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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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ピンと来ない。

 アタッカーに玉が入りにくい釘調整で出玉を少なく設定している台がある。

 

「一日に得られる大当たり回数は平均すると20回ほどなので、出玉が1回50個少ない場合は通常よりも一日千個ほど損をしていることになる。玉千個は等価で言えば四千円、ビッグキャッスルなら三千三百円損をしているということだ。これだけで一ヶ月でいうと約八万円になる」

 

 どんなに細かい話でも、やはり一か月にすると見過ごせない金額になる。いや、むしろ日々にすると細かいことであるが故に普通の人は軽視してしまい勝つチャンスを逃しているのだろう。

 

「ちりも積もれば山となるですね」

 

 ボクとしては極めて平凡ではありながら的確な合いの手を打ったつもりだが、下駄さんは特に聞いている様子もなく一貫目のイクラを口の中に入れて高速でかみ砕くとゴクンと飲み込んだ。

 

「リュックが打った439番台は今の例えと同じように一回の大当たりで得られる出玉が通常よりも50個ほど少ない台なんだ。それでも保三止めなどを駆使して千円23回程まわせば勝てる台なんだが、21回しか回せないのであれば負ける台になってしまう。俺が439番台が千円21回しか回らない台ならリュックに勧めないと言ったのはそういうことだ」

 

 なるほど、439番台は出玉を削られていて、尚且つ回転率を上げることもできないボクが打てば負ける台になるということだ。持ち玉比率と同じく、同じ機種でも打ち方一つで大きく結果が変わってしまうということか。

 

「そういうことなんですね、理解しました」

 

 理解した故に、悲しいかな、今のボクの実力で勝てる台を見つけるのは困難だということがわかってしまった。

 

「だが、そんなリュックでも、出玉を削られた分を打ち方で少し補うことはできる」

 

 ボクはその言葉に思わず『よっ!待ってました!』と叫びそうになる。

 下駄さんの口からはいつもボクの立ち回りの問題点の解決策が次々と面白いように出てくるのだ。

 

「大当たり出玉を削られているというのは玉がアタッカーに入り辛くされている状態だ。それはもう変えられない事実であり、対策のしようはあまりない。でも、削られた玉を別のところで取り戻すことは出来るんだ」


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