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おてちゅだい。by奈々

「桃菜ちゃんにお願いできないかしら?」

週末、宮迫くんとのりがケーキを手土産に遊びに来てくれた。宮迫くんは、のりの影響でかなり垢抜けた感じになり、しかしもともとがジミー君なので派手ではなく。という「幅広い年齢層に好まれる青年」になっていた。そしてのりも以前ほどの派手な感じとは変わって、ビジュアル的にもなんともお似合いの二人になっていた

そんな二人は結婚が決まったことの報告を兼ねての来訪だった。正式な婚約や、式場選びも指輪選びもこれからという段階なのだけど、ブライダルメイドを、我が娘の桃菜にという話をいち早くするためでもあったようだ。お茶を淹れるためにキッチンに立ち、ケーキの箱を開けると、可愛らしいイチゴのケーキが何種類か入っていて、思わず笑ってしまった。桃菜はイチゴ乗ったケーキが大好きなのだ。よほど桃菜にやって欲しいようね。

すぐに結婚するかと思っていたが、慎重な宮迫くんは、年下で社会人になりたてで、収入面でもかけだしの時期よりは、と時間をかけた。のりもしびれを切らすことなく順調なお付き合いを続けてきた。そして、偶然にも桃菜が歩いたり言葉を理解できる時期を迎えた。ここで桃菜に頼まない手はないというのが二人の意見なのだ。

「大丈夫かしら?イヤイヤ期よ?それに親戚の子たちを差し置いて、いいの?」

お茶の支度をしながらキッチンから声をかける。

「事実上のお仲人は、奈々たちだもの。奈々たちの子が適任だと思うの。それに、ウチの親戚の子たちよりもずっと美人さんだもの。」

「そうですよ。お願いします。鮫島さん。」

宮迫くんが守に頭を下げる。

「そ、そうかしら?」

とぼけてみるものの、私だってわが子には欲目があるし、美人なんて言われたら悪い気はしない。ソファの守を見ると、桃菜を膝の上に乗せて、目尻が思い切り下がっている。親バカの標本だわ。

「ケーキは箱の中から好きなのを選びましょうよ。」

ケーキの箱とお茶を運び、私もソファに座る。桃菜は箱の中のケーキを見て、目をキラキラさせている。守がケーキを一つずつ指差して、桃菜が頷いたものを皿に乗せて桃菜の目の前に置く。そして切り出した。

「桃菜、のりおねえちゃんのお手伝いやってみようか?」

「おてちゅだい、やる!」

やっぱりね。守が断るはずないわよね。しかも桃菜はケーキを見てこの上なくご機嫌なこのタイミングで切り出しすあたり、さすがね。

「良かった〜!桃菜ちゃん、よろしくね。」

「はーい。のーねえちゃんのおてちゅだい、やるー。」

桃菜がイチゴの刺さったフォークを振り上げて元気よく言う。よく遊んでくれるから、のりのことは大好きなのよね。

そんな桃菜とのりを見つめる宮迫くんは、とても優しい目をしている。

まだ日取りも決まっていないけど、当日が今から楽しみだわ。

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