のり、かわいい。by奈々
「それでね宮迫くんは地味だけど下品では無いのよ。何を着ていいかわからなかったんですって。」
「だからどうしてそうなるわけって聞いてるの。おかしいでしょう?いきなり勝負下着なんて、意味不明じゃない。」
これで何回目になるのかしら。ビールを片手に、さっきから同じ会話を繰り返している。どうしてこんな展開になるのか私には全く理解できない。当の本人は赤くなってモジモジしてるし。
「服をお見立てしたのは、わかったわ。また会いたいです、って言われたのも。どうしていきなりパンツを脱ぐ準備なわけ?」
驚きで酔いもまわりゃしない。のりらしくないっていうか。…え?まさか?圏外って言ってたわよね。でもこれって…。
「のり?もしかして…?」
のりは黙って頷いた。って、え?え?えェェ〜?
「おかしいわよね。眼中になかったのに。彼になら、ベッドに誘われたいって思ったの。今までは、私がそこまで思っていないうちに強引に迫られることばかりだったのに。」
なんだか、これまでの恋バナとはタイプが明らかに違うわ。すごく純情な感じ。良いことだと思って、いいのかしら。
「宮迫くんは、何て言ってるの?」
「また会ってくれますか?って。行きたいところを考えておいてくださいって。」
「すごいじゃない!」
ワクワクしてきた。想われて傾くばかりの彼女が、積極的に想いを寄せているんだもの。応援しなくっちゃね。
「どうしよう、勝負下着…。」
あ…、ソレ?
「まあ、準備しておいても良いんじゃない?いかにもな派手なのじゃなければ。…あの、そんなにエッチしたいの?」
「そうなの。私、そんなにエッチだったかしら。」
「…珍しい気がする。のりにしては。ま、まあ、そこは相手にお任せしようよ!新しい恋に乾杯!」
ビールを高く上げると、のりも同じように高く上げる。コツンとグラスを当てる。なんだか、のり、かわいい。
「なんかさ。今ののり、すごく初々しい。」
「や、ヤダ。何言ってんの!」
「またまた~!赤くなっちゃって。今ののり、すごく初々しい。」
そう言うとますます恥ずかしそうにするのりは、かわいらしかった。
「私ね、これまでって、恋愛ごっこだった気がするの。」
「恋愛ごっこ?」
聞き返すと、のりが神妙な表情で頷いた。
「そう。告白とかされて、優しいからいいやー、とか、顔が好みだからいいやー、って付き合ってた。恋に恋していただけだった気がするの。自分から想ったことなんて、幼稚園や小学校の片思い以来。」
びっくり。モテる人は違うわね。のりの恋愛遍歴からしたら、想われる回数がハンパないじゃないの。