058プロローグ
(プロローグ)
男たちは薄暗い室内に棲息していた。全員人生の盛期に差し掛かり、その顔も体躯も円熟味でブレンドされている。彼らは一枚の地図を中心に、多くは気質によるのであろう、暗く湿った会話を紡ぎ出していた。
「計画は万全だ」
中年の一人が念を押した。
「まず失敗しないだろう。我々の誰も裏切らなければな」
それは確認というより願望の領域に属した。男たちは皆示し合わせたようにうなずくが、やや芝居がかるのを抑えられない。
「不安か?」
別の男が揶揄する。男たちのリーダーであり、今回の計画の発案者だ。
「今なら引き返せるぞ。安い給料で働く虫けらのような生活にな」
男たちは思い思いに首を振った。準備を整えるのに何ヶ月も擁したのだ。特に、この玩具を手にするのは一苦労だった――拳銃である。
別の一人が見えざる血判書にサインした。
「我々は一蓮托生だ。ここまで来たら実行するだけだ」
リーダーが満足を微笑で示す。
「その意気だ。まだ実行まで日がある。明日は山に入って銃の練習だ。佐々木、船の用意は任せたぞ」
佐々木と呼ばれた髭面の男が決意を両目にみなぎらせる。
「おう。速度の出る奴を調達する」
「では、今日の会合はここまでだ。次は二週間後、この場所で」
黄色い不健康な歯を剥き出しにした。
「億万長者まであと少しだ。決行当日まで裏切るなよ、お前ら」




