中間テストが生んだ危機
「優愛、おはよ~」
「おはよう、璃菜」
「おはよう。優愛、今日で最後だけど大丈夫?」
「おはよう咲。全然大丈夫じゃないよ……。昨日の教科も絶対赤点だよ」
「今日の教科は比較的に優愛が得意な教科じゃないの?」
「まぁ、そうだけど……」
「でも、今日の中間テストが終われば部活再開だよ!」
「そうだね、璃菜! 私にはバスケが待っている!」
「なら、とりあえず今日のテストで赤点取らないようにね」
「はい……」
そして2年になって最初の中間テストも残り1教科になった。そのテストもあと50分もすれば終わりを告げる。
「はい、時間になったから後ろから解答用紙を回収してください」
優愛は解答用紙を集めに来た男子に手渡した。
「やっと終わったね~」
璃菜は嬉しそうに優愛と咲に言った。
「テスト、どうだった?」
「咲、どうしよう。赤点かも」
「優愛、中間テストだけで赤点何個になるの?」
「赤点取りすぎたら部活停止になっちゃうじゃん! 優愛がいないと次の試合やばいよ!」
「結果出るの明日だよね? どうしよう。今日の放課後が最後の部活になっちゃうかも……」
中間テストは午前中で終わり、大会の予選が近いバスケットボール部は午後から部活だった。昼ご飯を食べ、優愛と璃菜は部活に向かった。
***
翌日。終わったばかりの中間テストの結果が廊下の掲示板に張り出された。優愛が通う星ヶ丘高校ではテストの成績上位20名が掲示板に張り出されることになっていた。掲示板の周りにはたくさんの生徒たちが集まっていた。その中でも注目を集めている生徒が2人いた。
「陽翔くん、また1位だね」
「さすが陽翔だな」
「旭くんもまた2位だよ」
「この2人はいつもダントツだからな」
優愛の学年は1年生のころから1位が朝永陽翔、2位が旭慎吾で変わることがなかった。そして、今回のテストもこの2人が3位に大きく差をつけて1位、2位に輝いていた。しかし、1年生の時と違うところが1つだけあった。
「くそっ! また陽翔のやつ1位かよ」
悔しがっているのは今回も僅差で負けた2位の旭だった。
「でも旭、クラスの平均点見てみろよ」
「え!? 陽翔のクラス最下位じゃん」
今まで陽翔がいたクラスは平均点も高く、クラス全体で1位になっていた。しかし今回はなぜか最下位だった。そのことは旭たちだけでなくみんなが驚いた。その時、誰かが小さな声でひそひそと言い出した。
「優愛ちゃんって何組だっけ?」
「たしか、陽翔くんと同じクラスじゃなかった?」
「優愛ちゃんが平均点下げたんじゃない?」
そうささやかれている中、優愛と璃菜、咲の3人が成績を見にやってきた。
「咲の名前載ってるよ!」
「ほんとだ! さすが咲~」
「今回は得意な分野だったから、たまたまだよ」
3人が話しているところに知らない男子が数人やってきた。
「ねぇ、5組の人たちだよね? 高橋さんって知ってる?」
「わ、私だけど……?」
「あ、キミが高橋さん? 今回のテストどうだった?」
「え、なんでそんなこと聞くの?」
「いや、いつも陽翔のクラスは平均点で1位なのに、今回は最下位だからさ。その平均点を下げた高橋さんって人が気になっちゃって」
「え!? 私たちのクラスが最下位なの!?」
璃菜はその男子生徒から聞いたことにとても驚いた。
「そのまえに、あなた誰ですか?」
「あ、ごめん、ごめん。俺、3組の旭慎吾。キミは掛野咲ちゃんでしょ? 学年20位以内に入るくらいなら高橋さんに勉強教えてあげればいいのに」
「やっぱり、私のせいだよね……」
「陽翔プライド高いから怒ってるんじゃないか」
旭が優愛に嫌味を言っていると、そこに男子生徒が一人やってきた。
「別に、怒ってねーけど」
旭を睨みつけながら言ったのは陽翔だった。
「朝永くん……」
「別にクラスの平均点とか考えてないし。そもそも順位とか意識してない」
「なに? 1位の余裕ってやつ?」
「でも――」
そのとき陽翔は少し優愛を見た。
「そんなに競いたいなら次のテストでクラスでも1位になってやるよ」
「は?」
「俺がこいつに勉強を教えてクラスの平均点を上げればいい話だろ」
「え!?」
優愛は陽翔が今何を言ったのか分からなかった。思わず声を上げてしまった。
「いくらお前が頭良くても高橋さんってかなりやばいぞ。先生たちでも成績が上がらなかったらしいぜ」
「ちょっと! 今のひどくない」
璃菜が旭の言ったことを注意した。でも、そんなことはお構いなく話は進んでいった。そんな中、当の本人である優愛は話についていけず慌てて二人の話を遮った。
「2人で勝手に話進めないでよ。私、朝永くんに勉強教えてもらわなくても大丈夫だから!」
「よくあの結果で大丈夫って言えるな」
「朝永くん、私の結果知ってるの!?」
「テストの回収の時に解答用紙があんなに白紙ならわかるでしょ。しかも、このままだったら部活動停止になるかもしれないんだろ?」
「うん……」
本当のことを言われた優愛は陽翔に言い返すことができなかった。優愛が黙っていると校内中に朝のSHRの開始を告げるチャイムが鳴った。チャイムが鳴ると今まで掲示板の前にいたたくさんの生徒たちが一斉に教室に戻っていった。残ったのは旭と陽翔、そして、優愛たちの女子3人だけだった。
「まあ、陽翔がそんなに言うならその勝負受けてやってもいいけど。でも、高橋さん、なめないほうがいいぞ」
そう言って旭は3組の教室に戻っていった。そして、陽翔も教室に戻ろうとしたところを優愛が引き留めた。
「朝永くん、――」
「冗談だから気にすんなよ。旭が調子に乗ってるのにイラついただけだから。俺、順位とかどうでもいいし」
「あ、うん」
優愛に一方的に話して陽翔は教室に向かった。
「冗談って言ってるんだし、このまま放っておこうよ」
「そうだよ、優愛。勉強なら私が教えてあげるから」
「璃菜、咲、ありがとう」
そして3人も掲示板から離れ、教室に向かった。
***
朝から昨日の中間テストの結果でクラス中も盛り上がっていた。そこでも話題に上がったのは陽翔のいる5組が最下位になったことだった。でも、5組のみんなも優愛に気を遣って他のクラスよりは触れなかった。
そして、帰りのSHRも終わり優愛と璃菜は部活に向かおうとしていた。その時、担任の先生が優愛を呼び出した。
「高橋さん、ちょっといい?」
「はい」
そして、先生から告げられたのは優愛にとってとてもつらいものだった。