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からあげ。by奈々

「正樹が彼女を連れてきてた。」

お茶を飲もうと起きだしたときに、ちょうど帰ってきた守が言った。気のせいか、なんだかうつむき加減だ。

テーブルにドンとお皿を置く。山盛りに盛られたから揚げのお皿。ときどきこうして料理をわけてもらうので、そのお皿には見覚えがあった。

階下したに行ってたの?」

「ああ。お袋が持ってけって用意してくれてたから。」

お義母さんのから揚げ、生姜が程よくきいていておいしいのよね。

「晩飯、うどんにしようと思うんだけど、食える?って大丈夫?」

思わずから揚げをつまむと、守が心配そうに言った。

「これは別よ。だって、お義母さんのから揚げおいしいんだもん。うどんかあ。少しなら食べられそう。」

「俺の作るうどんは、少しかよ。」

守が苦笑いをすると、私も思わず笑った。

椅子に座ってから揚げをつまんでいると、守も座った。

「正樹に彼女かあ…。」

またつぶやく。やっぱりうつむき加減。

「どうしたの?正樹くんだってもう大学生なんだから、全然おかしいことじゃないじゃない?」

「そうなんだけどさ。まだガキだと思っていたから。」

「ふーん。さみしいんだ?」

「ちょっとね。奈々だって、兄貴が彼女を連れてきたりしたら複雑なんじゃない?」

そうかなあ。あのモテないお兄ちゃんにそんなことがあったら喜んじゃうんだけどな。私のお兄ちゃんは、ホントにその気配もないから、休日だってフラッと我が家に遊びに来たりする。学生のころにいたっては、パフェなどのスイーツを食べに行きたくても相手がいないからと、「奢るから。」と手を合わせて頼んできては、よく連れ出されたくらいだ。まあ、そこはラッキーだったかな。

「そうかなあ。あのお兄ちゃんにそんなご縁があったら、お祭騒ぎしそうだけど。」

「またまた、そうは言っても、きっと寂しいぞ?」

守が少しだけ口を尖らせた。守の寂しさは、ちょっとどころじゃないみたいね。私とは兄弟関係を垣間見た気がした。

守がめんつゆの容器とにらめっこしながらも、心ここにあらずの様子。うどんができるのはおそくなりそうだわ。


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