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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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溶けた氷の膜が水分となって

 風呂からあがって随分前に買ってあった氷菓子を冷凍庫から取り出す。

 練乳がかかった氷の上にフルーツが乗っているシロクマタイプの氷菓子だ。


 先日カレーを食べた時に使った後、水につけたままになっていたスプーンを軽くすすいだものを持ってリビングのちゃぶ台の前に座る。


 氷菓子は冷凍庫から出してすぐは硬くて食べられないので、ちゃぶ台の上に放置してテレビをつける。



 ボクは自分の人生の中で本当に愛するものを見つけられるのだろうか?


 どちらにしても、それはやはり仕事としてというものになるのだろう。

 心から愛するものを仕事としてやれることが理想なのは考えるまでもない。


 自分のやりたいものを見つける旅に出てから『人の役に立つ仕事を出来ること』こそが幸せなのだと学んだ。

 そして、今はその仕事が自分の愛するものであることが究極の幸せなのだと思い始めている。


 人生とはそれを見つける旅なのだ。


 氷菓子を手に取り、スプーンを押し付けて硬さを確かめる。

 フルーツは表面が柔らかくなり溶けた氷の膜が水分となってキラキラと光っている。



 下駄さんはパチンコを打つことを仕事としている。

 こう言うのは少し申し訳ない気もするが、その仕事は人の役に立つ仕事ではない。

 パチンコをどれだけ打って稼いだとしても誰も喜びはしないだろう。


 下駄さんは人生を、生きる目的のようなものをどう考えているのだろう?


 大好きなパチンコを仕事としてやれているのはとても幸せなことなのかもしれない。

 でも、それは自分だけの世界だ。誰にも何も与えていない。

 つまりそれは仕事ですらないのかもしれない。


 パチプロというものが仕事ではないんだとしたら、下駄さん達はボクが辿り着いた『人生=人の役に立つ仕事をする』という答えから外れた人間ということになる。


 下駄さんはそのことに対してどんな考えを持って生きているのだろう?


 幸せだろうか。自ら選んだその人生に満足しているだろうか。

 そんなことを聞けば下駄さんは怒るかもしれない。でも、ボクは聞いてみたい。

 それはボクが自分で出した答えに自信がないせいなのかもしれない。

『ああ、お前は正しいよ』誰かにそう言ってもらいたいのかもしれない。


 フルーツが溶けるのを待っている間に、氷部分の大半が溶けてしまった氷菓子を味噌汁を啜るようにして飲んだ。

 テレビでは昭和の懐メロ特集をやっていて聞いたこともない歌を見たこともない歌手が歌っている。


 ずっと繰り返しだ。

 ボクは何故生きて、何故ここにいるのだろう。

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