今日から始まる放課後特別授業
今日から本格的に陽翔による授業が始まった。中間テストも終わったばかりなので期末テストまでは約2か月ある。しかし、陽翔は正直足りないとまで思っていた。
「まず、数学の復習からな」
「うん!」
「じゃあ、このページの問題解いて」
「えーっと……。1問目から分からないんだけど」
「は? この問題基礎中の基礎の問題なんだけど」
「えっ! そうなの!?」
「あぁー。もう教えてやるよ」
結局、陽翔が予定していた問題の3分の1しか進むことができなかった。
「このままだと期末テストでまた赤点取るぞ」
「そんな……。陽翔見捨てないでよ!」
「だから、宿題な」
「えぇー。学校だけじゃなくて陽翔からも宿題が出るのぉ~」
「俺がさっき教えたところと似た問題だから解けるだろ」
「う、うん」
「じゃ、おつかれ」
「うん。また明日ね」
優愛は小さく手を振った。陽翔は振り返ることなく教室を出て行った。
***
陽翔から勉強を教えてもらうようになってから1週間が経った。優愛が陽翔に勉強を教えてもらっているという話はこのころには2年生と先生のほぼ全員が知っていた。
「優愛、勉強どう?」
「咲、それがなかなかいい感じなんだよぉ~」
優愛は満面の笑みを浮かべていた。
「優愛、調子乗るな。やっと基礎ができただけだろ」
「あ、陽翔おはよ。でも、できてることは事実じゃん! もっと、褒めてくれてもいいんだけどなぁ~。私、褒めて伸びるタイプだからね!」
「褒めたら調子に乗るタイプだろ。そんなにできるようになったんだったら、今日から問題数増やすぞ」
「え、それはダメ!」
「なになに? 普段朝永くんと優愛が話してるの珍しいね」
璃菜がかばんを持ったまま優愛たちのところにやって来た。
「優愛が少し調子乗ったら、たまたま朝永くんが来て注意されてたの」
「咲まで調子乗ってるって思ってたの?」
「あ、ごめん、ごめん。」
「そんなに成果があるなら、私も朝永くんに教えてもらおうかな~」
「俺はこいつで手いっぱいだ」
陽翔はポンと優愛の頭に手をのっけた。
「いいじゃん。1人や2人変わらないよ」
「優愛で2人分のようなものだし」
「いいよ、いいよ。朝永くんの負担増やしたくないし。私には、咲がいるから。ね?」
「もちろんだよ。分からないところあったら教えるよ」
咲は、璃菜が一瞬見せた悲しそうな表情が目に焼き付いて頭から離れなかった。