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放課後特別授業  作者: sorairo
9/9

お礼とご褒美

「あ、来た」

「もう! 優愛遅い!」

「ごめん、テストが終わったから早起きしなくていいと思ったら寝坊しちゃった」

「早く、掲示板見に行くよ!」

優愛は少し息が上がっていたが、璃菜に腕を引っ張られて掲示板に向かった。そのあとを咲が駆け足でついて行った。

「うわ~。チョー混んでる」

掲示板の前にはたくさんの人でにぎわっていた。すると誰かが、優愛のことに気付いた。

「あれ、高橋さんでしょ」

「今回、あの陽翔くんに勉強を教えてもらったって言ってたよ」

「だから期末はあの結果なんだ」

「それでも、あの点数取るってさすがだね」

掲示板の前にいた人たちが優愛のことでひそひそと何かを話し始めた。

「ちょっと。前通して」

咲が人混みの中、先頭を切って進んでいった。

「あ、待って咲」

「えっ! 2人とも待ってよ」

優愛は2人に遅れないように慌てて前に進んだ。優愛が掲示板の目の前に着いた時、咲と璃菜は固まっていた。優愛は各クラスの平均点が載っている掲示を見た。

「5組の平均点、クラス1位だったね! これで、陽翔が旭くんに責められなくて済む。よかったぁ~」

「いや。優愛。そっちじゃないよ!」

「こっち、見て」

咲が指さす方には学年上位20名の名前が載っており、1位に朝永陽翔の名前が載っていた。その隣には点数も掲載されており、そこには……

「794点!?」

優愛の頭は少しパニックになった。

「え、だって、1教科100点で……」

「全部で8教科だよ! しかも、今回は優愛に勉強も教えていたのに」

「6点しか落としていないということは、少なくても2教科は満点ってことだね」

3人は改めて朝永陽翔の頭の良さを思い知らされた。


***


 昼休みになり、優愛は陽翔を捜しに行った。普段から教室で昼ご飯を食べない陽翔を捜すのは少し手間がかかった。

「あ、いた」

優愛が屋上の扉を開けると、屋上の柵に手をかけて購買で買ったメロンパンを食べている陽翔の姿があった。

「赤点、無かったらしいじゃん」

「うん! 全部陽翔のおかげだよ!」

「まぁ、1か月半も教えてあげて赤点取られたらこっちが困るし」

「そんな言い方ないじゃん! もう、素直じゃないんだから」

優愛は、1度もこちらを見ない陽翔が持っているメロンパンを取り上げた。

「あ」

急に取られて驚いた陽翔は呆然と優愛を見つめた。

「だから、1か月半のお礼させて。何でもいいよ」

そう言いながら取り上げたメロンパンを陽翔に返した。

「じゃあさ、俺と付き合って」

「え?」

優愛は予想もしていなかった答えにとても戸惑った。

「か、からかわないでよ」

陽翔の肩を軽く押しながら怒ったが、その腕を陽翔に取られてしまった。

「本気で言ってんだけど」

「うそ……」

「俺と付き合うの嫌?」

「……嫌、じゃない、けど――」

優愛はその続きを言うのにためらった。

「けど、何?」

「こういう時になんて答えたらいいのか分からなくて……。告白されたの初めてだし」

「優愛も、素直じゃねーな」

陽翔は笑いながらデコピンをしてきた。

「ちょっと! 痛いじゃん」

そう言うと優愛も陽翔にデコピンをした。

「痛っ!」

「仕返し」

優愛は太陽のようなまぶしいくらいに笑っていた。

「あ、そういえば、ご褒美何が欲しいんだよ」

「考えてなかった」

「なんだよ。考えてるのかと思ってた」

「じゃあ、今欲しいもの」

「何?」

1、2歩近づいてきた優愛は陽翔のネクタイを引っ張って顔を近づけた。そして、優愛はそのまま陽翔にキスをした。何が起こったのか分からないくらい一瞬の出来事だった。陽翔はただ何も言うことが出来なかった。その時、2人しかいない屋上にある音が鳴った。

「わ、私まだご飯まだだったから」

優愛は顔を真っ赤にしてうつむきながら言った。

「これ、あげる」

陽翔は鞄からパンを取り出し、それを優愛に向かって投げた。

「投げないでよ。って、メロンパンじゃん」

それはさっきから陽翔が食べていたメロンパンだった。

「陽翔、メロンパン好きなんだね」

「美味いじゃん」

「うん。メロンパン、私も好きだよ」

優愛は嬉しそうに言った。

「じゃあ、私、そろそろ教室に戻るね」

優愛は屋上のドアを開けて帰ろうとしたが、くるっと陽翔の方に振り返った。

「明日、一緒にご飯食べてもいい?」

「あ、いいけど」

「じゃあ、お弁当作ってあげる。だから、陽翔はメロンパン買ってきてね」

陽翔からもらったメロンパンを振りながら楽しそうにそう言うと、優愛は颯爽と教室に戻って行った。陽翔は食べかけのメロンパンを食べようとした。その時、何気なく制服のポケットに手を入れた。すると、1枚の紙きれが入っていた。

「“陽翔、ありがとう。大好きです。”」


***


「優愛、帰ってきた」

「もう、遅いよ~」

「ごめんね」

「何? このメロンパン」

璃菜が優愛の持っているメロンパンを指さした。

「あ、これ? もらったの」

優愛は満面の笑みで2人に答えた。


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