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憂鬱な週末

 寝覚めは最悪だ。気持ち悪いし、だるいし、頭痛いし。当然だけど、こんな二日酔い初めて。なのに今日も会社行かなきゃいけないのか……。溜息しか出て来ない。

 昨日家にたどり着いてすぐ寝たので、シャワー浴びたい。食欲ないから朝ご飯はいらないや。母に凄い心配されたけど、会社に行くなとは言われなかった。

 両親は私のやる事に強く反対できないからな……。昔を思い出しかけて記憶に蓋をする。二日酔いで気分が悪いのに嫌な事思い出すのは辞めよう。


 会社に向かう途中で先輩からメールが届いた。


『駅近くサブウェイに集合』


 会社じゃなくて店で待ち合わせ? なんでもいいや。今考える気力ない。店に着くとすでに先輩は椅子に座ってた。具合悪そうにぐったりしてる。当然そうなるよね。テーブルにはサンドイッチと一緒にクッキーとパウンドケーキが並んでる。先輩らしいチョイスだけど、スイーツを前にして手をつけない辺りが重症だ。


「……おはよう」

「……おはようございます」


 お互い声に力がなくてどんよりしてる。乾いた笑みが浮かんだ。食欲ないし、飲み物だけでも頼みに行こうかな……としたら先輩に声をかけられた。


「二日酔いって、水分と糖分の不足らしい。俺の経験則的に、甘い物や炭水化物を食べた方が、二日酔いの治りが早いぞ」


 頼もしいアドバイスですが、それを実践しなきゃいけない状態に、二度となりたくない。仕方なくサンドイッチとジュースを頼む。サブウェイは野菜たっぷりヘルシーな感じで、味がさっぱりだから二日酔いの胃に優しそう。


 先輩の隣に座って沈黙。サンドイッチに手が伸びないし、しゃべる気力もない……というのはお互い様のようだ。


「……古谷が酒強くて助かった」


 ぽつりと先輩が呟く。私ものろのろと話に付合う。


「狩野さん……酷かったですね。いつもああなんですか?」

「あの人……酒は基本的に強いんだけど、熱燗は好きだから飲み過ぎてああなるんだよな。熱燗以外なら平気だから、今度から飲みに行く時は熱燗ない所頼めよ。俺が言うより古谷が言う方が狩野さんだって言う事聞くだろ」


 なるほど……だから店を指定された時点であんなに動揺してたんだ。


「どうして止めてくれなかったんですか?」

「古谷に説明するより、体験した方が理解できるだろ。狩野さんも一度やらかせば反省するだろうし」


 身を持って実感しました。今後絶対に狩野さんを熱燗のある店に連れていかせません。

 そんな風にぐだぐだしてたら狩野さんがやってきた。うわ……狩野さんも酷い。徹夜の時よりげんなりして、寝癖も取れてないし顔色も悪い。

 挨拶も力がない。酒が強くても一番沢山飲んでたし、あれだけ飲めばさすがに二日酔いは避けられないんだ。

 狩野さんも席について、やっと皆で食べ物に手をつけ始める。


「古谷さん……ほんと……ごめん」


 かつてない程にしょぼくれた狩野さんが私に謝ってきた。大丈夫ですとフォローする余裕もない。


「だいぶ飲ませちゃった……よね? 途中から記憶がないんだけど、領収書の金額が多かったからだいぶ飲んだんだな……と思って」

「覚えてないんですか? どれくらい?」


 項垂れながら首を傾げ、一生懸命思い出そうとしてるようだ。


「う……ん。古谷さんに、一口だけ、熱燗飲んでみたらって言ったのは覚えてる。その後、伊瀬谷君と飲んで……伊瀬谷君、昨日は寝てなかったよね?」


 そこからですか? 先輩思いっきり寝てたのにそれも覚えてないなんて。きちんと会計して領収書もらって、2人を支えながら足取りしっかりして、最後に私に出勤時間まで言う程だったのに、さっぱり覚えてないなんて……。

 酔っぱらいの生態は理解不能だ。


 それから三人でほとんど会話もなく、時間をかけて食事をして職場に向かった。そんな調子だからまったく仕事は捗らない。どんよりした空気の中でのろのろと仕事をして、それでも夕方頃には少しはマシになってきた。

 う……まだ仕事終わらない。でも……少しマシになってきたし、頑張れば今日中に仕事終わるかな……。


「やっぱり……二日酔いだと仕事にならないね。今日はもう帰ろうか」


 狩野さんがぽつりと呟く。体調的には同意したい所だが、この仕事……週明けでも間に合うかな?


「明日来てやればいいよ」


 うわ……日曜まで出勤? 今日頑張って残業して明日休みの方がいいのに……と思ったけど、反論できない。結局土曜日は夕方で仕事を切り上げて帰った。

 日曜日、二日酔いが治って、バリバリ仕事したら3時間で終わった。飲み会さえなければ休めたのに、今週は休み無しか……。どうせ二日酔いで使い物にならないなら、土曜日休みにして日曜だけ出勤にすればよかったのに、そんな判断力も無い程、狩野さんも酔ってたのかな?

 まだ明るい春の日差しの中、肩を落として家路についた。

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