初々しさはどうやるの?byのり
奈々ののろけ話をジョッキ片手に聞いている。
うらやましいな。奈々は守君との新婚生活を楽しんでいるみたい。
それにしてもまさか、あのまま結婚までこぎつけるとは思わなかったわ。そこそこの美男美女が、あの時から脇目もふらずに結婚なんて。二人とも意外なほど奥手なのよね。
それに引き換え私ときたら。妻子もちだって知らずに不倫してたなんてね。私だってオトコに縁がなかったわけではない。自分で言うのもなんだけど、そこそこモテてきたほうよ。なのに、ねー。
「そろそろ子供がほしいとか?」
「それだったら、もう、その…、アレ、つけてないし…。」
赤くなって口ごもる奈々はいつまでも初々しい。同性ながら、かわいくなっちゃうわ。
「そうなんだ?じゃあ、なんだろうね。」
「わからないから、のりに相談してるの。のりは恋愛の大先輩だもの。」
「そ、そうね。」
確かに私のほうが場数ふんでるから、先輩よね。先輩なのに先を越されちゃったわ。しかし、奈々に聞きたいことだってあるわ。
「相手を結婚に踏み切らせるコツとか、キッカケって何?」
「知らな~い!だってある日突然『ハネムーンでディズニーランドどう思う?』とか『二世帯と別棟どっちがいい?』とか言い出したんだもん。」
「その“ある日突然”の理由が知りたいの!私が奈々に相談してるの!」
「相談されてもなぁ…。ずっと守と一緒にいたいと思っていたら、こうなっただけだよ。それにしても、のり!守の考えていること、わからないよ~。」
「やっぱりさあ、“アタシをあ・げ・る”ってヤツ、やってみたら?下着はそうね。奈々は真っ赤よりももっとかわいい色のほうがいいかも。」
「やあよ。そんな大胆なこと!」
奈々は酔いと照れで真っ赤になってる。かわいいんだから。もう。…てことは、私にはこういうかわいさがないってことかしら。少なからず、相手の前でオナラしないとか、鼻をかまないとか、食べるときに音を立てないとか、そんなことは守ってるわよ。いやいや。かわいらしさは、そんなマナー的なことじゃないわね。
「奈々こそ、そのかわいらしさ、どうやってキープしてんのよ?いつまでも初々しくて、可愛いんだからぁ~。」
「んもー。のりったら、酔っ払ってるでしょ~。」
酔っ払って、お互いに答えの出ない相談をしている私たち。いいなあ。奈々は。
守君、何を奈々に求めているのか気になるけどね。