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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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ファミレスにて◆ハンバーグを八等分して

 和風ハンバーグのセットがボクたちのテーブルに到着した。

 大皿に大根おろしと紫蘇の乗せられたハンバーグ、付け合わせに人参グラッセとマッシュポテト、その横にコーンスープの入ったカップも並べられた。


 あまりお腹が空いていないということで、下駄さんの前には豚しゃぶサラダが盛り付けられた皿がひとつだけ置かれる。

 スープの代わりにいつものコーヒーも忘れてはいない。


 ハンバーグを八等分して、その一つ一つに均等に大根おろしを乗せて手前から順番に食べていく。

 ハンバーグを食べる時のボク流の作法だ。



「今日はゴン太君は来ないんですか」


「ああ、あいつは今日は妹の運転手しなきゃいけないとかで昼過ぎに帰ったよ」


「へえ、妹さんがいるんですね、ゴン太君」


 下駄さんは豚しゃぶサラダの豚を避けるようにして野菜にドレッシングをかける。


「今日はまたなんか聞きたいことでもあるんか?」


 いつも面倒なほど回りくどいところがある下駄さんが、珍しく自分から話を進めようとする。


「いや……まあ、そうですね。ボクが今、会社をお休みしている状態なのは話しましたよね。それで、まあ、この先、どうしたら良いのか色々考えてるっていうか……何をどうすれば正しいのかは何となくわかっているつもりなんですけど、具体的にどうしたら良いかわからないというか……」


「人生相談ってやつか?やりたい仕事が見つからないって言ってたよな」


 豚しゃぶ、レタス、プチトマトの順番にバーベキューのようにフォークに刺し、それを一気に口に入れてから、何かを考えていますというアピールなのか天井を眺めながらモグモグと咀嚼する。


 考えがまとまって喋り出すのを(ハンバーグ二切れ分)食べる間だけ待ったが、下駄さんは特に何も言いそうな雰囲気はなく、コーヒーを口に入れてはグチュグチュとうがいをしだしている。


 ボクは最後の一片のハンバーグを口に押し込むと、意を決して例の(聞きたかった)ことを聞く覚悟を決めた。



「ボクが仕事をお休みしてから一つわかったことがあるんです。それは人間は良い仕事をする為に生まれてきたんじゃないかということです」


「ふむ、良い仕事ってのはなんだ?」


「人の為になる仕事です」


「うん……なるほどね……人の為、か」


 言いながら下駄さんは微かに微笑んだ。


「それで、リュックは人の為になる良き仕事を探してるんだな?そこまではっきり目的が決まってるなら別に悩むこともないじゃないか」


 確かにそうだ。自分の考えを口に出してみたことで自分の進むべき道がはっきりしていることに気がついた。

 ボクはやりがいのある人の為になる仕事を探せば良いのだ。

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