308プロローグ
(プロローグ)
6人の男女が暗い室内に閉じこもっている。部屋の陰気な装飾に似つかわしい、およそ陽気さとはかけ離れた彼らは、やはり陰々滅々とした会話を紡ぎだしていた。
「その計画で大丈夫なんだろうな?」
年配の一人が皺の寄った口元を撫でた。唇の隙間から毒気めいた息が零れる。
「問題ない。後残るは解錠だけだ。それさえ上手くいけば、目的のほぼ9割は達成されたも同然だ」
何せ俺が破るんだからな、と中年の一人が自尊する。別の男が釘を刺した。
「金は平等に分配だぞ、忘れるなよ。お前は特に金に汚いからな」
侮辱されて怒り出すかと思いきや、刺された男は特に感情を乱さなかった。
「分かってるよ、兄貴」
冷静な笑殺だった。その視線が片隅に鎮座する細長い箱に注がれる。ねっとりとした不快な眼光にも、箱は応えず沈黙を守っていた。中に収められた宝具がどう思ったか、それは誰にも分からない。
その場の6人の凝視が箱に集中する。それらはしばしの間をおいて、やがて一つ一つほどけていった。
「では、次は日時だ」
男たちは話をまとめ上げていく。そこに罪を行なうことへの恐れも怯みも、一切なかった。




