表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/41

お目覚めのチュー。

「パパー。起きてー。」

声とともに頬に柔らかい感触がした。

「おはよーのチュー!」

目を開けると、愛娘の桃菜の笑顔があった。桃菜と名付けた愛娘は、もうすぐ2歳になろうとしていた。女の子だからか、言葉が早く、発音こそ怪しいが、よくしゃべる。

「ママもしてくれたらなあ。」

起き上がり、桃菜を膝に乗せてつぶやく。

「ママー!パパがチューちてってー!」

桃菜は俺の膝からぴょこんと飛び降りて走って行った。チマチマと走って行く後ろ姿を目で追っていると、桃菜はターナーを手にしたままの奈々の手を引いて戻ってきた。

「ママ!早く早く!」

「ちょっと、何?忙しいんだけど。」

「あのねえ。パパがママにおはよーのチューちてほしいんだって。」

「はあ?朝から何やってんのよ?私がバタバタしてるの知ってるでしょ?」

途端に奈々の表情かおが険しくなる。母になってからの奈々は、体型こそキープしているが、ちょっとたくましくなり、気も少々強くなり、肝っ玉母ちゃんになりつつある。

やべ。キレるか?

「ママ?笑って。怖い〜。パパにチューちて。」

桃菜が奈々の表情を見て泣きそうになって懇願する。

「仕方ないわね。もう!」

え…?

険しい声とは裏腹に、優しい感触が頬に当たった。

「は、早く起きてきて。トーストが冷めちゃう!」

奈々はくるりときびすを返すとキッチンへ戻っていった。


あ。これ「お目覚めのキス」じゃね?桃菜のおかげで突然、願いが叶ったぞ。

「よっしゃあ!」

一声叫んでから嬉々としてテーブルにつく。と、元気よく声を張り上げる桃菜がいた。

「よっしゃあ!」

手を合わせて叫んでからフォークに手を伸ばす。俺の真似をしているらしい。

「こら、いただきますでしょ。」

「よっしゃあ!」

それでもまた叫ぶ桃菜は可愛いが、これはイカンだろ。

「桃菜。パパと一緒にやるぞ。はい。“いただきます”!」

「いたらきめす!」

こんな言い間違いすら愛おしい。特に今日の桃菜は救世主だ。

今日は良い一日になりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ