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145エピローグ

   (エピローグ)


 白石まどかは間違いなく、『探偵同好会』のムードメーカーだった。


 彼女がいなくなって、もうその関西弁を聞くことができなくなって、部室には寂寥感が流れていた。皆打ち沈み、会話もなく、ただおのれの追想にふけっている。かく言う俺も、まどかとの出会いや学園祭での楽しい思い出を脳裏に繰り返しては、ただ溜め息をつくばかりだった。


 純架が立ち上がり、黒板に何かを書き出した。何だろう、と思って見ていると、『「探偵同好会」親善旅行開催』との文字。


「今度、皆で温泉旅行に行こう。実は町内のくじ引き大会で一等が当たってね。それが山奥の秘湯巡りツアー旅行券だったんだ。4枚しかないけど、英二君は金持ちだから自腹で行けるし、菅野さんも専属メイドとして同行を許されると思う。6人全員で楽しく温泉としゃれ込もうよ」


 英二はにやりと笑った。


「唐変木のお前にしてはなかなかやるじゃないか」


 結城が目元をほころばせる。


「そうですね、私はどこまでも英二様についていきますから」


 日向が両手を組んでうっとりとした。


「最近疲れていたんで、ちょうどいいです! 絶対行きましょう!」


 俺と奈緒は顔を見合わせた。


「楼路君は当たらなかったの?」


「面目ない。ポケットティッシュ2個だった……」


 二人して噴き出す。純架が教室の奥へ問いかけた。


「どうだい、白石さんは……」


 室内が静寂の横暴を許す。純架は頭を掻いた。


「そっか、白石さんは……」


 英二が突っ込んだ。


「馬鹿、第一白石は地縛霊なんだから旅行に行けるわけないだろうが」


「そうだったね」


 俺は暖房のない部屋で、寒さを痛感した。


 白石まどかは成仏した。もう二度と会うことはない。だが、俺たちはやがてそれにも慣れていくのだろう。


 それが人間というものだから……。


 その事実を顧みるに、俺はいささか寂しい気持ちになる。


「じゃ、温泉旅行、決定!」


 純架が天に拳を突き上げた。無理矢理盛り上げようとしていて微笑ましい。


 俺は、せいぜい負けないよう派手に拍手して、その意図に加わるのだった。

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