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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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ファミレスにて◆出来損ないの早口言葉

「え?人間っていうのは……人類がってことですか?」


「ああ、人類が……かな。今みたいな人間はいつから地球にいるんだ?」


 何故、今この質問をしたのかはわからないが、下駄さんとの会話ではよくある事なので特に驚くことはない。


「ボクもよくは知らないですが、今の人間に近い人類が地球に登場するのは二十万年とか三十万年前くらいだったと思います」


 ボクがそう言うと下駄さんは天井を見上げ、口を尖らせては小刻みに何度もうんうんうんうんと頭を動かした後に、今度は首を傾げて「うーん」と唸ったかと思えば、再び頷いたりを幾度か繰り返した。


「じゃあ、人類が今の社会みたいに、仕事っていうのかな……いや、会社か、うん、いくつもの会社が連動して生活しているような社会が出来上がったのはいつだ?」


 会社に社会。出来損ないの早口言葉のようだが、なかなか難しい質問だ。

 日本に限ってみても会社というものが初めて設立されたのはいつだろうか。


「初めての会社ができたのがいつなのかはボクも知らないです」


「うん、まあ、そうか。俺も全く知らないけど、少なくとも一万年前くらいは皆んな自給自足に近い生活をしていたんじゃないか?」


「そうですね、多分、石器時代とかでしょうからそうだと思います」


「じゃあ人類が誕生して会社のある社会が出来上がるまでの十九万年間に生まれて死んでいった人達は、人の役に立つ仕事も会社もない世界にいたから幸せな人生じゃなかったということか?」


 暴論とまでは言わないが、かなりの極論だろう。


「自給自足にしても生きていくための仕事はあるでしょうし、それを全うしていくことが正しく生きるという事じゃないでしょうか」


 下駄さんは、うんうんと頷いてから小首を傾げる。


「じゃあ別に会社に勤めていなくても、生きていく為の糧を得ることを仕事と呼んでそれを全うしていれば正しい人生だというなら、それがパチプロだろうと医者だろうと関係ないという事じゃないか?」


 ふむ……そうか。いや、そうだろうか?

 人はこの世に生まれ、生きていく為に糧を得る。その目的を達成できるのなら手段は何でも良いのだろうか。


「その時代時代で手段は違っても人の為に役に立つ仕事をする事が幸せな事だと考えられないでしょうか。会社のない大昔なら自分の畑を立派にしていくことが夢であり幸福なことだという風に」


「うん、なるほど。要するに時代や環境によって夢や仕事というものが変化するのなら、それは絶対的に正しいものではないということだよな。つまりは受け取り側の問題だということにならないか」


 話がとんでもなくややこしい方向に進んでいる。

 ボクは整理する為に下駄さんの一つ一つの言葉の意味を考えてみる。

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