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子どもみたい?by奈々

ため息をつきながら寝返りをうつ。ああ。頭が痛い。そういえば、薬を飲むのを忘れたけど、今は動きたくないな。それよりも守に何か聞かれたくないな。


「薬、飲んだ?」

短いノックの音とともに守が入ってきた。どんな表情かおをしていいかわからず、思わずドアと反対の方向に寝返りをした。私はドアに背を向けたまま、寝たフリをすることにした。

「寝てる?…薬と、キウイフルーツを持ってきたんだけど。」

背中に守の声が聞こえる。目を閉じたまま動かないでいると、額にひんやりと何かが当たった。

「まだ、熱いな。」

守の手だった。もし子どもが産まれても、守はこうして変わらず気にかけてくれるのかな?子どもを可愛がってくれないのはイヤだけど、私よりも子どもに気が行っちゃうのかな。

目を閉じて、寝てるフリをしながらそんなことを考えていたら涙が枕に吸い込まれた。

「おい!大丈夫か?」

涙に気づいた守が体を揺さぶると、思わず布団をかぶってしゃくり上げる。こんなことで泣けてしまう自分が情けない。涙に気づかれてしまったことが悲しい。いつまでも守に甘えたいと思う、子どもみたいな自分が情けない。熱があるから、こんなに泣けるの?

「どうしたんだよ?そんなにしんどいのか?」

守が布団を引っぺがして私の体を抱きしめた。守の頬が、腕が、そして背中をポンポンとしてくれてる手も愛おしい。こんなに心配してくれて、大事にしてくれてると思うと、しゃくり声がどんどん大きくなった。

「大丈夫か?」

黙ってうなずく。

「俺、頼りねえ?」

無言で首を振る。

「じゃあ、どうしたんだよ?」

言うに言えなくて、また首を振る。

「子どものこと?」

少しためらい、うなずく。

「子ども、苦手だった?」

今度は首を振る。

「俺、手伝うよ?」

「違うの。違うのー。」

抱きしめていた手が緩められ、守が向かい合った。うつむいたままの私の手を両手で握って。

「じゃあ、どうして?」

どうしよう…。こんなこと言ったら嫌われるかもしれない。子どもみたいだって笑うだろうか。

「だって、子どもみたいとか、言われそうだし…。」

「なんでも話してくれよ。ずっと一緒にいようって決めたんだから。」

「…子どもが産まれたら…。」

「うん。産まれたら?」

「産まれても、変わらない?こうして私を気にかけてくれる?」

「子どもにばっかり優しくなるんじゃないかと思って…。」

沈黙が漂った。ああ。やっぱり呆れてるんだわ。言うんじゃなかった。

「…ハハハ!バカだなあ!」

守が笑いだした。どうして?

「そんなこと心配していたのか。当たり前だろ!普通はなあ、それは男の側が心配することだぞ。菜々こそ、子どものことばっかりになって、俺のこと放ったらかしにすんなよ。」

また抱きしめて、今度は私の頭を撫でる。

「…じゃあ、約束ね。」

「おう!絶対だぞ。子どもが産まれても、ずっと菜々が一番だよ。」

「あ。でも子どもが優先のときだってあるよね?」

「おいおい。どっちだよ。」

守の苦笑いに思わずクスクスと笑い出してしまった。

「やっと笑った。よかった。キウイフルーツ、食うか?」

「うん!」

小さなココット皿を手渡して言う。

「これ、新居こっちに持ってきてくれてたんだな。」

「覚えてたの?」

キウイフルーツを一切れ、口に放り込んだときに言われたから、思わず丸呑みしちゃった。そんなことを覚えていてくれたんだ。びっくり。

「わ、忘れるワケねーだろ。」

ちょっと目をそらし気味にぶっきらぼうな声で言う。

「これね、使わないでしまっておいたの。結婚したら使おうって決めていたから。」

そう。まだプロボーズよりも前のことだったけど、結婚してから使うと決めて、箱からも出さずにしまってあったのだ。

「大事に使おうな。子どもにも、使わせてあげたいな。」

「もちろん。離乳食を盛り付けたら可愛いかも。」

甘酸っぱいはずのキウイフルーツは、とても甘かった。






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