ジミー君の本名。byのり
「面白くなくてすみません。」
申し訳なさそうに言うジミー君の本名は宮迫健という名前で、確かにお笑い芸人の面白さとは違うタイプの人だった。清潔感はあるけど地味で、今までお近づきになったこのないタイプね。
モカムースをつつきながら思わず観察しているとジミー君は言った。
「あの、何か?」
「いえ…。」
あわてて目をそらす。
「あ、あの、お味はいかがですか?甘さが控えめで、気に入っているんですよ。」
「店員さんみたいですね。」
思わず私が笑うと、ジミー君も笑った。確かにモカムースは甘さ控えめで、しかし苦すぎることもなく。トッピングの金箔のチョコレートとも相性が良い。しつこすぎないから、2個目でも最後まで食べられそう。それにしても、物静かというか、話さない人だわ。
そう。さっきからジミー君はほとんど話さない。下を向いてモカムースをつついている。いかにも女性に慣れていない感じね。
「守くんの学生時代のお友達なんですか?」
「あ、いえ、会社の後輩なんです。鮫島先輩には本当によくしてもらっているんですよ。」
守くんは、優しくて面倒見が良い、兄貴肌なのよね。まあ、特に奈々には特別優しいんだけど。
「守くん、優しいからね。」
「はい。」
後輩ってことは年下かしら?年上が好みなんだけどなー。やだ私ったら。圏外のジミー君を値踏みしてない?
「あのとき来ていた奈々ちゃんのお友達の中で、高畑さんが一番キレイでした。」
聞きなれた言葉なのに思わず頬が熱くなった。ジミー君、こう見えて、いきなり体が目当てじゃないでしょうね。
「そういう言葉は大事な女性に言うものよ。」
やんわりと笑みを浮かべて返す。この程度のやりとりは慣れている。そういうことを言う男ってたいていすぐにベッドに誘いたがるの。私は派手だと思われることが多くて、そちらも派手だと思われがちなのよね。
「そ、そんなこと!本音ですから。」
あれ?意外なリアクション。この必死な感じも、珍しいタイプだわ。なんだか可愛いかも。
「ぼ、僕、鮫島先輩を目標にしてるんです。仕事のことだけじゃなくて、人として、見習いたいところがたくさんあるんです。」
「そ、そうなの。こんなことを言ってくれる後輩がいるなんて、守くん、幸せね。」
いきなりの熱弁にたじろいだわ。
「僕、鮫島先輩についていくって決めたんです。」
先ほどの沈黙は何処へやら。ジミー君はとても熱くなって、ギャップにびっくりしていると、ジミー君はさらに続けた。
「あの、いつからのおつきあいなんですか?」
「はい?」
「高畑さんは、先輩をいつからご存知なんですか?」