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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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ファミレスにて◆期待値通りですって言えばいい

 ここ三日ほど下駄さんと話をする機会がなかった。


 いつものようにパチンコを打っていた時に勤め先の役所(休職中だが)から電話が入り、慌てて店の外に飛び出した。

 要件は、近いうちに近況報告に寄ってくれというものだった。


 役所の仕事を休んでから、ほとんどパチンコしかしていないので近況報告と言われても困るし、気まずいばかりなのだが無視するわけにもいかない。


 そろそろ退職を告げる時なのかもしれない。


 電話を切って店に戻ろうとしたところで、店の外のベンチに腰掛ける下駄さんを見つけた。


「下駄さん、休憩中ですか?」


 昼間とはいえ十一月ともなると日によってはかなり冷える。

 下駄さんはベンチの上で膝を抱えた状態でパーカーの裾で足をすっぽり包み込み、ダルマのようにちょこんと座って缶コーヒーを飲んでいた。


「おう、リュック、調子はどうだい」


「ここまでビックリするくらい期待値通りの収支ですよ」


 ボクが言うと下駄さんは嬉しそうにグフっと笑いながら


「期待値とか言い始めたとなるとリュックもパチプロとして半人前くらいにはなったんかな」


 と言ってもう一度グフフと笑った。


「お休みもらってる職場から近況を報告しろって電話がきてちょっと困りました」


「期待値通りですって言えばいい」


 一瞬、それが冗談なのかわからなかったが、下駄さんがすぐにハハハと笑ったのでボクもハハハと笑った。


 笑いながらボクは思い出していた。


 下駄さんはパチンコを打つことを仕事としていることをどう考えているのか。

 下駄さんの人生の目的というものが何なのか、聞いてみたい。


 乾いた落ち葉が冷たい風に運ばれて素早くボクと下駄さんの間を通り抜ける。


「下駄さん、今日の夜、飯食いに行きませんか?」


 ボクが目指すべき生き方とはまったく違う人生を歩んでいる下駄さんが、自分の人生についてどう考えているのか、とても興味がある。


 下駄さんは何かを考えるように空を見上げて「んー」と唸ってから「おう、行こうか」と言った後、何に対してかわからない相槌を「うん、うん」と二度打った。


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