お目覚めのナントカ。 by奈々
「何がしたいのかしら?ったく。」
「元気そうね。うらやましいわ。」
のりがクスクスと笑う。
仕事の後、のりと洋風居酒屋に来ているのだ。
今朝の守の行動がわけがわからないと話したところ、のりにうらやましがられた。うらやましいもなにも、意味不明だっつーの。守の要求がわからないだけに、どうしたらいいのか、悩んでいるのに。
「んもー。何笑ってんのよー?のりにはわかるわけ?」
「もしかして、エッチの方は…?」
「ちゃんとしてますってば!昨夜もしたんだから!」
思わず大きな声が出てしまって店内が一瞬でシーンとする。
「ちょっと、声でかいよ。」
「…あ。」
恥ずかし…。
「あ。そっか。」
「何ナニ?」
のりがニヤリとして言った。
「まさか裸にエプロン姿がご希望なのでは?」
はあ?のりってばなんてことを言うの?
「まさか、そんなことしたこと有るわけ?てか、求められたらソレ、やるわけ?」
「まっさかー!」
グイッと生ビールを飲んでカラカラと笑うのりを見てホッとした。そんなこと、やりたくないわよ。
「あ。でも…。」
また一口ゴクリとやって口を開いた。
「あれならやったことあるわよ。“アタシをあ・げ・る”ってヤツ。バレンタインデーに、ホテルに泊まったときにね。赤いブラとパンティ姿で真っ赤なバラを口にくわえてね。当時の彼、大喜びで、すごくエッチが盛り上がったわね。」
ひええ。恋愛の大先輩だけのことはあるわ。美人なだけにさぞかし妖艶なお姿だったでしょうよ。
しかし、私がソレをやるわけ?守が喜ぶ?そのために真っ赤なブラとパンティと、バラですって〜?
「私がやったら三流コントだよー!」
「あはは!それもそうね。」
思わず爆笑して言うと、のりも一緒に爆笑した。酔いが回っているだけに笑い出すと止まらない。人目をはばかることも忘れて笑う。
笑いすぎて涙がにじんできた時にスマホの着メロが聞こえてきた。噂をすれば守から。
「どうしたんだろ?」
涙を拭いながら画面を開く。
「はい…なに…?」」
『直人でーす!奈々ちゃんお久しぶり〜。守から伝言でーす!朝はお目覚めのキ…『おい、やめろよ!』…いいじゃん!あ。ごめんね。お目覚めの…『コラやめろ!』キ…。』
守と直人がもみ合う様子が聞こえたかと思うと、慌ただしく切られてしまった。
「どうしたの?」
「もみあってた。『お目覚めのナントカ』ってなんだろ?」