戦って勝ち目がないのは理解している。相手には、未知の力を持った相手がいるのだから、ここが知れたのも、多分そのせいだろう。
しかし、元を知らなければ、ここまでたどり着くことは出来ないはず、何らかの方法で、又は誰かの裏切りによって、葛城が吉田議員の居所を知る人物だと知られてしまったのだろう。
今は助けを呼ぶにしても、誰に助けを呼ぶのかとなってくる。唯一助かる可能性には、既に連絡はしてある、今は最後の可能性を信じて時間を稼ぐしかないのだ。
葛城達は山の中を走った。助けが来るまで生き延びる為にひた走る。日も暮れ初め、山の中は薄暗く
足下もハッキリしない。しかし今は、走るしかなかった。
足は泥だらけになり息も切れ切れ、だが、止まるわけにはいかない。三上は訓練された警官だが、長谷部はただの女性である。一番足手まといになり遅れているが、彼女を置いて逃げる訳にはいかない。葛城は長谷部秘書を三上は吉田議員の手を取り、山の中へと走り続けた。
大分走り続けた時、もうここまで走れば大丈夫だろうと、4人は足を止め乱れた息を整え始める。4人が少し安堵の表情を見せたその時、後方の木々の合間から叫び声が轟いた。
「見付けたぞ!」
後方からは議事堂で見た火の玉が飛来し、4人の近くに着弾する。着弾地点からは爆発が起こり、4人が吹き飛ばされ、長谷部と葛城は山道を転げ落ちる。
「三上!先に逃げろ、それがお前の仕事だ」
三上が吉田議員の手を引き、山道を登ろうとした、しかしその時、前方にいくつものライトが開間見える。
三上はその場の木の影に隠れ銃を構えた。
後方で轟く銃声と爆発音。
三上は、吉田議員を背中に隠し銃を握り締めながら死を覚悟した。
次回。間に合うか、助けられるか、犯人を逮捕せよ。
今回の事件が終われば、柔らかい話を入れたいです。




