思いがけず。byのり/by宮迫健
すっかりモカムースを放置したジミー君は、事情聴取を続けている。守くんの好きなものを、食べ物から色から、ブランドから片っ端から聞いてはメモしていく。私だって、そんなこと詳しく知らないわよ。これだけマメにメモを取るという事は、真面目に勉強をしてきたタイプと見た。しかし、目標と真似は違う気がするんだけど。万が一、『彼は風俗が好きですよ。』なんてデマを吹き込んだら、喜んで通いそうだわ。
「あの…。」
「はい。なんでしょう?」
屈託のない笑みで元気に返事をするジミー君。
「同じようなものを身につけて、同じように振る舞う事は、ちょっと違わないかしら?」
「あ、あはは。そうですね。どうやったら近づけるかと思ったら、なんだか知りたくて。」
恥ずかしそうに笑うジミー君は、なんだか憎めない。落ち着け私。彼は圏外よ、圏外!
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話題が見つからないこともあって、思わず色々と聞いてしまった。本当に知りたかったこともあるけど、何を話せば良いのか見当がつかなかったんだ。思ったよりもたくさん話せたから良かった。…あ。普通はこの時、どうしたら次につながるんだろう?まだ一緒にいたい。
「あのっ。お買い物に、それからその後、お食事にいきませんか?」
「はぁ…。」
思わず出た一言に自分で驚いた。そして高畑さんもポカンとしている。うっわー。すげーこと言っちゃった。で、でも、せっかく言ってしまったんだ。か、買い物だ、買い物!
「本とか、服とか見たいんです。」
勢いのついでだと言わんばかりに一気に言った。
「ええ、まあヒマだし。」
やったぞ!ヒマついでだろうと、OKがもらえた!
しかし、何を買おう?服そのものは、あると言えばある。ないと言えば、ない。
「どんな服を買ったらいいかわからないんです。お見立てしてもらったり、できませんか?」
「うーん、そうね。まず、モカムース全部食べてからにしない?」
言われて自分の皿を見ると、モカムースがまだ半分ほど残っている。
「あ。そう、ですね。」
慌ててフォークを手にしてモカムースを口に運ぶ。ああ、もう味なんてわからない。これを食べ終えたら、一緒に歩けるのだから。