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しばらく。by菜々

「いよいよね。次は赤ちゃんもご一緒かしら?」

私はのりの言葉に微笑むと、ふっくらとしたお腹を撫でた。いよいよ臨月に入ったので、出産前の時間を満喫している毎日。ベビー用品を選んだり、名前を相談したり、健診に行ったりと、楽しく忙しくしている。つわりが軽い方だったので、こうしてのりと過ごす時間もバッチリ取れて、なかなか快適なマタニティライフを過ごすことができている。

「ところで、のりの方はどうなの?」

「まあね。健、優しいし。」

のりは、宮迫君と仲良くやっているようだから、結婚の報告も時間の問題だと踏んでいる。しかし、宮迫君の方が年下で、社会人としてもまだ駆け出しだから、言い出さないのかもしれない。慎重で紳士な彼らしい。のりのことをすごく大事にしていることは、守の話からも、のりのノロけ話からも伝わってくる。右手の薬指には、誕生石の指輪が光る。ピンクトルマリンに小さなルビーとダイヤをあしらった、ゴールドの指輪。のりの手にはプラチナよりもゴールドの柔らかな輝きのほうが似合っている。

「かわいい指輪ね。」

「フフ。こないだ、プレゼントしてくれたの。」

「のりが選んだの?」

「実は、健のイチオシ。似合うでしょ?」

「ごちそーさま!」

私の言葉に二人でクスクスと笑う。赤ちゃんが生まれたら、しばらくはこんな時間を過ごせないっていうけど、どのくらい子育てが大変なのか、今の私には想像がつかない。ただ、赤ちゃんが楽しみなだけ。

「女の子だったよね?名前はもう決めているの?」

「まだ考え中。候補を絞っているところ。」

性別は、私の予想どおり、女の子らしい。本当に私のカンが当たったわ。

「楽しみね。守くんが決めるの?」

「多分ね。張り切っちゃってるからさ。」

私が候補を挙げるたびにダメ出ししまくる割には、何も提案してこないの。「俺が決める!」と言ったのに、女の子の名前はわからないとか言って。なので私が名付け辞典やら、ネットで画数や響きを調べてはノートに候補を書き連ねた中から、守が候補を絞る、というのがこのところ、夕食後の日課だ。このために友達との飲み会なども減らして早く帰ってくる日が多くなった。

「お腹、触っていい?」

「いいよ。」

のりがそっと手を当てる。彼女はこうして私のお腹に何度触れただろう。

「あ。動いた!」

のりが嬉しそうに言う。

「でしょ?よく動くのよ。本当に女の子かしら?」


「じゃあ、またね。時間のあるうちにまた会おうね。」

「うん。遊んでね。」

カフェの前でのりと別れ、家路へと急ぐ。時計を見ると、思ったよりも余裕があった。夕飯の下ごしらえは、してあるから明日明後日の食材を少し買い足そうっと。




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