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新婚生活。 by守

「守ー。おはよー。起きて〜。」

二世帯住宅の二階のキッチンで奈々が大きめな声を出す。

「おはようっ。て、コーヒーは?」

奈々に声だけで起こされてリビングに来ると、コーヒーがない。

「ごめーん!出すの忘れてた。自分で注いでくれる?」

奈々はバタバタと朝食や弁当の準備をしながら答える。

「ったく。またかよ。しょーがねー奴だな。俺はコーヒーをカップに注いでから起こしてもらうのが理想なんだぞ。起こしに来て欲しいのに。おはようって…。」

本当は、おはようってキスして起こして欲しいんだけど、恥ずかしくて、言えねーし。

結婚式から半年。俺の両親との二世帯同居でスタートした新婚生活は毎朝がこんな調子で、憧れの「お目覚めのキス」がかなわないまま毎日が過ぎている。


「守?顔が赤いんじゃない?」

仕方なく、サーバーのコーヒーを自分で注いでいると、奈々が覗き込んできた。奈々の顔が目の前にある。どうして奈々《こいつ》はキスで起こしてくれないんだ?新婚って、そういうものじゃないのか?


コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置くと、俺は奈々を抱きしめる。新婚だから、こんなことしても、いい!はずだ。

「ちょっと…。何?」

びっくりしている奈々に唇を重ねる。もがいていても放してやらないぞ。

「新婚なのに、冷たくね?」

唇を放してまた抱きしめると、奈々は俺の体を引っ剥がすように離れる。どうして?

「何よ。もう!目玉焼きが冷めちゃうわよ。昨夜だってエッチしたじゃないの!」

「そんなぁー…。」

違うんだ。さすがに朝からエッチを要求しているわけではない。「お目覚めのキス」をして欲しいだけなんだけどな〜。

奈々は、時々は失敗するとはいえ、毎日のメシはうまいものを作ってくれている。仕事を続けながらも家事もよく頑張ってくれている。俺の友達が来ると、多少急でもイヤな顔をせずにもてなしてくれる。さらに自慢してしまうと、結婚前と変わらず身なりを小綺麗にしている。が。しかし。「お目覚めのキス」がかなわないままなのが、俺の唯一の不満だ。

自分で言えばいいじゃないかって?言えたら、半年もジレジレしないっしょ。なぜか言えねーんだ。夜にエッチに誘うのは簡単にできるのに。半年も何やってんだって自分でも思ってるよ。LINEで言おうと何度か試みたが、このことだけは文章にしようとすると指が動かねー。本当は朝のコーヒーよりも、して欲しいことなんだ。


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