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ずっと変わらない。by奈々

挙式、披露宴とつつがなく済ませ、一旦帰宅。着替えを済ませたら夫婦で二次会に参加するのだ。桃菜は階下したにお預かりで。なにせ階下したは義弟を含めて、「いつでも言いなさい。」と両手を広げてお預かりを待ち構えているので、買い物や美容院の時にとても助かっている。今日も「二人で楽しんできたら?」なんて申し出てもらえたのでお願いしないテはない。桃菜としてもVIP待遇をしてもらえるので「ママと一緒がいい〜!」などと言うこともなく。そんなわけで桃菜は帰るなり一人で階下したに行ってしまったくらいだ。


「早く出て、茶でも飲まねえ?」

「ホント?」

守からのデートの誘いに心が弾む。


守が案内してくれたのは、会場近くのカフェ。夕方のカフェの空気が心地よい。夕方のお出かけは、桃菜が生まれて以来、実に初めてかもしれない。

メニューに手を伸ばした時に守が席を立つ。

「トイレ?さっき行ってなかった?」

「あ。まあな。」

うやむやな返事をして席を離れて行った。変なの。まあ、いいや。紅茶でも選ぼうっと。


「お待たせいたしました。」

メニューから顔を上げるとワゴンとともにウエイターが立っていた。

「…まだオーダーしていませんけど。」

「鮫島守様からお話を伺っております。」

言葉を失っていると、テーブルの真ん中にベリーたっぷりの小さなホールケーキと、白いティーカップが並べられた。ケーキのチョコプレートには「Thank you,NANA!」の文字が。どういうこと〜?そして大きなティーポットから芳しい紅茶が注がれている。

「本日のおすすめの紅茶でございます。」

驚いているとケーキの向こうに守が姿を現した。

紅茶を注ぎ終えたウエイターが一礼して下がると、守が言った。

「桃菜が生まれてから、なかなか二人の時間が取れなくて、遅くなったけど、俺の嫁さんになってくれてありがとう。ママになってからも、ずっと変わらずにいてくれてありがとう。」

びっくりしたまま無言でいると、笑顔で続ける。

「子供が生まれても、お互いを気にかけること、約束したよな?」

「覚えていてくれたんだ。」

「当たり前だろうが。それからこれ。」

小さな箱が差し出された。蓋を開けると普段使いもできそうなシンプルなのにスタイリッシュなブラックダイヤのピアス。こないだ家族で出かけた時に気になってずっと見ていたいたものだわ。

「気づいていたの?」

「珍しく立ち止まって動かなかったから。」

心憎いサプライズに思わず涙が溢れる。

気づいていたんだ。私のこと、ちゃんと見てくれていたんだ。高校生の頃からずっと変わっていない、この優しさが愛おしい。

「ありがとう。私、守と結婚してよかった。約束も覚えていてくれて、ありがとう。」

「さ、ケーキ食おうぜ。」

守が添えられたナイフでケーキを切り分けてくれる。


ケーキはちょっとだけ涙の味だった。

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