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銀の放物線  作者: 加藤あまのすけ
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この上ないドヤ顔での最上級の『なっ』

 

「千円あたりの回転数が1回転違えば、一日にすると(機種にもよるが)五千円程収支が変わる場合が多い。一日五千円違えば一ヶ月二十五日打つとしたら合計十二万五千円も収支が違ってくるということだ」

 

 一ヶ月で十二万円。千円打つ間にたった十五個の玉を無駄にしただけで一ヶ月十二万円も失っているということなのか。


 下駄さんは事も無げに話したが、ボクにしてみれば衝撃的な事実である。

 

「パチプロはそういった目の前にある玉を一発たりとも無駄にしない。その小さな積み重ねで飯を食っていることを知っているからだ……なっ」

 

 ついにこの上ないドヤ顔での最上級の『なっ』が飛び出した。

 いや、もうこれは飛び出すべくして飛び出したというか、飛び出すべきだという要望の元に飛び出した『なっ』だと言っていい。


 ボクはその神々しいほどの『なっ』を全身に染み込ませるように受け止めた。

 

「保三止めというのは保留が三個になったら打つのをやめて、デジタルが止まり、保留が二個以下になるのを待ってから再び打ち始める方法なんだ」


「保留は四個まで貯まるのに、何故、三個で止めてしまうんですか?」


「うん、もし保留が四個貯まった瞬間、即座に打ち出しを止めたとしても盤面にはすでに打ち出されてしまった玉が四、五個残っているのはわかるよな?」


 パチンコ玉はハンドルを握っている限り次々と打ち出されるので盤面には常にいくつかの玉が舞い踊っている状態である。


「確かにそうですね」


「その残った玉もスタートチャッカーに入ったとしても意味がないから無駄玉になる。だが保留三で止めていれば残っている玉が仮にスタートチャッカーに入っても四個目として貯蓄されるって寸法だ」


 なるほど、これはさらに細かい話だが、聞くまでもなくこれも一ヶ月も積み重なると数万円の違いになるのだろう。


 デジタルが揃うかどうかばかりに気を取られて玉を打つということは適当にやっていた自分がどれほど甘かったか思い知らされる。


 パチンコは店が勝つように出来ている。それを覆すにはそれ相応の努力が必要だということなのだ。





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