ヴェールを持って。by奈々
あれから半年の時が流れて、今日はいよいよ宮迫君とのりの結婚式。桃菜の晴れ舞台の日でもある。私たち三人は、桃菜のことがあるので招待客にしては少し早めに式場に入った。
桃菜の着替えを済ませてから、ロビーでお茶を飲んでいると桃菜の名前がアナウンスで呼ばれた。私も桃菜に付き添って一緒に花嫁控え室に向かう。
案内されたドアの向こうでは、花嫁姿ののりが微笑んで出迎えてくれた。
「のり、おめでとう!綺麗ね。」
「のーねえちゃん、おめでと!かわいい!」
「ありがと。二人ともとても綺麗ね。桃菜ちゃん、今日はよろしくね。」
「うん!」
桃菜は満面の笑みでうなずく。
「まあ、かわいらしいお嬢さんだこと!」
美容師さんが思わず微笑む。白いドレスを着て、髪を結った桃菜は、なかなかサマになっていて、もちろん守がデレデレだったことは言うまでもなく。ドレスは私とおそろいのものをレンタルする予定だったが、のりの希望で、ウエディングドレスとおそろいのデザインの、このドレスを着せることにしたのだ。こういうドレスがセットになっていることは珍しいので、今回は本当にラッキー。
急にぐずりだしたりしないかという心配はあるが、なんとか乗り切ろう。ぐずらないのが一番だけどね。
進行担当の女性が、桃菜に説明をしている。桃菜は神妙な面持ちで聞いている。担当者が一緒にフォローに入ってくれるということなので、私たちはカメラ片手に、すぐ近くで控えていることになった。
「ママと一緒じゃないの?」
「今日は、お姉さんと一緒にやるんだよ。」
「そんなあ~!」
桃菜はとたんに泣きそうになる。私が一緒にやると思い込んでいたみたいね。
「桃菜、パパもママも近くにいるよ。お写真いっぱい撮ってあげるから、かっこいいとこ見せてくれるかな?」
あ。やばい。目の端が潤んできているわ。
「ママが一緒にやったら、お写真撮れないでしょ?近くにいるよ。約束!」
「大丈夫ですよ。かっこいいところたくさん撮ってもらおうね。」
係の女性の言葉に桃菜は口を一文字に結んでうなずく。
「さて、そろそろお時間ですよ。」
担当女性の言葉を聞いて私たちはチャペルへ移動することにした。いよいよ挙式だ。
佳き日になりますように。そして桃菜、頑張って。