チャペルにて。by守
チャペルで奈々と桃菜と合流したらすぐにまた二人が呼ばれ、席を立った。いよいよ桃菜の晴れ舞台。あ、いや、宮迫とのりちゃんの結婚式。かわいい後輩と、奈々の親友。もちろん主役は新郎新婦の二人だ。めでたいに決まっている。しかし今日は桃菜がブライダルメイドを仰せつかった、名誉ある日。愛娘の晴れ舞台でもあるわけで。このくらいの自慢はご容赦願おう。そ、それにっ!桃菜がモデルにスカウトされるかもしれないじゃないか!「お父様ですか?」などと言われたら、どうしよう?俺は何を話せば…。
…などと妄想していると、スマホがバイブした。奈々からのLINEだった。
『もうすぐです。私は途中まで桃菜の少し後ろをついていくことになっているから、写真よろしくね。』
『OK!』
さてと。気を引き締めて、入り口に体を向け、座り直す。この日のために新調したカメラを構える。桃菜の姿をバッチリと…いや新郎新婦の晴れ姿を納めないとな。
チャペルの前方をチラリと振り返ると、いつの間にか牧師さんと宮迫が待機している。緊張感を背中から漂わせている宮迫を見て、自分の時のことを思い出す。懐かしいな。俺、白無垢姿の奈々に思わず惚れ直したんだ。披露宴ではウエディングドレス姿もまたすげーキレイで、見とれちまったんだよな。
スッと明かりが入るのを感じ、入り口に向き直ると、チャペルの大きな扉が開いたところだった。
明かりの中には父親と腕を組んだのりちゃんがいた。花嫁姿の彼女は惜しげなくオーラ放ち参列者のため息を巻き起こした。
見とれそうになりながらもシャッターを押しているうちにパイプオルガンの奏でが始まり、歩みを進める二人。そして通り過ぎた時にヴェールを手に歩く桃菜を見つけた。緊張した面持ちとチョコチョコと歩くギャップがまたなんとも言えない。失礼を承知で言わせて貰えば、花嫁よりもかわいいぞ。それに、ちょっとだけ自慢すると、桃菜の姿が見えたとたんに参列者からざわめきが上がっている気がする。ほ、本当にスカウトされるかも。思わず花嫁よりもたくさんシャッターを押す俺。そして、のりちゃんが父親の腕を離れて宮迫の隣に立った頃、奈々が桃菜の手を引いて俺の隣の席に座った。
「パパ。お写真撮ってくれた?」
「おう、バッチリだぞ。」
奈々に言い含められているのか、空気が読めるのか小声で話す桃菜は、ホッとした様子だ。
「あのね、もう一回あるの。」
「披露宴の時にもやらせてもらえるそうよ。…あ。始まるわよ。」
奈々の言葉に、桃菜と二人、口をつぐむと、牧師さんの言葉が始まった。