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僕はいつか龍になる

 どんな敵を相手にしようとも、僕は戦う。男として、漢である為に戦い続ける。

 君を傷付けたくはないから。君は何よりも大切で、僕の全て。そんな君を守る為に戦い続ける。

 そんな僕を見て、君はいつも優しく微笑んでくれる。そして餅や兜を、差し出してくれた。

 僕が戦いに出るときは、君は絶対に見送ってくれる。いつだって気を付けてと、優しく声を掛けてくれる。


 まだ今の僕は未熟で、池で飼われる鯉程度かもしれない。

 ただ、そのままでいたくはない。一人前になりたい。天へと昇り、いつか龍になりたいんだ。


 そんな決意をする僕を見て、池の鯉は首を傾げていた。

 僕の決意なんて知らず、空のこいのぼりは風に靡いていた。風に吹かれているだけなのだが、自分で意思を持ち泳いでいるように僕には見えた。

 もっと上に行きたい。掴み取って見せたい。そう思い、僕は高い高い空に腕を伸ばす。

 その姿を、君は微笑み見ていてくれる。優しい君の長い髪が、風に靡いていた。



 僕は君と手を取り合い、二人が繋がったような錯覚に陥った。そして、一つになれることを信じてしまう。

 いつだって、君は僕の隣で微笑んでくれる。そんな君と手を取り合い、僕は羽ばたこうとしているんだ。


 今の僕が抱いている感情は、ただの恋なのかもしれない。

 ただ、このままでは嫌なんだ。強くなりたい。空のように大きくなり、いつか愛し合いたいんだ。


 どんなときも、君は僕を支えていてくれる。何も言わず、ただ笑顔で。

 あの大きな空に、二人で大きな夢を見続けているね。

 小さな僕の力では、大きな夢に手は届かないんだって。

 僕も薄々気付いてはいる。そして君は、僕よりもずっと前から。きっともう、気付いているのに。


 何をしたら、滝を登ることが出来るんだろう。鯉は龍に昇ることが出来るんだろう。

 それでも夢を見る。池の中ではなく、あの空を泳いでみたいと。夢を叶えたい、いつか。


 馬鹿みたいな夢だってわかっている。そんな決意をして、笑われても良いのさ。いつまでも鯉のままで満足して、そんな奴らよりは上だと思うから。諦める賢さより、挑戦する強さが欲しいから。

 まるで空を泳いでいるように、こいのぼりは揺れている。気持ち良さそうに、風で靡いている。

 そこに行きたいから、僕は空へと腕を伸ばしているんだ。空を手に入れたくて、届かない空を掴もうとするんだ。

 それを君は優しく見守ってくれる。ああ、君の長い髪は風に靡いて君の美貌を際立てる。


 小さくて大きな僕の夢は、とても弱いものであった。簡単に風で吹き消えてしまうような夢。だけど僕は諦めず、何度でも願う。

 僕はいつか龍になる。

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